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日記だったり呟きだったり生存確認的なものだったり
2020-05-23(土)
白く、凪いで

風が止んで、穏やかになることを「凪」という。

はじめてこの言葉を知った時、綺麗な言葉だなって思った。美しい漢字だなって、すぐに記憶に留めた。
憧れたのだ、と思う。

私の世界は、
少なくとも私が認識している世界は、いつも乱気流の中にいるようだった。
目まぐるしく回る渦の中で、気を抜くと流されて墜落してしまうような。いや、きっと何度も墜落していたのだろう。
どれだけ堕ちたところで、風は止まない。
もっともっと深く堕ちれば違うのかもと考えたこともあるけど、それはそれで怖かった。
ただ、ただ、いつかくるかもしれない「凪」を待っていたように思う。


そんな渦の中で、見える彩りは鮮烈だった。
鮮烈な赤や黒。
暴力的なほどの原色に、痛みを感じた覚えはないけれど、どこかがいつも傷付いている気もしていた。

いつだったか、妹が絵を描いていた。
小学校に上がりたての、たぶん夏休みの宿題かなにかだったか。私の宿題の傍らで、一緒に描いていただけだったかもしれない。

絵の具のチューブを眺めて「使いたい色がない」と妹が泣きそうになる。
途中まで塗ったところで、水色の絵の具がなくなってしまったらしい。

「じゃあ、これとこれを混ぜてごらん」
パレットに青と、少しの白を添えて、妹に提案する。
素直に筆で掻き混ぜた後、妹はいたく感動していた。

「青に白を混ぜると水色になるんだよ」
「すごい! なんで知ってるの!?」
キラキラと瞳を輝かせてそんなことを問う妹は、とても可愛らしかった。

他にも赤に白、黒に白、赤と黄色なんかも教えてあげると、妹は描くことそのものよりも、色を混ぜて作ることにハマったようだった。

その頃から、私の好きな色が白になった。

真っ黒も、真っ赤も、白に混じれば少しやわらかい色になる。それはなんだか救いのようで。
それでいうと、妹は私にとっての白い絵の具だったのかもしれない。
そして、きっと私も、白になりたかった。
救いたくて、救われたかった。
なにをだろう。なにからだろう。

今なら少しわかる気がするけれど、あの時の私には全てが曖昧で、目まぐるしくて、理解する暇さえなかったんだと思う。



「白」は好きな色から。
「凪」は好きな漢字だから。
2つを合わせて、名前を付けた。
最初にした説明はこんな感じだった気がする。


せめて、現実を離れたこの世界では憧れに近づきたくて。
交わった人やものを少しやわらかくして、穏やかな時間を作り出せるような。

白く、凪いで。
憧れを抱き続けることを
どうかここでだけは、許して欲しい。
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