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 ネオは一時停止し、そして笑った。
「な、何言ってんだよ」
「これから俺は、黒ひげの元へ行く。お前はここにいろ」
 エースの真面目な表情にネオは固まった。それはつまり、ここに一人でいろってことなのか? エースは俺を、置いていくということなのか?
「な、何で……だって、約束したろ?! 俺を一人にしないって……!」
 泣きそうになるのを押さえながら叫んだ。心の奥で、餓鬼だなあって嘲笑う冷静な自分がいる。だが、きっと、もう、昔みたいに一人でいることは出来ない。だって、エースは俺に教えてくれた。人の優しさを、そして暖かさを。
 もう、一人じゃないってことを。
 エースは顔を歪めたまま、ネオの肩に手を置き、真剣に伝える。
「これは俺の問題なんだ、ネオを巻き込めない」
「巻き込んだっていい。だって、家族だろ?」
 ネオがそういえば、エースは黙る。どうしても、どうしても置いていって欲しくない。
 もう、一人にはなりたくない。
「悪い。ネオを連れていくことは出来ない。必ず帰ってくると約束する、だから」 エースはぽつりぽつりと呟いた。ネオは、黙った。



 海辺。
 エースは船出の準備を着々と進めていた。だが、それをただ、漠然と見つめるネオ。置いていかれるのに納得したわけではない。ただ、エースの船出の準備を率先してやれば、まるで一人での船出を許したようで気が引けたのだ。
 だからこそ、ただ見つめていた。
「ネオ」
「……置いていくのか?」
 名前を呼ばれ、小さく呟く。女々しいのは分かってる。これはネオが無理矢理頼んで連れてきてもらった旅だ。そのためネオはきつく止めることも出来なかった。
「……悪い」
 決まりの悪そうな顔で呟くエースにネオはため息をつき、笑った。驚きに目を見開くエースの頭を叩く。
「早く行ってこい!」
「あだっ!」
 衝撃とともに帽子が自然と下がり、うつ向く形になり、何する、と顔を上に上げた瞬間、ネオの顔にエースは何も言えなくなった。
「で、戻ってこい。約束だ」
 指切りと、小指を出すネオにエースは驚いた顔をしたが、そのあと、頷き、小指を絡めた。
 エースは指切りげーんまーんと歌い、上下に動かすネオの姿をみつめながら、途中、エースも歌いはじめる。

 ほんの少しの別れだ。エースは笑う。
 もう二度と会えなくなるかもしれない。ネオは知っていた。
 二人の別れは全て運命だった。







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