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偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ
2012-11-26(月)
決闘時空(デュエルスペース)第五話 Part5

決闘時空 第五話「作る者」Part5

「私のターン、ドロー。」(手札1→2)
「天神会長、現在は特殊ルールにより攻撃力3000以上のモンスターで攻撃することはできないぃ!そんな状況下で穂村プロの《カオス・ソルジャー−開闢の使者−》をどう攻略するのか?それとも、このまま穂村プロが押し切ってしまうのかぁ!?」
実況者によると、デュエリスト能力は特殊ルールとして扱われているようだ。その事に関して、吉井達は安堵していたが、追い詰められていく天神を見て不安になっていた。
負ける事は無いと信じているものの、天神の疲弊した表情を見て心配しているのである。闇の瘴気は見えていないものの、発生しているダメージから察するに闇のゲームが行われていると思われるからだ。
この見えないという状況が厄介なもので、ダークシンクロと闘いなれているはずの基が穂村の変化にすぐに気がつけなかったのもこのためである。
「《死者蘇生》を発動します。蘇生させるモンスターは《堕天使スペルビア》!」
「“伝説殺し”の能力に引っ掛からないモンスターを選んだか。だが、《カオス・ソルジャー》を倒せないならどんなモンスターが出てこようが無意味だ!」
天神は墓地から攻撃力2900の《堕天使スペルビア》を蘇生させる。攻撃力3000ではないため、“伝説殺し”の能力に縛られないものの、倒せるモンスターは《ライトパルサー・ドラゴン》のみ。《ライトパルサー・ドラゴン》はフィールドから墓地に送られた時に墓地の闇属性・レベル5以上のドラゴン族モンスターを蘇生させる効果があり、倒しても天神が不利になるだけである。
さらに、《カオス・ソルジャー−開闢の使者−》には攻撃を破棄する代わりに相手モンスターを除外する効果を備えている。このターン中に《カオス・ソルジャー−開闢の使者−》だけでも倒さなければ天神は次のターンにでも負けてしまう可能性が高いのである。
「《堕天使スペルビア》の効果発動!墓地から特殊召喚が成功したとき、墓地の天使族モンスターを復活させます。」
「この状況を打開できる天使族モンスターがいるのかな?」
「穂村先輩、これがその答えです。そして、“伝説殺し”の攻略方です!来て、《The splendid Venus》!」
天神のフィールドに光が射し、金色の鎧を纏った神々しい姿の天使が現れる。《Venus》から発せられる光は優しく、強い印象を与え、フィールドを包み込む。

「《The splendid Venus》だと!?」
思いもよらないモンスターの登場により穂村は焦り始める。
「天神さん上手い!《Venus》の効果は天使族モンスター以外の攻撃力を下げる効果、これなら“伝説殺し”を掻い潜れる!」
「しかも、《スペルビア》も天使族モンスターだから攻撃力はそのままだ!」
「これが、天神さんの実力…!」
逆転の方法をわずか手札1枚で作りだした天神を見て、吉井達は感心し、基には天神の強さを再認識した。
「《Venus》の効果で天使族モンスターではない《ライトパルサー・ドラゴン》と《カオス・ソルジャー》の攻撃力と守備力は500ポイントダウンします。穂村先輩、行きます!」
天神の合図と共に《スペルビア》は《ライトパルサー・ドラゴン》に突進し、《Venus》は閃光と共に大量の羽根を飛ばして《カオス・ソルジャー》に攻撃をする。

《堕天使スペルビア》ATK2900→《ライトパルサー・ドラゴン》ATK1900(破壊)

《The splendid Venus》ATK2800→《カオス・ソルジャー−開闢の使者−》ATK2500(破壊)

