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ごみごみしようよ
2011-07-29(金)
あいどる!(ジュンヒカ)

「突然だけど、アイドルデビューしてみようと思う」
「え」

腹をパンパンに膨らませているポケモンを連れて自分の部屋に入ってきたヒカリを、ジュンはただ目を丸くして見ることしかできなかった。

「協力求みます」

ヒカリは普段は滅多に見せないような真剣な顔でそう言ったのだが、ポフィンをバリバリと食べながらという何とも真剣みのかける(そのうえ口には食べカスが付いている)態度のせいで、ジュンは言葉が出て来なかった。


「なんだってんだよ」
「新たな自分の可能性探し!」
「ヒカリ、お前は確かに色んなことに長けてる。でもさ、これはおかしいだろ」
「大丈夫!コンテストに出る準備はバッチリ!ポフィンも大量に作ったし、技構成もちゃーんと整えたから。で、ジュンに協力してほしいのは、私自身のキャラクターについてなんだけど」

ああ、ポケモン達のこのお腹はポフィンのせいか…。満腹で苦しそうなポケモンに同情の目を向けながら、ジュンはヒカリの話をぼんやりと聞いていた。
もうこうなってしまったヒカリは止めることはできない。幼なじみだからこそわかる。これは本気だ。
普段おとなしい分、こうやって反動のような行動を取るヒカリを小さい頃から見てきたジュンは、理解していたし妥協していた。
ヒカリもジュンのすぐ熱くなるところやせっかちなところを理解してくれているのだから、こういうときはとことん付き合ってやるのがお互い様というものだ。

「コンテスタントでアイドルみたいに扱われてる。そういう子は大抵、彼女ら自身に何か特徴がある。だから、私も人に強く印象を残せるようなキャラクターにならなきゃいけないなって」
「ヒカリはどんなの目指すんだ?」
「いくつか候補があって…じゃあ、とりあえず一つ目見てね」

ヒカリはいつも付けている髪留めを取ると、顔にかかった髪を耳にかけた。

「ヒカリが髪降ろしたの、久々に見たな」
「ヒカリ?そんな風に気安く呼ばないでくださる?私の足元にひざまずいて、ヒカリ様と呼ぶのが当然です。そんなこともわからないなんて、あなたは余程の馬鹿なんですね」
「いくら何でも言い過ぎだろ」
「あ…っ、す、すみません!またもう一人の私が!ジュン様、本当にすみません!」
「ストップ!!ストーップ!!!」

足を舐めようとしてきたヒカリを押しのけ、ジュンは慌てて後ずさる。
なんのプレイだよこれは。と思わずにはいられない。

「SとMの二重人格!よくある設定だけど、どうだった?」
「どうとか、もうそういうの吹っ飛ばしてびっくりした」
「うーん…微妙かな。じゃあ次」

今度はゴムで髪を一つにくくると、キッとジュンの目を見据えた。

「俺と勝負だ!負けないからな!!たたきのめしてやる!」

高い声なのに男言葉で強がるように喋る感じがたまらないとか思ってしまっている時点で、まんまとヒカリのアイドル的策略にはまってしまっているのが悔しい。けれどこれはヒカリだからこそかわいい、かわいすぎるのであって。

「ボーイッシュ系。ちょっとキャラ薄いかな」
「ヒカリ、これからもたまにはポニーテールにしてくれよ」
「そっちかあ…うん、まあキャラ薄いからね。はい次」

先程結んだ髪を解くと、なかなか高い位置で二つに結ぶ。

「ツインテールもかわいいじゃんか!何でいっつも同じ髪型なんだよ」
「は、はぁ?かわいいとか、な、ななな何言ってんのよ!私の髪型のことなんだからほっといて!嬉しいとか思ってないからね!全然!ちっとも!」
「なんか典型的すぎる」
「やっぱり?うーん、難しいね。いっそ電波形?」

結局素のままコンテストに参加し見事優勝をもぎ取り、ミステリアスで華麗な最強ルーキーと謳われマスコミに引っ張りだこなヒカリを見ながらジュンが何だか面白くないなと感じるのは、ほんの少しだけ後の話だった。



前に書いたもの。なんだか色々唐突すぎるのでこっちに。
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