やはり、女の勘は正しかった。あいつ、嘘ついていやがった。実は全くの逆方向だったのだ。次見つけたら殺ってやる。
「あーくそ。やっぱりエースをパシりに連れて来るんだった」
後悔は先にたたず。
ぎこぎこと、ロープウェイを一人で動かしながら小二分。やっと山の頂上まで登り終えた。
ずいぶんと寒い。寒がりな俺には本当に今更だが地獄だ。何なんだ。ここは。冬島でした。知ってます。
「うう、さむっ」
「誰だい?」
城から出てきた二人組に目を見開く。そこにはチョッパーと、Dr.くれはが立っていたからだ。
腕を組んでこちらを見ているDr.くれはに思わず、本当に100歳かよと突っ込みを入れたくなった。
だが、とりあえず、早く戻らなくてはいけなかったので、気を取り直した。
「俺はネオ。貴方に聞きたいことがあって来たんですが、少し良いですか?」
そんな言葉に、眉を潜めている。まあ、いきなり現れて聞きたいことがあるとか、何だよおめえ、ですよね。わかります。
後ろにいるチョッパーは隠れているようで、隠れてはいない。
「何だい、若さの秘訣かい?」
いや、気になるけどっ
今回は大事なことを聞きに来たんだ。
「いえ。貴方が長生きをしていると聞いたので、今までに異世界から来た者がいたかを聞きたくて」
「異世界?」
Dr.くれはは考えるような素振りをした後、首を横に振った。
「知らないね」
「そうですか、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げて、立ち去ろうと踵を返したが、待ちなと、一言言われ、立ち止まる。
振り返れば、手を差し出してくるDr.くれはの姿が目に入った。
「あー……」
そう、唸りながらポケットを漁る。さっき万引き……譲ってもらった梅干しを取り出し、差し出した。
以外そうな顔をするDr.くれはに弁解するように捲し立てる。
「梅干しが好きだと聞いたので」
それだけ言って、受け取って貰った後、ダッシュで山を飛び降りた。飛び降りる際、軽く振り返りチョッパーににっこり笑って叫んだ。
「チョッパー! あんたには必ず楽しいと思える仲間が出来るからっ」
びっくりするチョッパーの顔。
「でも、俺もあんたが大好き何だぜ!」
「化物何てこの世にたくさんいるから」
「自分を責めないでっ」
山に響いたこの声は、チョッパーの心の奥深くに響いた。頬に流れた涙は、無意識だった。
ネオには、最後にはもうチョッパーの顔は見えなかったが、きっと笑っていたと信じたい。
「……思い出したよ」
「ドクトリーヌ?」
Dr.くれはの小さな呟きはチョッパーには届いていたが、何でもないよ、そう、答えるのみ。
「……異世界。あいつが言ってたのはそういうことだったのかい」
ロジャー。
呟いた声は誰にも聞かれることなく、風に流されてしまった。
船に急いで向かえば、不貞腐れた様子のエースが、船に座っていた。顔は帽子を深く被っているため分からない。
「待たせた」
「……」
「あー、その、ごめんって」
頭をかきながら言えば立ち上がり、船出の準備を始める。もう一度、ごめんと呟くと、ちらりとこちらを向いた後、また作業の方に目が行く。
大きな溜め息を吐いた後、エースは目の前までくる。そして。
「目、潰れ」
「へっ?」
「早く」
そう急かされ、目を瞑る。身体を強ばらせる。目の前に気配を感じる。
「エー……あだあああ!」
いきなり頂点をチョップされた。
そりゃあもう、思いっきり。
「いてえよ! まじでいてえ!」
「……心配させるな」
そんなエースの一言に驚きに目を見開き、お、おうと、動揺しながら答えを返すことしか出来なかった。
次に向かうは、アラバスタ。
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