がしゃんだのどっかーんだの、ざわざわがやがやしている食堂を遠目で見る俺とシア。一体なぜ喧嘩に? 「……こいつ、火拳じゃねえか?!」 「ひ、火拳のエースだ!」 な、バレてんじゃん! バレたエースは大勢に追いかけられるが、持ち前の逃げ足で逃げる。扉の近くにいた俺の方に向かってくるのは当たり前で…… 「……!」 シアが恐ろしさからか声も出ず、震える足でエースを止めようと拳を握ったがやはり一歩が出ず、そんなシアの腕を引き寄せ、扉のすみに隠れたと同時にエースは扉をすり抜けた。また、それに続いてたくさんの海兵が追いかけていく。 引き寄せたシアはこちらを振り向いた。 「どうして!」 「ん?」 「どうして、どうして引き寄せたりなんか……!」 怖かったのだろう。未だに手は震えている。俺は笑った。いきなりの笑顔にシアは驚いたように目を見開く。そして、俺は笑いながら答えた。 「どうしてって、足元に虫がいて、シアが踏みそうだったから」 そんな風に言えば、シアは黙り、そして慌てるように続けた。 「な、虫?! えっ今の状況で?!」 「まあまあ、落ち着けって。今から捕まえにいきゃあ良いだろ。虫なんか踏んだら靴がかわいそうだ」 冗談混じりに笑って言えば、シアは笑いながらため息を吐き、仕方ないとでも言うように行きましょうとエースが消えた先へと走り出した。 「火拳はどこに……」 あれから歩いて結構経ったが、エースはどこにもいない。たくさんの人物が探している中、極秘情報を握った船が、この海軍に来たと、辺りがざわめき始めた。 シアも行くべきだと言うから仕方なく、極秘情報を運んでいる船へと向かった。 その場はざわめいていた。船が燃えていたのだ。 「っ……! 軍艦が!」 「中に人はいるのか?!」 シアが泣きそうに叫ぶ中、俺はずかずかと前へ前へと進み、軍艦に近づくがその身体はシアによって止められる。 「ダメです! 危険です!」 「だけど、良いのかよ! このままじゃ、燃え尽き……」 俺は途中で言葉を強制終了させた。何故なら一人の男が業火の中に飛び込んだからだ。それは紛れもなく、エースだった。 俺はシアを見る。シアは驚きに目を丸くした。そしてあっという間に戻ってきた男は燃えている。 火拳だ! そんな声が辺りに広がり、あっという間にエースは囲まれ、斬られ、エースは逃げる。 俺はもう一度、シアを見た。そして、笑った。 「シア」 「何ですか?」 「今まで、ありがと、楽しかった」 「え?」 俺はエースの元へ駆け抜ける、そして、駆け抜けた際に海兵の中の一人の剣を拝借し、斬りかかった。 斬れるはずがないのは分かってる。だが、重要なのは、エースが俺に気づくこと。 「おりゃあ!」 「うお?!」 火となり、攻撃を受け流すエースにもう一度横から斬る。俺はそのまま海へ海へと引き込む。 エースはこの時、この海兵がネオだと気付いていなかった。 海へ、落ちる…… ネオは服に手をかけ、投げ捨てる。そしてエースは気付いた。この海兵はネオだ、と。 エースの腕を掴む。そして。 「あばよ、皆」 海へ、消えた。 |