穂村 龍一 LP4800→LP3800→LP3500


「ぐおおおおお!!」
「倒したぁー!!天神会長、返し1ターンでまさかのまさか、あの《カオス・ソルジャー−開闢の使者−》を倒したぞぉー!!」
強力なモンスターであり、伝説と謳われたモンスターを、悪状況の中で倒した天神を讃えるかのように歓声が巻き起こる。会場の熱気はすさまじくなっていくが、そんな観衆に天神は軽く手を振って優しく笑顔で応えていた。
「まだだ!《ライトパルサー・ドラゴン》の効果発動!《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を復活させる!!」
穂村は負けじと《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を降臨させる。だが、黒き鋼の竜であっても、高貴なる天使の前では非力で矮小なものであった。
「私はこれでターンを終了します。」


(6ターン目)
穂村 龍一:LP3500、手札1
場:《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》(ATK2300)
場:伏せ×1

天神 美月:LP2600、手札1
場:《堕天使スペルビア》(ATK2900)、《The splendid Venus》(ATK2800)
場:《神の居城−ヴァルハラ》、伏せ×1



「俺のターン、ドロー!」(手札1→2)
(ぐ、こんな時に限ってあのカードが来ない!ここはなんとしてもあのカードが来るまで時間を稼ぐ!)
「俺は《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》の効果を発動。墓地の《ライトパルサー・ドラゴン》を守備表示で特殊召喚する。《レッドアイズ・ダークネスドラゴン》も守備表示に変更。ターンを終了。」


(7ターン目)
穂村 龍一:LP3500、手札2
場:《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》(DEF1500)、《ライトパルサー・ドラゴン》(DEF1000)
場:伏せ×1

天神 美月:LP2600、手札1
場:《堕天使スペルビア》(ATK2900)、《The splendid Venus》(ATK2800)
場:《神の居城−ヴァルハラ》、伏せ×1



「私のターン、ドロー。」(手札1→2)
「穂村プロ、先のターンで防御を固めるぅ。天神会長はこのターンで防御を崩すことができるのかぁ!?」
「私は手札からフィールド魔法《天空の聖域》を発動します。」(手札2→1)
天神がフィールド魔法を発動すると、会場に雲が立ち込め、天神の背には巨大な城が出現する。
「《コーリング・ノヴァ》を召喚。そして、墓地の《ADチェンジャー》をゲームから除外して、守備表示の《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を攻撃表示に変更します。」(手札1→0)
「…っ!!まずい、このままでは!」
「バトルフェイズに移行します。《コーリング・ノヴァ》で《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》に攻撃!」


《コーリング・ノヴァ》ATK1400→《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》ATK2300

《コーリング・ノヴァ》(破壊)


《コーリング・ノヴァ》の攻撃力は1400ポイントであり、《The splendid Venus》で攻撃力が2300に下がった《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》に返り討ちにされてしまう。だが、《コーリング・ノヴァ》はただ無駄死にするわけではない。《天空の聖域》の加護により、天神の受けるダメージは0になり、《コーリング・ノヴァ》は自らの意思を継いだモンスターをデッキより呼びよせる。
「《コーリング・ノヴァ》が戦闘で破壊され、自分フィールド上に《天空の聖域》がある時、デッキから《天空騎士パーシアス》を特殊召喚できます。そのまま《パーシアス》で《ライトパルサー・ドラゴン》に攻撃!」


《天空騎士パーシアス》ATK1900→《ライトパルサー・ドラゴン》DEF1000(破壊)

穂村 龍一 LP3500→LP2600


「《パーシアス》の効果発動、攻撃力が守備力を上回っていれば、戦闘ダメージを与えます。また、戦闘ダメージを与えた時にカードを1枚ドローします。」(手札0→1)
「天神会長と穂村プロのライフポイントが並んだぁ!そして、穂村プロの墓地には《ライトパルサー・ドラゴン》で復活させるモンスターがいないっ!このまま天神会長の攻撃で決着が着くのかぁ!?」
「《堕天使スペルビア》で《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》に攻撃!」


