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memo

なんかひとりごと言ったりしてます。
兼、時々更新履歴です。いつも忘れます。

2012-07-10(火)
次に書きたいの

どれか完結させたら書きたい内の1つです。BL。
2話っていうかプロローグと1話まで書いてたよ!
だからいつかが来るまでここに置いておこうと思いました。なんとなく。

なっがいです。




俺は兄が好きだ。

だけどもう、
“好きだった”にしないといけない。



小さい頃、俺は兄の後ろを追いかけていた。
7歳年の離れた兄は、昔は優しかった。

その頃は当然兄の事が好きで、それはまだ両親に対するものと同じだったと思う。


兄が成長すると、次第に俺を鬱陶しがった。
それでも俺は兄の後を追った。

その頃どうだったのかは、今はもうわからない。


家族に持つべきものと違う。
そう気が付いたのは、俺が中学に上がった頃だ。

その頃初めて、俺は女の子に告白された。

戸惑いで長期間答えを出せない俺に、彼女はこう言った。

「じゃあ、どこかに遊びに行くとして、
隣にいて欲しいって、
そしたら楽しいだろうなって思える人は?」

その後に続けられた、
その相手を浮かべて、それを私とすり替えて、そしたらどうなるかな。
少しは楽しいと思えないかな?と、
正確にはそんな事を言っていたと知ったのは、その日の放課後、友人に聞いたからだった。

聞いたままの事が頭に入らなかった理由。
それは、俺が放心していたせいだ。

彼女の言うとおりに思い浮かべたのは、
最近はまた仲良く戻ってきた実の兄その人だったから。


さらに彼女の続ける言葉の断片だけが頭の中に入ってきていた。

手を繋ぐ。

キス。

中学生らしくそこで終わっていたからまだ救いはあったけれど、浮かべてしまった。
想像してしまった。

そしてその妄想に、嫌悪感を抱く事も、
ありえねー、それは種類が違うだろと笑える事も無く、気が付いてしまった。


俺は、兄さんの事が好きなんだ。





それからの日々を、
天国と取るか地獄と取るか。

きっとどっちにもすぐに向かえる紙一重。

今にも反抗期に突入しそうな俺を、
兄は構いまくってきていたからだ。

気づいてしまったからにはもう止まらない。戻らない。
この気持ちをどうすればうまく隠せるのか。
その事だけに重点を置いた俺の生活は、ただ1つの行動に走った。


そうだ、逃げればいいんだ。


なるべく遅くまで友達と遊ぶ。
そして帰宅したら即自分の部屋へ。
晩御飯だと呼ばれるまでずっと鍵をかけて引きこもる。

可愛くねえ!と時々嘆く兄の声は無視した。
いやいや、俺が可愛くてどうする気だ、兄よ。
まさか、もし、なんてそんな希望はありえなさすぎて、持ってもすぐに消え去った。
何故なら兄には彼女がいたからだ。

俺の部屋に向けて声をかけた直後に、
彼女に向けて甘い言葉を囁く。
その後の事も全部、薄い壁を挟んだだけじゃ筒抜けだった。

この思いは報われないんだ。
知ってるから、もういっそ、笑いかけないでくれよ。



それにしても、兄は高校を出たあたりから、徐々に俺を再び構い始めた。
それは年々悪化していっている。何故なんだろう。


ふとそんな事を考えたりしながら、
必死に逃げている間に、俺は高校生になった。


兄と同じ制服に身を包み、
ちょっと嬉しくなりながらも、避ける生活は続けた。

中学より遥かに過ごしやすくなって、
兄以外とも、両親ともそういえば最近あんまり顔を合わせてないなと、そう気が付いたのは、
少し、遅すぎた。


人間なんて、あっという間に居なくなる。


知っていたはずなのに、考えた事もなかった。





事故なんてよくある事だ。
だけどそれが自分や身近な人に降りかかるなんて、皆思わないだろう。
俺だってそうだった。


だけど勝手に何かを感じ取ったらしい体は、もう長らく出る事の無かった、兄からの着信を取った。

『もしもし?
よかった、出て。いいか?
いい?いいか?
落ち着いて聞けよ?いいか?』

お前が落ちつけよ、と思わず笑いそうになった俺は、しかし数秒後に告げられる言葉に、動けなくなった。


呆然とする俺に、一緒にいた友達はどうしたのかと尋ねる。
何も考えられずに、電話の内容をボソボソ話すと、友人たちの顔色が変わった。

その後、彼らは俺を病院まで連れてきてくれた。
自分では落ち着いているつもりでも、何が何だかよく解らない。
頭はボーっとしたまま、せかせかとただ足を動かす。

たどり着いた病院で、珍しく泣き出しそうな兄を見た。
そしてどこかに浮いていた俺の意識は、グッと体に引き戻された。

両親は俺たちを残して、いなくなった。

電話と同じ事をまた言われて、俺は改めてそう実感した。
嘘かもしれないと、もしかしたらどこかで信じていたのかもしれない。
だけれど兄の顔が現実を教えた。


そうして変わった俺の周りは、
それからさらに変わる事になる。




「俺さあ、結婚しようと思ってたんだ」

2人になってしまった家で、兄にそう告げられた。




そういえば、泣くでも無く、どういう顔をしたらいいのか解らない。
そんな兄と俺のそばに、ずっと女の人がいた。
よくよく思い出せば、もう1人誰かいた。
だけどそっちは今、どうでもいい。


