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 また、馬鹿騒ぎを一段落終えるとネオは寝転んだ。落ちそうなくらいの勢いでよこたわるが、エースは全く心配しない。海に好かれたネオの特権。
「ああ、腹減った……」
 いつものため息混じりのネオの一言にそれを言うな、とエースが言う。だが、ふと、エースは辺りを見回し始めた。きょろきょろと、そんなエースの不審な行動に、ネオは起き上がり、どうした。と、エースに問う。エースはまだ、辺りをきょろきょろしている。
「いい匂いがする」
「え」
 そんなエースの言葉に、漫画の一部を思い出す……が、エースの出る部分はほとんど分からないため、この先に何があるのかはいつも通り思い付かなかった。
 ふと、目の前に船が現れ、エースはにやりとする。
「船だ!」
「うぎゃああああ!」
 いきなりスピードを上げた船から、落ちたネオに気付くこともなく、船へと向かったのは言うまでもない。
 ぶくぶくと上がって来たネオの顔が自然と笑顔になっていたのも、言うまでもない。




「ギャーッハッハッハッハ!」
「よォおめェいけるじゃねェか! ギャハハ、飲め飲め」
「お、ライオンがいるのか、来い! この火の輪をくぐれ!」
「ガウ?!」
「よしやれェ! リッチー! ワハハハハ」
 船の上でばか騒ぎをしている声が聞こえる。エースがバギーの宴に乱入、大騒ぎをしているようだ。
「ほら、おめェもっと飲め!」
「お、う……」
 バギーに酒を注いで貰おうとしたときだった。エースの顔は真っ青になり、その注いでもらうはずだったグラスをごとんと落とした。バギーは、どうしたァ? と、エースが向いていた方向に目を移した。バギーに習い、全員がそちらを向き、エースと同じように顔を真っ青にし、口をぽかんと開け、黙ってしまった。
 全員の目線の先には甲板の上に立ち、その黒い髪からは水が滴り、うつむく男の姿。その雰囲気からただ事ではないことを全員が悟った。
 エースに関しては冷や汗だらだらに垂らしている。
「……エース」
「はぃいい?」
 声が裏返るエースに、辺りはしんとする。どす黒い男の声に、空気は揺れる。
「何したか、分かってるな?」
「いや、話せば分かる……!」
「弁解ほど情けないものはねェって認めろよ」
 顔を上げたネオは、心のそこから楽しそうに笑った。

「いや、な、落ち着け!」
「問答無用!」
「いぎゃああぁあぁああ!」
 エースの叫び声が海へと響いた。そして、ネオの笑い声も。











あきゅろす。
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