「あいつに任せて平気だったのか?」
海軍を出たあと、エースは前を見据えながら聞いてきた。手に何かを持っていたが、よく見えなかったのでスルー。
不安というより、何故あんなやつに? そんな声音だった。ネオは首をかしげる。
「何でさ」
「大した届けものではないならまだしも、あれは大事なやつだろ」
ため息混じりな返事にネオは笑う。
「大丈夫、大丈夫。俺の勘、外れたことねえから」
けらけら笑うネオにエースは反論する気も失せたのだろう。そっか、と笑って返す。
そして話が一段落ついたところで、ネオはふと気になっていたことを身を乗り出し、聞いてみる。
「なあ、その手に持ってんの何?」
ネオが乗り出し、聞いてきたことに驚いたのか、エースはその紙を海に落としてしまう。
「あっ」
「よし、任せろ!」
「いや、良いって!」
ネオが海に飛び込もうとしたが、エースはそんなネオの腕をつかむ。二人してバランスを崩し、海へとダイブした。
腕を掴んだままダイブしたためエースが溺れることはなかった。ネオはエースを引っ張る形で海上を出る。
「ぷはっ!」
ストライカーに掴み、まずエースから、そしてネオと乗り込む。
そこでネオはあからさまなため息をついた。
「ああ、見失ったし、それにびちょびちょだな。まあ、全部水を出しゃあいいんだけどな」
そう言いながら服に含まれた水を操り、全てを海へと返していく。自分の分が終わった後、エースのも乾かした。
黙っているエースにネオは首を傾げた。
「どうかしたのか?」
「……あ、いや次にどこへ行こうか考えてた」
「いつも通り適当だろ?」
あからさまに何かがおかしいエースに怪訝そうな顔を浮かべ、ネオは答える。そうすると、エースは頭をかいて、うーんと唸ってしまう。
「まあ、そうだな」
「……やっぱなんか変だぞ、エース」
「変じゃねえよ」
そう、笑いながらいうエースに睨み付けるように近づき、頬をつねる。
「いんや、ぜーったい変」
「いだい、いだいっ!」
変な顔になっているエースの顔を睨む。だが、またため息をつき、その手をパッと離す。そして手を組み、いつもの特等席にどかっと胡座をかいて座った。
「嘘吐くな、下手なくせに」
「っう」
「まあ、言いたくないことなんて山ほどあるし、それは気にしないが、無茶だけはすんなよ。こっちの世界で俺の全てを知ってるのはエースだけだし、エース以外に伝えるつもりなんてないんだからな」
拗ねたようにそっぽを向き、早口で捲し立てたネオに、エースは目を見開き、驚いた顔をした。
そして、笑顔に変わる。
「何か、俺って特別だな」
「……何でそうなる」
「俺しかこの世界ではネオの全てを知らないんだろ?」
無邪気に言うエースにネオは顔を背けたまま、ため息をつく。
「あっちの世界にも何人かいるし、この事件をニュースで知ってるやつもいるしエースは別に特別じゃないから、まあ家族的意味では少し特別か」
そう言ったネオにエースは笑った。
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