ごめん、それでも、すきなんだ
♯1〜43「日常編」
♯44〜「過去編(ヤス視点)」
♯66〜「距離編(秀介視点)」
♯87〜「閑話休題(孝臣視点)」
♯91〜「終末編(和臣視点)」
◆◇◆SBI完結◆◇◆
ご愛読ありがとうございました!
2012-09-13(木)
番外編
◆完結後/しゅーにぃの同僚視点
「あー、しんど」
飲まされすぎてクラクラする頭を抱えて携帯を開く。時刻は2時をすぎてて、いつもながら終電なんてとっくにない。
てきとーに机に放ったタバコを手探りで手繰り寄せて、その一本をくわえたら、火をつけてくれたのはまだ入店して2ヶ月のNo.3だった。
「おつかれ」
「ありがと」
ヒデは自分のタバコにも火をつけると、ふぅっと長く白煙を垂らした。
どっかの街でホストになって、あっという間にNo.2に上り詰め、たった数日で数百万の売り上げ叩いて店を辞めてきたというこの男。
意味わかんねー色気と、どんな奴にも合わせられるトークのうまさ、それとなにより顔がいい。そんなずるい男が、うちの店でナンバー取れないわけがない。
「ヒデくんさー、」
「くんって。ユウキくんのが店歴長いのに。やめてくださいよ」
「天下のナンバーさんには敬語っすよ」
なんすかそれって言いながら笑ってるヒデに灰皿を渡された。
店のそこかしこで煙が燻る。ホストなんてそんなもんだ。タバコ吸って、酒飲むのすきで、女が好きで、ヒトを騙すことをどうとも思わない奴が勝つ世界だ。
「アフター、行かなくてよかったのかよ?」
「……めんどくせーじゃん」
ヒデはそう言って、オレの持つ灰皿にタバコの火を押し付けた。
ヒデはすげぇやつだ。イケメンで、気きくし、気さくで。なにより一番すごいのは、枕無しでナンバー取ったとこだとオレは思う。
「ミユちゃん、すげぇおっぱいよくね? でけーし」
「形いいよねー」
しょせんホストなんてオンナに金使わせなきゃ稼げない。金を使わせるにはハマらせるしかない。手っ取り早いのは、抱くこと。お前だけだって囁けばいい。
この店でデカイ顔して稼いでるやつはほとんどそう。てきとーなこと言って、てきとーに抱く。得られるのは快感と金。そーゆーのに痛みを感じない奴らだ。
他の店だって変わらないだろーけど、ヒデは違う。
抱かないし、オンナを金とは思ってない。客はみんな友達みたいなノリで飲んで、またねーとか言って帰ってく。キスもハグもしない。
「お前、ミユちゃんとヤリたくなんねーの?」
「んー……」
そうやって楽しくしてるだけで、こいつはここまで上り詰めた。徹底的な友営。
もちろんそんなヒデを落とそうと必死なオンナもいるけど、ヒデはそういう奴を相手にしない。邪険に扱ってネットで何度叩かれてんだか知らねー。
「……まあしょーじき、抱きたくないっつったら嘘っしょ」
「ならヤっちゃえばいーじゃん。今ならまだメール間に合うんじゃね?」
「はは、しねーよ」
こんな感じだ。あんなでけぇ乳押し付けられて、あっちからお誘いかけてきても落ちない。意味わかんねー。
「オレはもうオンナとかいらねーんだよ。んなことして逃げられたらまじやべーもーん」
「は?」
ぽかんとしてしまった。もしかしてコイツ……
「ヒデ、お前彼女いんの?」
「いねーよ」
「まじで?」
「いねーって」
「ほんとに?」
「いないいない」
ニヤニヤしながらそう言うヒデに、オレは眉をしかめた。たしかにこの店にはもう数年働いてるし、ヒデはホスト歴1年たってない。先輩と後輩ではある。
それでもタメで、しかもほぼ毎晩朝まで一緒にいるオレに隠しゴトするとか。こっちはそれなりに仲いいつもりだっつーのに。
「ヒデ、」
「オンナは、いねーよ」
オンナはね。と言って笑う。ヒデの顔には幸せですと書いてあった。
一言文句を言うはずで、そのために開いた口が閉じない。唖然ってやつだ。
「引いた?」
「いや、え!?」
「一緒に住んでんだよねー、今。ちょー同棲。愛。やばくね?」
「やべーよ、それはやべーよ!」
「オンナ抱けなくなったけど、それでアイツがオレのもんになるなら安くね?」
「安いか!? ぜってーオレはオンナしか抱かねぇ!」
「そーしなよ。オトコなんて柔らかいとこねーし、固いんだよねー」
「ひぃぃぃっ」
「でもアイツだからオレビンビンよ。やばくね?」
「死ね!」
バクバクする心臓を抑えて後ずさる。ヒデはにやりと口のはしっこを上げた。なんだよ!
「引いた?」
「引くわ!当たり前だろ!」
「引いたかー。あ、でもガチホモとかじゃないからね? お前じゃ一生勃たねーから安心してね」
「バカ!」
「前の店はちょー鬼枕だったんだぜー? オンナだいすき。おっぱいもぐもぐ」
「おま、まじ……なんでそんなんでオトコなんかに手出したんだよ」
ニヤニヤしてるヒデは、その顔の裏でたぶんちょっと傷ついてる。男同士とかっつーのが理解されないことを理解してるくせに、オレが引いたから、ちょっとだけ傷ついてる。
「愛だろ?」
それでも、そんな痛みなんて無視できるんだろーな。愛を語るヒデの脳内で、お相手のオトコが笑ってんだろー。
ヒデは、すげぇ綺麗に笑って見せた。
「……写真とかねーの?」
「みる?」
「みる」
「じゃーとっておきを!」
「ッぎゃぁぁぁああああ!!!」
そう言ってこそっと見せられた写メはまさかのハメ撮りで、ばっちり雄交尾を見ちゃったオレは全力でヒデの首をしめてやった。
死ね!!!
番外編「FxxK!」
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