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 エースはルオンに向き直す。
「行かせる気はない、か。仕方ない」
 エースは拳を握りしめ、突き出すようにルオンに向けた。そしてニヤリと口元を歪めた。
「ひけ……げふっ」
「ったあああ」
 火拳と続くはずだった言葉は唸り声と共に消えた。エースの上に突如現れた人物、ネオに押し潰されたがためだった。
 ネオは辺りを見渡し、現在の状況を把握したのか、笑っている。
「悪い悪い! 大丈夫か、エース?」
「早く降りろ!」
「あ、ごめん」
 エースに言われ、立ち上がると、ネオはルオンの方へと顔を向けた。ルオンはその瞬間、目を見開いた。
「お前は……」
「ネオ! 何で空から降ってきたりなんかすんだよ! しかも俺の上!」
「たまたまだって、怒るなよ!」
「さて、今までの事を説明してもらおうか」
 ぎゃあぎゃあと騒ぎ始めた二人だが、ルオンはネオを見たまま固まっていた。それに部下の一人が不審に思ったのか、船長、と声をかける。
 ルオンはため息をついた。
「まさか、な」
 ルオンの独り言は誰にも届くことはなかった。


「だから、連れ去られて質問されたけど、無実だと判断されて逃げられたからそのあと、屋根を飛び越えてエースを探してたら、何か取り囲まれてたから屋根からジャンプしてカッコよく登場しようとしたら失敗してエースの上に落ちたってわけだ。何か質問は?」
「色々突っ込みどころは満載だが、とりあえずまあ無事で良かった」
 エースがそう言った後、ルオンに目を向ける。相変わらずネオを見つめていた。
「まだネオを捕まえる気があるのか?」
「は? 何で俺を?」
 ネオがそう呟いたが、エースの真剣な目にとりあえず黙ってしまう。ルオンはそんなエースを見ることなく、ネオを見つめたままだ。
「……お前、母親が海賊だったりするか?」
「へ?」
 ネオは思わず、自分の顔を指差し、首を傾げた。ルオンは頷く。ネオは目を見開き笑う。
「えーと、普通の母親だけど……」
「そうか……いや、何でもない、忘れろ」
 そう言うとルオンは踵を返した。二人は驚きに目を見開いた。部下たちも驚いている。
「行くぞ、てめえら」
「え、船長?」
「ちょっ、待てよ! 俺の母親を知ってるのか?!」
 ネオの質問に答えることはなく、ルオンは呟いた。
「お前、ネオと言うのか」
「え、あ、俺はネオリスだ」
「そうか……何か困ったことがあれば俺を頼ると良い。悪いようにはしない」
 それだけを呟くと、去ってしまった。
 残された二人はただ、黙ってその背中を見つめることしかできなかった。







あきゅろす。
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