《堕天使スペルビア》ATK2900→《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》DEF2300(破壊)

穂村 龍一 LP2600→LP2000


「よし、次の《Venus》の攻撃で天神さんの勝ちだ!」
「いっけー、天神!」
「ダークシンクロモンスターが出る前に決着が着く!?」
天神の勝利を目前に吉井と見城は周りの生徒たちと同様にテンションが上がり、基の方はその実力にただただ驚かされていた。
「これで止めです、穂村先輩!《The splendid Venus》で直接攻撃!」
「まだだ、まだ負けるわけにはいかんのだよ!罠カード発動、《リビングデッドの呼び声》!墓地から《ライトパルサー・ドラゴン》を攻撃表示で特殊召喚する!どうだ、攻撃するか!?」
《The splendid Venus》の前に《ライトパルサー・ドラゴン》が現れ、穂村への道を塞ぐ。
天神はそれを見て攻撃の手を一瞬止めた。このまま攻撃すればダメージを与えられるが、ライフポイントを削りきる事が出来ず、再び《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を復活させられてしまう。今の天神の場では《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》はさほど脅威ではないものの、今後の展開の事を考えるとそのまま復活させるのは好ましくない、そう判断した天神はバトルを中止することにした。
「…私はバトルフェイズを終了します。これでターンを終了します。」

「ああ!もう少しだったのに!」
「ここで《リビングデッドの呼び声》か。穂村プロ、やっぱプロだけあって簡単にはやらせてくれないな。」
「…っ!?こ、この感じは!?」
天神が止めを刺しそびれ、吉井と見城は悔しがる。その時、基は何か感じ取る。
「どうしたんですか、大庭さん!?」
「まさか、来るのか!?」
「……その、まさかです。このドス黒い感じは、ダークシンクロモンスターから発せられるもの!そして、今穂村先輩のデッキの一番上にあるカードは!」

(8ターン目)
穂村 龍一:LP2000、手札2
場:《ライトパルサー・ドラゴン》(ATK1900)
場:《リビングデッドの呼び声》

天神 美月:LP2600、手札1
場:《堕天使スペルビア》(ATK2900)、《The splendid Venus》(ATK2800)、《天空騎士パーシアス》(ATK1900)
場:《神の居城−ヴァルハラ》、伏せ×1、《天空の聖域》


「俺のターン、ドロー!…っ!!やっと、来たか!天神よ、もう貴様に勝ち目はない!!」(手札2→3)
「穂村先輩、引いてしまったんですね…。それでも、私は負けられない!」
穂村は待ち焦がれたカードを引き当て、勝利を確信し、狂喜に飲み込まれる。今まで見たことも無いその悪意に満ちた笑みに天神は身構える。
「さあ、お集まりの皆さん、今こそお見せしましょう、この穂村 龍一の切り札を!」
「ここで穂村プロ、切り札を公開するようだぁ!この状況を引っくり返せる切り札とはいったいどんなカードだぁ!?」
穂村の切り札登場を聞き、会場はさらに盛り上がる。自信に満ち溢れる穂村の姿を見て周囲の期待はますます上がっていた。
「俺は《ライトパルサー・ドラゴン》をリリースし、《DT(ダークチューナー)−ヘル・ハングリーデビル》をアドバンス召喚!」
《ライトパルサー・ドラゴン》をリリースして現れたのは薄汚れた鬼であった。鬼の腹は膨れており、吐く息からは炎が出ていた。
「ダークチューナー!?穂村プロの切り札は新しい新種のチューナーモンスターだと言うのかぁ!?」
「これはまだ始まりに過ぎない!《ヘル・ハングリーデビル》の効果発動!リリースしたモンスターのレベル分アップする!《ヘル・ハングリーデビル》のレベルは5から《ライトパルサー・ドラゴン》のレベル6を喰ってレベル11にアップ!そして、リリースしたモンスターをレベル1にして特殊召喚する!」


