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不透明な愛を君へ贈る


2013-05-11(土)
キスが上手い男と負け犬


キスが上手い男と付き合った。
"君って男が好きなの?"って聞かれたからカチンと頭にきて、酒の勢いに任せながらその憎らしい唇に噛み付いてやったら目だけで笑われてそのまま。
威嚇のつもりだったキスが蕩けるような甘いキスに早変わったのはきっとこの男の巧みな技に主導権を握られてしまった証拠で、息継ぎを忘れてしまっては腰がメロメロに砕けてしまったと言うなんともくだらんオチ。
キスの合間に耳の後ろをくすぐる指先だとか、むかつく程好みのタレ目だけで笑われる仕草だとか、下唇を唇だけで挟んで甘く噛む仕草だとか全部が全部、今迄このキスに惑わされた女がいるんだと感じれば腹の底から怒りが湧いてきたが、その感情も全て男の唇へと吸い取られてしまった。
それから、キスがやたらに上手い男と付き合う事になった。
"アタシの事、狙っていたの?"だなんて大層意地の悪い事を聞くもんだから違うと咄嗟に出たうそっぱちが腹の底で弾けて内部から臓器を痛めつけた。
"ウソツキだなあ。あんなに熱い視線送っておいて"だなんて全てお見通しといわんばかりの言い方が既にむかつくが、ここで「ああそうですよお前の事見てたよもろタイプだったからな」だなんて撤回するわけにもいかないし、持ち上げるわけにもいかないので不器用な性格が捻じ曲がって怒りに変わってはそっぽ向いてしまう始末。あーあノンケなんかに惚れるからこー言う事になる。頭では分かっていても、この性質の悪い男に惚れてしまった時点で心が負けた。
ちくしょう、主導権ばっか握られてやがる。
そうして悔しさ任せに唇を噛み締めて黙ればこの男は甘いキスを贈ってくる。ごめんねイジワルし過ぎちゃったね、だなんて甘い言葉も吐き出すから始末に終えない。
ちくしょう…、ますます惚れてしまうじゃねーかばかやろう。
優しくすんなよ、だなんて憎まれ口も吐くけど、やっぱり優しくされたら嘘の吐けない素直な心が彼のキスをあざとくも強請るのだ。









ノンケ×ガチゲイが書きたいったら書きたいのに書けないジレンマ


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