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連載Diary
気まぐれに更新。
現在は「白虹」連載中。
(過去Logはこちら)
2010-05-07(金)
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土方は黙ったまま何も言わなかった。しかしそれはただ言わないのではなく、言葉が見付からない、そんな様子だった。泳いだ視線は少しすると引き締められ、やがて睨むように山崎を見据える。

「…てめぇが何を盗み聞きしたんだか知らねえが、奴ってのは誰か分かってんのか?むしろそんなのてめぇの妄想なんじゃねぇのか?」

「…副長、」

「バカな話している暇があんなら目離すとすぐにサボる"奴"を見張ってろ」

話終えるとすぐに書面へと視線を移し、興味なさそうに仕事を続けた。

確かに俺は"奴"を知らない。調べはしたが情報が少なすぎて絞りきれていない。何より、確証あるものがひとつもないのだから。
それを知ってか知らずか、尚この人は言わないつもりなのだろう。ここまで知っている俺を騙せるはずがないのに、それでも何がなんでも話に触れるものかと突っ張っている。

…どうしてこの人は、いつもいつも。

この人の部下にあって、最高に悔しくなるのはこの瞬間だ。信用だ信頼だなんてそんな御綺麗な事を言う人ではないが、どんな状況であろうと人へ頼らずに生きる様を見せ付けられれば知りたくもないこの人との距離を感じてしまう。
まるで触れる事さえ許されないかのような見えない壁を作られてしまう。

どうしたら良い。どうしたら、この人の壁を壊せる?


この日俺は、歯痒い思いを残しつつ、何も言わずに部屋を出た。
何一つ知れなかった会話ではあったけれど、ただ思い至るのはこの人に相手していた沖田のこと。

「…沖田さんも、こんな気持ちを感じていたのかな…」



*******


…なんかこういう土方って押し倒してやりたくなるよね!

(↑雰囲気ぶち壊し)


20100507
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