DT(ダークチューナー)ヘル・ハングリーデビル レベル5 闇属性・悪魔族・ダークチューナー
ATK0 DEF0
このカードのアドバンス召喚に成功したとき、リリースしたモンスターのレベル分、このカードのレベルを上げる。その後、墓地からこのカードのアドバンス召喚のためにリリースしたモンスター1体をレベル1にして特殊召喚することができる。この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化される。


「準備は整った!レベル1となった《ライトパルサー・ドラゴン》にレベル11となった《ヘル・ハングリーデビル》をダークチューニング!」
《ヘル・ハングリーデビル》は11個の星に変化し、星々は《ライトパルサー・ドラゴン》の中に侵入し、《ライトパルサー・ドラゴン》を10個の黒い星に変化させてしまった。
「心に飽きし空腹よ、今、邪な力を借りて現界せよ!」
栗原がダークシンクロした時と同様に黒い星々が輪になるように並ぶと、その輪の中心の空間から黒い液体のようなものがどろどろと沸き上がって来た。
「ダークシンクロ!!
《六道神 GAKI−DO》!!
黒い液体はだんだんと積み重なっていき、二足歩行のドラゴンの形を成して行った。
現れたドラゴンは丸々と肥えていて、黒い皮膚で覆われていた。頭には誇りを被った冠、膨れ上がった巨大な腹をしていて、その巨体では意味の無さそうなボロボロの小さな翼を生やしていた。

「こ、こ、これが穂村プロの切り札だと言うのかぁ!?圧倒的巨体、圧倒的オーラ、圧倒的プレッシャー!!尋常ではない程の力が感じられるぅ!!」
「穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!」
《六道神 GAKI−DO》が出現すると、生徒達は何かに取り憑かれたかのようにボルテージが上昇していき、穂村を何度も何度もコールする。
それを聞いて穂村は今まで感じたことが無い充実感に浸っていた。これが自分の求めていたものである、そう確信し、涙すら零していた。
「ゆくぞ、天神!《六道神 GAKI−DO》の効果発動!」
「来る…!!」
穂村が効果の発動を宣言すると、《GAKI−DO》は空気を思い切り吸い込み始める。《天空の聖域》によって出現した雲も飲み込んでいた。そして、充分に溜めこむと排気ガスの様な黒い煙を吐き出し、辺り一面を黒い雲で満たしていった。その影響か、天神と天神のモンスターたちは苦しみ始める。
「きゃああああああああ!!」
「天神(さん)!!!」
「《GAKI−DO》の効果、自分のライフポイントを2000回復し、相手プレイヤーに2000ポイントのダメージを与える!さらに、相手フィールド上のモンスターの攻撃力と守備力は2000ポイントダウンする!」


六道神 GAKI−DO レベル−10 闇属性・天使族・ダークシンクロ
ATK4000 DEF4000
チューナー以外のモンスター1体−ダークチューナー
このカードを特殊召喚するためには、自分フィールド上に存在する「DT(ダークチューナー)」と名のついたチューナーのレベルをそれ以外の自分フィールド上に存在するモンスター1体のレベルから引き、その数字がこのカードのレベルと等しくなければならない。
このカードのシンクロ召喚は無効化されない。このカードのシンクロ召喚成功時、及び、効果の発動時に相手の魔法・罠・効果モンスターの効果の発動はできない。
1ターンに1度、自分のライフポイントを2000ポイント回復することができる。その後、相手プレイヤーに2000ポイントのダメージを与え、相手フィールド上のモンスターの攻撃力と守備力は2000ポイントダウンする。
このカードがフィールドから離れたターンのエンドフェイズ時にこのカードを特殊召喚する。
V(ヴァンガード)能力:このカードを所持しているプレイヤーがこのカードをVにしているとき、対象のプレイヤーはデュエリスト能力「レベル−1 伝説殺し」を得る。(Vにできるカードは1人につき1枚まで。また、レベル−のデュエリスト能力を元々レベル+のデュエリスト能力を持つプレイヤーに対して使用した場合、その能力に上書きするか追加するかを選べる。)




