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 島へ上陸すると、人の賑やかな声が聞こえてくる。ここはフラジャ島。春島であるこの島は桜が有名だった。年中桜色に染まる島を人々は別名チェリー島と呼んだ。
 ルオンは二日酔いの部下以外を引き連れ、買い出しの準備をしていた。
 そんなルオンの様子を見、ネオはルオンに近づき、手を合わせた。
「ルオン、大変申し訳ないんだが、服を買いたいんだ……だから」
 お金を貸してくれないか? と頼むネオにルオンは笑った。
「構わんが……一緒に行くぞ?」
 荷物が大変だろ、と続けたルオンにネオは首を横に振った。
「いや……女物だし、一人の方が色々と都合がいいんだ。あ、何か服も貸してくれないか?」
 そう言って笑ったネオにルオンはため息を吐きながら、懐からお金を出し手渡す。
 ありがと、と言って受け取るネオに気にするな、と答えると一人の部下を指差した。
「あいつに借りろ。一番身長が近いだろ」
「色々サンキュ! 行ってくる!」
 そう言ってネオは踵を返した。

 服を借りたネオはさらしを外し、エースと別れた後は結っていた、ずいぶん伸びた髪を下ろし、シンプルなシャツとジーパンというラフな格好で船を下りた。
 そんなネオを見た仲間たちはほとんどがあんぐりと口を開けていた。
 あまりの反応に爆笑して出てきた後はぶらりぶらりと道を歩く。
 ふと、一つの服屋が目に入りその店へと足を運んだ。

 たくさんの服を抱え、店から出る。このまま船に戻ろうと先ほどきた道を戻ろうとするが、人の気配に道をぐるりと変える。
「つけられてんな……さて」
 独り言をぽつりと、笑みを浮かべながら呟くと、路地裏へと進んでいく。
 ちらりと後ろを振り向くが誰もいない。そして周りを見渡すが誰もいない。それを確認した後、人の気配が一番強い方へと顔を向け、笑いながら叫ぶ。
「出てこいよ。いるんだろ?」
 ネオの言葉と同時に複数の男女が出てくる。全ての者が同じような武器を手に握りしめ、ネオの前に現れた。
 そのうちの二人はネオを追っていたロンと、共に行動していた女――カナンだった。
「よく気づいたな」
「まあ、よく追われていたことがあってな」
 ロンが笑う。そしてネオも。
「容赦はない……ってとこか? ま、今の格好から俺が何者か、核心がついたんだろ?」
 黙って笑ったままのロンにネオは肯定ととる。
「なら、楽しもうぜ」
 ネオは荷物を置き、拳を構えた。







あきゅろす。
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