日記
2012-07-24(火)
ハァハァ雪
俺と黒木と雪光、先輩という不思議なメンツで勉強していた時。というか黒木の成績が本当に危ないので雪光先生に頼んで勉強していた時。
「日本史ってつまんねぇよなー」
黒木がおもむろに言った。お前今英語してんだぞ。
「え?」
雪光先生もびっくりして黒木の書いた英文に丸付け、いや、バツ付けをしている手を止めた。
「なんか面白くねぇんだよな」
「ぐ、具体的にどこが?」
「まず文化史がヤダ」
ああ、それは分かる。
「誰が何書いたとか覚えても面白くねぇよな」
俺は英語で書かれたドラえもんを読みながら言った。いや、これも勉強のうちだよな。
「ああ…作品は授業じゃ読まないからね」
「そういう作者に限ってやっやこしー名前してんだよなぁ」
確かに、と日本史の教科書を思い出しながら頷く。
「だろ、十返舎一九とかな」
「近松門左衛門とかどこから名前かも皆目見当がつかん」
「はは、まぁそうかもね」
雪光先生は添削した英作文の問題のプリントを黒木に差し出しながら苦笑した。
「あと学者がいすぎて訳が分からん」
「確かに江戸はいっぱい出てくるね」
「もうな、頭に入んねーの」
だらりと机にうなだれる黒木を前にうーんと思案中な雪光先生。
「…何かご褒美作ってやる気をなんとか出すとか?」
その言葉にニヤリと笑って黒木は「…それは雪光先生がご褒美くれるのかよ?」と言った。
「えっ…ま、まぁ僕にあげられるものなら…」
「言ったな?」
きっと黒木の頭に浮かんだ男と俺の頭に浮かんだ男は同じだろう。俺たちをうらやみながら用事があるからと名残惜しそうに帰った奴。
「というか僕からあげられるものなんて何も良いものないと思うんだけど…」
「や、そこは大丈夫だろ」
「ああ、問題ないな」
奴ならきっと雪光先生の「すごいね!」という言葉だけで1ヶ月は思い出し幸せに浸るだろう。
「次の試験、十文字の成績が楽しみだな」
「相当頑張るんじゃねあいつ」
「だよなぁ」
こそこそと話して笑う俺たちを不思議そうに見る雪光先生がこれまた面白かった。
(「クラス最高は…とまた十文字だな」「(…これが奴の本気…!)」)
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