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2014-06-26(木)
中途半端な番外編を見つけたので



いつ書いたのかも覚えてないのですか、明日に捧ぐ〜の、番外編を見つけたので、貼ります。

修正もしてない感じなのですが、それでも読んでみたい方がいましたらどうぞm(__)m

これ、たしか、エロにたどり着けなくて止めたような……。



↓↓↓↓↓







「ちょっと休憩するか?」


「ぅわっ!」


耳元で低く囁く声に、日向は思わず声を上げた。
振り仰ぐと…… 笑みを浮かべる恋人の顔がそこにある。


「ホント、集中すると何にも聞こえなくなるんだな」


「だって……難しかったから」


いつから見られていたのだろう?
そう思ったら恥ずかしくなり、頬を薄紅(うすあか)く染めた日向は浩也の身体を軽く押した。


「お茶、淹れて来る」


「でもココ、分からないんだろ?やっちゃってからにしよう」


立とうとした肩を掴まれそのまま椅子へと座らされ、背後から伸びた浩也の指が問題用紙を指し示す。


「浩也くんは終わったの?」


「ああ、さっき終わった」


―――さっきって……。


その言葉から結構な時間見られていたと分かった日向は、余計恥ずかしくなるけれど……分からないままは嫌だったから、コクリと頷きペンを握った。


「ここは、こっちの公式を使って……」


心地よい低音が説明を開始する。


頷きそれを書き込みながら、浩也が勉強を見てくれるのは日向にとっては有難いけれど、彼にとってはあまりプラスになってないような気がしてきた。


事の始まりは二学期が終わってすぐ。


一学期は一ケタの順位にいた日向だが、二学期の成績はクラスの中でも最後の方へとどういう訳か落ちてしまった。


それでも特進クラスだから、悪いとまでは言い切れないが、急に成績が落ちてしまえばどうしたのかと心配される。
様々な事が降り掛かった夏休みから年末まで、いくら頑張って勉強しても、中々頭に入って来ない状況になってしまっていて、焦る程それは酷くなり……悪いサイクルが生まれていたのに自分自身で気付けなかった。


成績表は保護者にも発送されるシステムだから、それは当然梓や章に知られてしまう事となり……冬休みには彼らが揃って日向の元へと会いに来た。


そこで、浩也が彼等に挨拶をして、成績を含め面倒を見ると頭を下げて言ったのだけれど……。


―――久しぶりに、会えて嬉しかった。


二人の滞在中にあった出来事を思い出し、切ないようなそんな気持ちに包まれる。


高校生の甥っ子が、彼氏を連れて来た事に……章は随分驚いていたし、梓はどこか悟ったような薄い笑みを浮かべていた。


『日向がそうしたいんなら、俺はそれを支持する。成績が下がった事が問題なんじゃない。ただ、夢を持って勉強もかなり頑張ってたのを知ってるから……もしかしたら違う事情が有るんじゃないかって心配してた。でも、大丈夫みたいだな』


『章は親馬鹿だからね。ホントは日向君を絶対連れて帰るって言ってたんだよ。まさか彼氏を連れて来て、こんなに一生懸命“一緒に居たい"って言われるなんて、思いもしなかったろうね』


『……だけど、成績がこれ以上落ちるような事があったら、今度は俺も考える。日向に友達が出来たのは嬉しい……けど、親代わりの俺達としては、やるべき事をやらずに遊んでいるのを、是とする訳にはいかない。分かるな?』


『章、年取ったよね。お前だって昔散々……』


『黙れ梓。可愛い日向を置いて行くんだ、せめてこれくらいは言わせて貰わないと、俺が納得出来ない』


そんなやり取りを見ていた浩也が『愛されてるな』と囁いたから、日向は微笑み頷いた。


―――僕を、信じてくれた。


だから……信じてくれた彼等の為にも頑張らなければならないのだ。
勿論、それだけが理由では無い。目指す夢が日向にはあるし、浩也と一緒に居る為にも努力しようと心に決めた。


―――だから、僕は……。


「分かった?」


「あ、うん、ありがとう……凄く分かりやすかった」


彼は勉強も凄く出来るし、教え方も的確だ。
字に人柄が出ると言うけど、彼の確りした文字は、上手とまでは言えないけれど、大きくてとても読みやすかった。


「もう一回自分でやってみろ。お茶は俺が淹れるから」


クシャリと頭を撫でた浩也がそう告げてから離れていく。
「ありがとう」と礼を告げると、片手を軽く上げた浩也がドアの向こうへと姿を消した。



****



『日向は、無意識に無理をしてしまう子だから、浩也君には難しいんじゃ無いのかな』


真っ直ぐこちらを見る目に嫌悪の色は全く無く、ただ本当に甥の事が心配なんだと伝わってくる。


冬休み、呼ばれた彼等の滞在先に待っていたのは章一人で、日向は梓と買い物へ出掛けたのだと彼から言われた。


『勉強しなかったって本人は言ったけど、嘘だって直ぐに分かった。前にも似たような事があったからな……浩也君は日向に何があったのか知ってるね?』


『俺が……日向君を傷付けました。だから……』


日向の合意が無い事には、内容までは話せない……と、告げた上で答えると、章は何かを悟ったように掌を上げて浩也を制した。


『あの子は……君の事が本当に好きみたいだ。転勤の時、日本に一人で残りたいって言ったのは、俺と梓に気を使ったって分かってたから、寂しくなって直ぐ来るって思ってたんだが……誤算だった。君は今、日向を傷付けたと言ったね。君がその責任だけで側にいると言うなら、そんな必要は無い』


