**140文字・他**
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140文字他SS置き場
※CP表記の無い物は、ほぼ土銀か高銀
2015-06-10(水)
頂き物『人魚』(完結)
以前、【こちら】で書いた140文字『人魚』
の続きを『Girl in the Box』のカフェテリアさんに書いていただきました。
とても素敵な続きを頂き、有難うございました。
この銀ちゃんを嫁に欲しいです!
マンションの戸を開けると唇に絆創膏を貼った銀髪の男が立っていた。
何の用だと尋ねると「あー恩返し?」と意味不明な事を言う。
「いや俺は来たく無かったんだよ?でも深海の先生がさぁ」
美人ではあるがやる気のなさそうな男の目を見ているうち何故か昨日釣り針に引っ掛かっていた銀色の魚を思い出した。
≪ 釣られたけど、何か食えなさそうだな、と再びリリースされた魚・銀時くんと、釣り人土方くん。 ≫
その恩返しに来た男と何故か一緒暮らすようになった
行きなり現れた見ず知らずの男と一緒に住むなんてどうにかしてるかと思うだろが、どういう訳だが部屋に上がりこんだこの男のことを追い返すことは出来なかった
男の名前は銀時といいヤツが言ってる事柄は俺にはさっぱり解らないかったが死んだ魚の目の様にやる気のなさそうな瞳に覗き込まれると何故かヤツの言葉に抗うことが出来なかったのが摩訶不思議
面倒臭いしそのままズルズルと暮らすようになるとなんだか良いことばかり続くようになった
例えば長らく契約を渋っていた取引先からOKを貰ったり
古本屋に行けば探していた本があったり
この電車に乗らないと遅刻だと時間ギリギリに駅の改札を抜けると当の電車が少し遅れて来て余裕で間に合ったり
限定5食のスペシャルランチにありつけたり
いつもは紙詰まりを起こすコピー機が1枚も滞りなくコピーが済んだり
入ったスーパーでマヨネーズの大安売りをしていたり
自販機で缶コーヒーを買えばアタリが出てもう1本きたり
こんなことは日常的に起こりうることだろうがそれでも心の中では思わずガッツポーズをとってしまうような細やかな幸運
そして家に帰ればヤツがメシの支度をして待っている。居候させてやってんだからそんくらいは当たり前かと思うがそのメシがまた美味い
ドアを開けるとイカと里芋の煮物の匂いが鼻を擽りテーブルに座ればサザエと新玉ねぎのかき揚げに生姜がたっぷり入ったアサリの佃煮と青さ海苔とタコの和え物。それをツマミに冷たいビールを飲みながら今日あったことをグダグタと話すと銀時はへぇ、へぇ、とやる気が無さそうな返事ながら俺の話をニコニコして聞いていた
しかし人間っていうのはどんなことでも慣れちまう。それが当たり前の日常となりつつあったある日ふと宝くじ売り場に目がいった
こんなにツイてるんだからもしかしたら、そんな思いで買った宝くじ。それがなんてことだ1等が大当たり
俺の日常は一変した、豪華なマンション買って高級車を乗り回し良い酒を飲み綺麗な女達に囲まれ毎夜の様に繰り広げられるクラブでのパーティー
幸せだ、楽しい、面白い
世の中こんなことも起こるんだ。あくせく働いてた頃が本当にバカらしい、朝出社するサラリーマンどもを尻目に俺は朝帰りし夕方になると起き出してまた街に繰り出すという毎日
それでも銀時は俺の帰りを待ち酒臭い息を吐く俺の話をニコニコしながら聞いていた
どのくらいそんな日々が続いたか
ある日家に帰ると銀時が倒れていた。慌てて起こすとボンヤリ薄目を開けた銀時の身体にあちこち赤い爛れが出来ていた
シャツをめくると深く爛れた傷痕には血が滲み治りかけてた傷痕には銀色の鱗のような瘡蓋がその傷口を覆ってる
「こりゃいったいどういうことだ」銀時に尋ねると「見つかっちまったか」とヘラヘラ笑ったがその死んだ魚のような目にはうっすら涙が溜まってる
あぁ、そうか『恩返し』ってそういうことか
鶴じゃねえが俺の幸運はお前の銀の鱗と引き換えだったのか、細やかな幸せなら鱗の1枚2枚で済んだんだろうがこの代償は一体どのくらいの枚数がいったんだろう
「もうちっと一緒居たかったけど見つかっちまったら帰らなきゃ行けねえ決まりなんだ。おめぇといて楽しかったぜ、あばよ土方」
気がついた時には銀時の姿はどこにもなくだだっ広いマンションに俺は1人になった
あれからあんなにあった金も底をつき金の切れ目が縁の切れ目とばかりに金に群がってた亡者どもは俺の前から姿を消した
今は以前と同じ小さなアパートに1人
思いだすのは銀時の作ってくれた美味いメシ。アイツが作ってくれたメシを食いながら俺の下らない話をへぇ、へぇ、聞く銀時の顔
今日も俺は釣竿を垂らす
あの食えなさそうな銀色の魚を釣るために
「っていう夢を見たんだ」
「なんだそれ、夢だろ」
「まあ夢だけどもよ」
「それよか早くメシ食えよ、今日は新選組で定例会議があんだろ?副長さんが遅刻しちゃあ示しがつかないんじゃないの」
「あぁ」
茶碗に盛られた炊きたての白い飯、味噌汁の具はワカメに卵が落としてあって割ると半熟の黄身がトロリと溶け出す
パリッと炙られた海苔は長四角に切られ小皿には醤油、山葵漬けを乗せて巻いて食べもいい
深漬けになって酸味が増したキャベツの糠漬けは細く切り七味が少々多めにかかってる
飯があと一口、二口になった頃熱い茶が出て来て食べ終わる頃にはふぅふぅと冷ます抵当の熱さになっていてぐっと飲みほし席を立つ
慌ただしく身仕度を整え帯刀すれば今日が始まる
「いってくらあ」と言えば「いってこいや」とかえってくる
帰ってくるさ
それが幸せ
fin
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