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140文字他SS置き場
※CP表記の無い物は、ほぼ土銀か高銀

2017-10-17(火)
ひかるさんちの素敵イラストを拝見し、SSを考えてみた

〜 半妖天狗の土方くんと九尾銀時 〜

イラスト
こちら


「カラスと人の間に生まれた“子供”が居る」という噂を小耳にはさみその村を訪れたのは、きっと何かに呼ばれたからなのかもしれない。
 闇の中、村はずれの小さな荒地で十字に組まれた磔台の上に縛りつけられたその少年に足音を消して近づき、そっと手に触れた。
 まだ暖かい、息がある。
 雨が降らず、雨乞いの生贄にされた“みなしご”は、横っ腹を何か所か槍で貫かれても生きていた。
 強えな、おめえ。
 噂は真実だったらしい。
 おめえさんには、どうやら本物の“天狗の血”が流れているようだ。
 手のひらから妖気を送り、腹の傷口をふさいで台の上から少年を降ろして抱きかかえ、俺は宙を飛んで妖界へと連れ帰った―――、のが今から十年と少し前の話だ。
 あの日以来、何故だかこの“人の血の混じったカラス”は毎日毎日、修行帰り、働き出してからは仕事帰りに俺のところに来ては「連れ合いになってくれ」と哀訴歎願をしにやってくる。
「飽きねえのな、土方くんは」
「ったりめえだろう。飽きるとか飽きねえとか、んな問題じゃねえんだよ。のらりくらりと躱しやがって。てめえが、「妖界治安部隊天狗真選組の『長』に土方くんがなれたら連れ合いになるのも考えてやらなくもないんだけどな〜」なんてぬかしやがるから、ここに来てからわき目もふらずに修行に修行を重ね、ちゃんと『副長』って立場も手に入れたんだぞ」
「『副長』じゃん。『局長』じゃねえじゃん」
 と言っても、確かに人の血が半分も混じっていながら組織の上部にまで上り詰めたやつは長い歴史あるこのあやかしの世界でもこの男が初めてだ。
 だが、そうやすやすと、ハイそうですか良く頑張りましたね、と相手の要求をのむわけにはいかない。
 だって俺、キツネだし、こいつカラスだし。性別もオスとオスだし、俺、超ーーー年上だし。俺から見れば土方くんなんて、生まれたてのヒナみてえなもんじゃねえか。
 嘴の黄色いガキに「嫁に来い」なんて言われて本気にするやつが何処に居るってんだ。
「つーか、よく命の恩人というか、恩“狐”の俺にそんな口の利き方出来ますね。誰がおめえを助けてやったか忘れたの? 俺はこの妖界でも上位も上位、某ゲームで例えたら☆5でも足りねえぐれえのランク上位な九尾銀時さまなんだけど?」
「身分違いなのは端から承知。それでもこの妖界に来て目を覚まして初めててめえを見た瞬間に惚れちまったんだからしょうがねえだろう」
「あのなぁ……、何度そんな甘言を言われようと、俺はメスになんかならねえぞ! 化けられるけど……」
「あのなあ、俺だって何度も言ってるが、てめえはてめえのそのままの姿でいてくれたらいいっつってんだろーが!」
 百年経とうと俺たちの会話は平行線……、のままだったはずなのに、何とも胸焼けするぐらいの色男に育ってしまったこのカラスに絆され始めている自覚がある。
 あー、もう!
 こんなイケメン? イケカラス? に、お前がいいんだ、お前じゃなきゃ駄目だ、惚れてる、心底惚れてる、と毎日毎日耳元で聞かされてたら、そりゃあ、うっかり手を取ってやりたくもなるもんだ。
「取り敢えず、酒だ!」
「ああ?」
「素面じゃ「いいよ」って言えねえだろう。兎に角、家ん中に入れ。食いもんと飲みもん用意してやるから」
「いいよ……、って、おい、銀時!」
「あっ……」
 しまった、口を滑らせたと思うよりも先に、土方くんは俺の手を取り引き寄せて背に腕をまわして強い力で抱きしめていた。
「おい、ちょっ、おめぇっ」
「やった! 良かった! マジで大事にする!! 絶対え大事にするから」
「おめえ、大事にするしか言ってなくない?」
「本当に大事にしてえんだよ」
「……そ、うですか」
 顔が熱い。耳まで熱い。
「どうしよう銀時、死にそうなほど嬉しい」
 まわされた土方くんの腕が微かにだけど小刻みに震えていた。
 俺はポンポン、と土方くんの背中を叩いてやった。
 何故だか小さな笑いがこみ上げてくる。
 これほどまでに喜ばれるのなら、もっと早くに応えてやればよかったかもしれない。
「これからよろしくな」
 十四郎―――、と耳元で囁けば、腕が解かれ、そのあと直ぐに、真っ赤な顔をした土方くんが、ぎこちなく目を閉じて俺の唇にキスをした。

<お幸せに>
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