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不透明な愛を君へ贈る


2013-03-04(月)
影絵のツバサ


ヘブンリー,ヘブンリー。僕を連れ出して、please,take me away.
手を伸ばせば届きそうな距離に彼は居た。後一歩、後数歩、後数センチ足らずの近くも遠い距離。少しだけ手を伸ばせば彼の髪の毛に触れる事が出来る、その綺麗な橙に指先が触れてしまえば腕を腰に回して引き寄せる事だって可能。
浦原は伸ばした手を寸での所で引っ込めた。彼の背中は数センチ下にあってまだまだ小さくも頼りない。
華奢な肩に触れる事も、オレンジ色の眩しい髪の毛に触れる事も、彼を振り向かせる事も出来ずにいる僕。感傷ぶって見せる自分自身に自嘲しながら彼の背中が遠く遠退いていくのを此処で眺める。
真っ青な青空が似合う子だ、彼は。その眩いくらいの橙色に映える真っ青な空。真夏の空、スカイブルー。無限に広がりを見せる憎たらしい空に、彼の色はとても似合っている。

「到底、アタシには無い色彩だ」

もし、天国と言う代物が存在しているのならば、きっと彼みたいな色彩を持っているのだろう。鮮やかで透き通っていて眩しくて切なくて暖かくて少しのセンチメンタルさをぶち壊すくらいの壮大さ。腕をどれだけ伸ばしても、大気圏を突破しても触れる事さえ叶わない実体の無い物(ヘブンリーブルース)。
フ、笑ってもう一度腕を伸ばして彼の背中に影を落としてみた。

「…どうした?」

振り返る彼が眩しい。

「いいえ、キミの背中にツバサを作ってみただけ」
「…?バカじゃねえ」

無邪気に笑ってみせるキミが憎たらしくて爆ぜそうなくらいには愛しい。











本当は飛べるくせに、キミは狡賢くツバサを隠したまま飛び立とうとしない


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