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 エースの後ろ姿を見つめ、別れた後、先ほどの宿へと戻る。エースは待つことを望んでいるだろう。だが、ネオは歩き出す。未来を変えるために。
「俺が大人しく待つと思ったか、エース」
 そして、笑った。


 宿から出ると、そこにはルオンが座っていた。ネオを見ると、立ち上がり、行くのか、と問いかけた。ネオは驚いた顔をしたのち、ああ、と答える。ルオンはまた問いかける。
「行き先は決まっているのか」
 ネオは眉を潜めたが、頷く。するとルオンは決意したようにネオに聞いた。
「俺の船に乗らないか」
「え?」
 ルオンの思わぬ言葉にネオは目を丸くした。後ろからざわざわとルオンの部下らしき者たちが現れる。ルオンの言葉に部下たちも頷いている。
 ネオは言葉に渋っているとルオンはまた続けた。
「行き先はお前が決めれば良い」
 ルオンの言葉にネオはまた眉を潜める。
「何故、そこまで親切にしてくれるんだ? さっきまで」
「エースってやつには悪いことをした。それの償いだ……それに、女を一人で旅に出すわけにも行かないだろ」
 ルオンのその言葉にネオは口を閉じれなくなる。女だと、気づかれていた。
「女だと、気付いてたのか」
「ああ……信用出来ないなら断っても良い。ただ、俺は……」
 うつむいたルオンにネオは首を傾げる。唇を噛み締めたまま動かないルオンは決意をしたように顔を上げた。
 その瞳はネオを見てはいなかった。
 どこか遠くをすがるかのように見つめていた。
「とりあえず、だ……結論はお前に任せる。船はこの先の港に停泊させてある」
 ルオンが指差した方をネオは見つめる。
 そしてルオンはそのまま歩き出した。

「今日、一日だけお前を待っている。もし俺と旅をしても良いというのなら船に来い。一人で行くというのならそれも構わない」

 それだけ言うと、ルオンは立ち去っていった。ネオはその後ろ姿を、ただ、見つめていた。


「船長、なんであんな女を……」
 ルオンに着いてきた船員の一人が疑問を投げ掛ける。ルオンはその言葉に何も答えず、ただ歩く。船員はまた、船長、と呼んだ。ルオンはにやりと口元を緩め、立ち止まり、船員の方へと振り返った。
「気に食わないのは重々承知の上だ。だが、あいつは利用価値がある。なんせ、あいつは海軍が必死に探している人物だからな」

 それだけ言うとまた歩き出す。緩んでいた口は固く結ばれていた。
「……惚れた弱味だ」
 小さく呟かれた言葉は誰の耳にも届くことはなかった。







あきゅろす。
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