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SS×Short Short
2009-01-22(木)
覚醒-TRC-

―覚醒―





気付いたら、一人雨の中にいて

気付いたら、自分が誰かも分からなくて

気付いたら、優しい大きな手が目の前にあった。


気付いたんだ、『人』が触れ合うって意味を。








気付いたら、胸を照らす微笑みが傍にあって

気付いたら、笑えるようになっていて

気付いたら、大切にしたいと想う人たちがいた。


気付けたんだ、『幸せ』って言葉の暖かさを。








気付いたら、もう二度と元の二人には戻れなくて

気付いたら、また笑えなくなっていて

気付いたら、降りしきる雨の中に涙と哀しみを隠した。


気付かされたんだ、『対価』の本当の重さを。








気付いたら、君の笑顔は変わらなくて

気付いたら、共に進んでくれる人たちが、隣にいて

気付いたら、また笑えるようになっていた。


気付いたのなら、『もう一度』って願ったんだ。












気付いたら、魔術師の右目を喰らい

気付いたら、右手は血に染まっていて

気付いたら、涙の瞳が、見上げていた。


気付かない振りをした、『行かないで』と縋る言葉に。








気付いたら、腕はそこから動かなくて

気付いたら、何かを訴える瞳から、逸らせなくて

気付いたら、貫くことができなかった。


気付かない振りはできなかった。叫び続ける『身体の記憶』を。








気付いたら、腕が小刻みに震えていて

気付いたら、貫けなかった刃が鮮血を生み出していて

気付いたら、その身体は花となって、散っていった。


気付いてしまった、君は『タイセツナヒト』なんだと。








気付いたら、『始まりの場所』に立っていて

気付いたら、刃を交え、戦いに身をおいていて

気付いたら、もう一人の俺を、見下ろしていた。


気付いたんだよ、俺が『やるべきこと』に。








気付いたら、身体は朱に染まっていて

気付いたら、呼吸すらか細くままならなくて

気付いたら、小狼が、俺を見ていた。


気付けたんだ、だから『後悔』はない。







でも。できるならば。
気付く前に、知りたかった。
こうなる前に、理解りたかった。

どうして自分が止まったのか。
どうして刃が向けられなかったのか。
どうしてあんなにも、『続き』を聞きたいと思ったのか。


黒鋼さん、ファイさん、モコナ。
さくら、小狼―――




気付けなくて、ごめんなさい。

気付かせてくれて、ありがとう。







―覚醒―
(この身体に宿るものの名前を、知りたかったんだ)






――――――――
「ごめんなさい ありがとう」
写し身君の最後の言葉が頭から離れません。
どうして彼が謝らなきゃいけないのか、なにに「ありがとう」っていったのか…知りたいです。



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