『責任だけじゃ有りません。俺は、日向をちゃんと好きです』


彼の穏やかな語り口調に浩也はコクリと唾を飲み、出来る限り素直な言葉で今の気持ちを彼に伝える。今、日向を連れて行かれるのだけはどうしても嫌だった。


『そうか……だよな。そうじゃなかったら、わざわざ恋人だなんて言わないよな』


トーンダウンした章が見ていて分かる位に項垂れる。
だけど……それも一瞬だけの事で、直ぐに精悍な顔を上げ、こちらを真っ直ぐ見据えて来た。


『あの子は……日向は、引き取った時、まだ小学生で、父親を亡くしたばかりだったっていうのに、どうしても一人で寝たいって言ってね、俺達も良く分かって無くて、したいようにさせようって……そうしたら、何日かして倒れた』


『それは……』


『日向は、自分が寂しいとさえ思っていなかった。違うな……無意識に寂しいって思わないようにしてた。問題なのは“無意識"って所だ』


分かるかな?と、聞かれた浩也は小さくだけれど頷いた。


『いつも、何があっても、大丈夫だって笑うんだ……少し特殊な環境で育ったせいか、感情を現すのが凄く下手で、だけど純粋で……君は日向を傷付たと言ったけど、多分日向はそうは思ってないだろう。そんな日向だから、望みを叶えてやりたいって思う反面、手元に置いて守ってやりたいって思うんだ』


『でも、それは……』


『海外に連れて行かなかったのは、日本で……友達を作って、月並みな高校生活を送って欲しいって思ったからだ。だけど、今はそれで良かったのか正直迷ってる。恋人が出来たのが悪いとは言わないが、日向がもう少し大人になるまで、傍に居た方が良いんじゃないかと思ってる』


『俺は、何回も彼に救われました。ヒナは優しいから、人の事を考えすぎて自分の事が見えなくなる。だから俺が、ヒナ以上にヒナを見て、大事にしたいと思ってます。だから……傍に居る事を許しては貰えないでしょうか?』



ーーーそれに、ヒナは強い。俺なんかよりずっと……だから。



「……浩也くん?」


考えに耽っていたから気配にまるで気付かなかった。
すぐ近くで自分を呼ぶ恋人の声に顔を向けると、不思議そうな表情をして手元をじっと見つめて来る。


「ん?復習は終わったのか?」


「うん、ちゃんと覚えられてたと思う。でさ、浩也くん……それ、ちょっと蜂蜜入れすぎじゃないのかな」


日向に手元を指し示されて、ようやく浩也は自分が紅茶を淹れていた事を思い出す。慌てて手をひっこめたけど、陶器に入った蜂蜜は結構な量が減っていた。


「ごめん、淹れなおすからソファー座ってて」


「じゃあ僕が」


「いいから」


心配させてはいけないと思い優しく微笑みかけて告げると、小さく頷き返した日向はそれでも動く気配が無い。


「ここで見てていい?」


「ああ、いいよ」


一緒に暮らし始めてからまだ三カ月と少しだが、こんなやり取りの一つ一つに胸の奥が甘く疼いた。
今までの自分からは考えられない変化だが……こうやって、二人で同じ空間に居られるだけで幸せだと思うのだ。


ーーーけど、日向はまだ……。


「なあ日向」


「何?」


「お前の夢って何?」


浩也自身にはまだ未来のビジョンはまるで見えていない。大抵の高校生がきっとそうなのだろうけど、日向には夢があると章から聞いてからずっと気になっていた。


「僕は……小児科医になりたい。けど、医学部はお金が掛かるから、父さんの遺産だけじゃ無理だと思うんだ……だから、国立に受かるまで浪人して働いても良いって思ってる」


「似合わないよね」と、照れたように微笑む姿にドキリとする。


「なんで、小児科医なんだ?」


「子供、好きだから。一人でも多くの子供が元気になれる手伝いをしたい。でも、今のままじゃ難しいかな?」


現状……勉強してもなかなか頭に入らなくなってしまったのは、本人はそうじゃないと言うけれど絶対夏に起こった事件がかなり影響してると思う。


本来の実力からすれば夢では無い筈だ。




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