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 海へと引き込まれたエースは重力に従い、落ちていくはずだった。海軍の者たちも、きっとそうなるだろうと考えていた。
 ましてや引き込んだのは海兵だ。ネオが服を脱ぎ捨てる瞬間さえ見なければ、誰もがそう考えた。

 海の中でネオに腕を捕まれ、泳いで岸へと向かう身体に抵抗もせず、この身を預ける。
 海面上へと上がっていく。そこにはストライカーがある。船を停めていた場所に着いたようだ。
 エースの腕は掴んだまま、二人はストライカーに転がるように乗り込む。
「げほっ、げほっ」
 水に入ることが出来ず、泳ぐことが出来ないエースは軽く海水を飲み込んだのか、咳をしている。海流を操り、泳いだのだ。普通の人間でもこのようになってもおかしくない。
「大丈夫か?」
 心配するように背中を擦るネオ。エースは大丈夫だ、と呟き、俯いていた顔を上げ、ネオを睨む。
「で、何でお前があそこにいたんだ?」
 ギクッと身体で表現するように肩が震える。視線は右へと移る。
「さ、さあ、何ででしょう……?」
「誤魔化すな!」
 がみがみと言い出しそうになるエースの肩を掴み、ネオは制止をかけた。
「そ、それより、手紙は渡したのか?」
「……」

 二人に沈黙が降りる。

「……忘れてた」
「忘れてた、じゃねえよ! あんなカッコイイ逃げ方しといて今更また現れる何て間抜けな真似はしたくねえよ!」
「じゃあ俺、もう一回行ってくる」
「アホかああああ! 捕まらないって分かってるけど、何か間抜けだから止めて!」
「何してるんですか?」
「ふぎゃあああああああ!」
 いきなりのエース、ネオ以外の声に思わず叫び声を上げる。振り返ればそこにはシアがいた。
 立っているシアはエースの存在には気付いていないようで、身体は震えていなかった。
「シ、シア?!」
「いきなり走り出したものですから、驚きました」
 ふんわりと微笑みながら言うシアに抱き締めそうになる衝動を押さえながら、いや、と口ごもる。
「えと、俺は」
「海兵の友達か、ネオ」
「え、……っ!」
 エースがネオへと聞いたとき、当たり前だがシアがエースの存在に気付いてしまう。
「あ、あああ……火拳の」
「シア、これには事情が……実は」
 ネオがシアを落ち着かせるように身体を揺さぶる、シアはネオの存在に安心したのか、震える身体を押さえ、ネオを見る。
 その瞳は揺れていた。
「手紙を海軍に届けなきゃいけなくてな。ちなみに上の、だけど届け忘れた」
「え、ええ?!」
「んで、シアに頼む」
「えええええ?! いや、あの、僕は下っぱの下っぱの下っぱですから、会うなんて無理ですよ!」
「大丈夫だ。お前なら出来る」
 笑うネオ。シアの瞳は未だに揺れていた。だが、何かを考えるように俯いていた。
「僕は、周りからバカにされます。こんな性格で」
「うん、だろーな」
 はっきりと笑って言ったネオにショックを受けたのか、何も言わず、唇を噛み締める。だが、ネオは肩に手を置いた。
「悔しいならやってみろ。お前は本当に良いやつだ。俺が保証する。俺は海賊だ」
「え?!」
「俺をいつか捕まえてみろ」

 笑った。









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