あんまり会った事のないはずのその人に、だけど馴染んだ雰囲気を感じたのは、
兄がずっと大切にしていた恋人が、その人だったからだろうか。

多分きっと、彼女は両親とも親しくしていたはずだ。
そこには新しい家族が出来かけていた。
俺が気付かない間に。

それもそのはず。
彼女が家に来ていた時、俺は家に居ても普段以上に閉じこもっていたから。

だって、見たくなかった。
兄さんが誰かと仲良くする姿なんて。

けど今なら、
もっとちゃんと、あの輪に加わってみればよかった。
そんな事すら思う。


とりあえず、祝っておこうか。
嘘でも口にするぐらい、今の俺にも出来る事。


「おめでとう」

少しでも、沈んだ兄の気持ちをどうにか出来るなら。

そう思って笑ったはずの俺を顔を見て、兄は眉をひそめた。


声はちゃんと張った。
俺が思うに上出来だった。

だけど俺の顔の筋肉は、ちっとも動いてくれてなかったそうだ。






実際に兄が結婚式を挙げたのは、
事故があってから2年以上経ってからだった。

幸い、兄はもう社会人だったから、
おかげで俺はそれまで通り学生を続けられている。


兄の隣にいる人は、
何故だか笑えなくなった俺の分まで笑顔で、周囲にも幸せをまき散らしている。

彼女が隣にいるなら、きっと兄は大丈夫だろう。
今日もちゃんと、笑っているし。


そんな2人の結婚式で、
唯一の新郎側の家族である俺が、
笑ってないのは周りにどう映るかが心配だった。
だけどある意味、大丈夫だろう。

俺は現在、号泣しているのだから。


披露宴のスピーチのおかげで、
両親亡き後、親代わりだった兄の晴れ姿に感動の涙。
多分きっと、誰もがそう思ってくれただろう。


……実際は、いまだに捨てきれない、
けどようやく諦めはつきそうな、この感情の所為。

多分、俺は今日、本当に失恋をした。



式が終わり、まだ泣きじゃくる俺に近づいてくる人がいた。

「奏人(かなと)君、大丈夫?」

泣き過ぎじゃない?とペットボトルの水を差し出してくる彼は、
礼二(れいじ)君と言って、兄の親友だ。
因みに苗字は新村(にいむら)という。

これから義姉となる結菜(ゆうな)さんと同じに、彼も兄と俺に付き添っていてくれた。
さっきまで隣にいた兄じゃなく、今は見かねて、俺に付き合ってくれるらしい。
まあ、写真とか式の前に朝一で撮りまくってたから、もういいのかもしれないけど。



兄たちを祝う、親族や親しい招待客のいる控室から離れ、
人目の少ない場所の椅子に座る俺の前に、彼は立って、慰めるように頭を撫でてきた。

なんだか懐かしいその行為に、
俺はペットボトルのキャップを回して開けては閉め、を繰り返しながら俯いた。

久々に、ここまで子ども扱いされた。
そういえば小さい頃は、泣いていたら兄さんがこうしてくれた。
父さんも、母さんも。

今度は色んな感情が混じって、少し落ち着いていた涙がまた溢れてくる。
それを止めようと、家族以外を浮かべる。

すると浮かんだのは、兄に冷たくされた時、
今と同じように俺を慰める、この人の掌だった。


兄さんには、優しい奥さんだけじゃなく、
優しい親友もいる。
きっとこれからも、彼らは俺にも優しくしてくれる。

だから、大丈夫。俺も大丈夫。

そうして少しマシになった所で、
何故か耳元で、礼二君が囁いた。

「奏人くんが泣いてる理由、俺は知ってるよ」

ギクリと、体が強張る。
意味ありげなその囁きに、でもまさかと思いながら、視線を上げる。

今も俺が笑えていたなら、
多分こんな顔をするんじゃないだろうか。
そう思う、どこか悲しげに思える顔で、彼は笑っていた。

そしてもう一度、耳元へ唇を近づける。


「好きなんだよね、涼一の事」

今この人は、何て言った?

俺が誰を好きだと。


りょういち。

その響きから、
俺はたった1人しか浮かべる事が出来ない。

俺の、兄さんの名前だ。



「なん、で……何言って、」

「やっぱりそうなんだね。
わかるよ、」

一瞬にして俺の涙を止めた彼は、
次に、さらに俺を驚かせる事を告げてくる。


「俺も同じだからさ」









「失恋おめでとう、
そして俺も失恋おめでとう」


礼二君は、そんな意味の解らない言葉を残して、兄たちのいる控室へと戻っていった。


一人その場に残された俺は、
色んな衝撃で呆然としていた。


俺が兄さんを好きな事がばれていた。

そして礼二君も、兄さんを好きだったなんて。


どうしよう。
この後、誰に会うにも、どんな顔をしたらいいのか解らない。



だけど幸か不幸か、
俺はあの日以来、表情らしい表情を浮かべる事が出来なかった。

今日号泣したのだって、
兄さんは逆に喜んでいたぐらいだ。

暫く静止してからその事実を思い出し、
貰った水を呷って、ようやく控室へと戻る事にした。



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