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memo
2020-07-29(水)
雪が実家に帰る話

「ただいま」
「お邪魔します!」

俺のやる気ない帰宅の挨拶にやや被せ気味に秀ちゃんの声が響いた。そう、秀ちゃん。なんでお前が俺の実家にいる?
この週末はそう、寮の空調の大規模点検のため、よっぽどの事情がない生徒は寮から出なければならなくて、俺も例に漏れず実家に帰ってきたのである。すると何故か俺の家の車に乗り込んだ秀ちゃんが、何故か家の中まで入ってきて、何故か俺んちが昼飯用意して、並んで食べてる。

「.............で、なんでうちに来たの秀ちゃん」
「や、今実家がちょっとな」
「じゃあ姫んちでも行けば」
「寿也の家はなあ.....奏もいるし、寝るところないじゃん」
「うちにもお前の寝るとこなんてねーよ!?」
「またまたー。こんな広い家なんだから部屋もいっぱいあまってるっしょ」
「姫の家だって部屋くらい余ってんだろーがよ!」
「寿也の家はなんていうか部屋というより精神的な居場所的な?」
「逆になんで俺んちにお前の精神的な居場所があると思えるんだ」
「まー居場所云々は置いておいたとしても、寿也の家はだめだ今回は」
「はあ?」

なんだこいつ。訳わかんね。
俺だけではサジを投げかけたその時。

「あれ、雪。早かったね、おかえり」

ダイニングに入ってきたのは兄貴の霧乃。
霧乃は学園の生徒が全員一時帰宅すると知るや否や、奏も連れて帰ってきてね仕事の話があるからと言っていたが、ご覧の通りミッションは失敗である。

「奏帰ってきてねーのかよ、んっとにあいつ言うこと聞かねーな」

霧乃は一瞬顔を顰めたが、俺の隣にいる秀ちゃんをチラリと視線の端に映すと、少しぎょっとしたような顔で秀ちゃんを二度見した。

「................友達?珍しいね。雪が学校の友達実家に連れてくるなんて」
「連れてきたんじゃなくて勝手についてきたの」
「神戸秀人です。はじめまして。白河霧乃さん、雑誌とかで何度も見たことあります!」
「そ?ありがとう。うれしいな」

霧乃はにこりと微笑んで、秀ちゃんの正面の席に座った。え、何どうしたの。どういう風の吹き回し?

「神戸って言ったらあれだね。お父様は神戸寛人(かんべひろと)議員だよね。お祖父様は神戸外務大臣」
「はい」
「そりゃ、今実家は帰れなさそうだよね」

霧乃が苦笑する。なんで霧乃が秀ちゃん家の事がわかるんだ?その疑問が顔に出てたのであろう。霧乃は目線をこちらによこす。

「神戸寛人議員の不倫スキャンダル。ワイドショーはこればっかやってるみたいよ」
「え、秀ちゃんの親父不倫したの?」
「さあ?本人はハニートラップだ、一線は超えてないとかって主張してる。だから助けてってラインきた」
「ぶっは!そんなラインくんの!!?親父から!?」
「あー、うん。多分今実家で母さんに激ギレされてると思う。つーかまじ離婚の危機かもうちの両親」


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