穂村 龍一 LP2000→LP4000

天神 美月 LP2600→LP600

《堕天使スペルビア》ATK2900→ATK900

《The splendid Venus》ATK2800→ATK800

《天空騎士パーシアス》ATK1900→ATK0


「さて、このまま次のターンで止めをさしても良いが、モンスターを下手に残すのは危険だな。《死者蘇生》を発動し、《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》を墓地から蘇生させる。《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》の効果、墓地の《マテリアル・ドラゴン》を蘇生!!」(手札2→1)
穂村の場にドラゴンが展開されてゆく。《The splendid Venus》の効果で本来の力を出し切れてはいないが、《GAKI−DO》の効果を受けて弱まっている天神のモンスター達ではドラゴン達に対抗できなかった。
「バトルフェイズだ、天使どもをなぎ払え!」


《六道神 GAKI−DO》ATK3500→《堕天使スペルビア》ATK900(破壊)

《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》ATK2300→《The splendid Venus》ATK800(破壊)

《マテリアル・ドラゴン》ATK2400→《天空騎士パーシアス》ATK0(破壊)


「きゃあ!!」
「天神(さん)!!!」
《天空の聖域》の効果で戦闘ダメージは受けないが、モンスターが破壊される衝撃によって天神は吹き飛ばされる。吉井達は周りの熱気に煽られ、助けに行くことが出来ず、ただ叫ぶことしか出来なかった。
「ははははは!《Venus》が消えたことで俺のモンスター達は元のステータスに戻る!これで次の俺のターンで貴様は負けだ、天神!ターンエンド!」


(9ターン目)
穂村 龍一:LP4000、手札1
場:《六道神 GAKI−DO》(ATK4000)、《レッドアイズ・ダークネスメタルドラゴン》(ATK2800)、《マテリアル・ドラゴン》(ATK2400)
場:《リビングデッドの呼び声》

天神 美月:LP600、手札1
場:
場:《神の居城−ヴァルハラ》、伏せ×1、《天空の聖域》



「天神会長ダゥウン!!このまま立ち上がる事は出来るのかぁ!?」
「う、うぐぅ…。」
天神は何とか立ち上がるが、衝撃が大きかったせいか、意識が朦朧としていた。
「天神会長が立ったぁ!!しかし、この絶望的状況をどうするぅ!?“伝説殺し”で攻撃力3000以上のモンスターで攻撃出来ず、《六道神 GAKI−DO》はフィールドから離れても戻って来る効果がある!《マテリアル・ドラゴン》の効果で効果ダメージも無効、効果で破壊する事も出来ない!万事休すかぁ!?」
※《六道神 GAKI−DO》の効果は穂村がカメラに向かってアップでテキストを見せてくれました。

「ははははは!もう諦めるんだな!このターンで俺を倒せなければ貴様は負ける!だが、この状況を覆せるカードは貴様のデッキにはない!ははははは!」
「穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!穂村ぁっ!」
押し寄せる熱気、会場のほとんどは穂村の味方をしていた。天神の闘う気力も次第に薄れていく。天神の耳には会場の大歓声すら届かなくなっていきそうになっていた。

「…みぃっ!あ…っ!」
「……?」
薄れて行く意識の中、微かに天神の耳に聞こえるものがあった。それは周りの音にかき消されそうになるほど小さな音であったが、彼女にとってはとても暖かく、勇気づけてくれるものであった。
「天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!天神ぃっ!」
吉井、見城、基の3人が自分の名前を呼んでいる。たったそれだけのことであったが、天神には充分であった。
「…私のターン、ドロー!!」(手札1→2)
「天神会長復帰ぃ!!しかも、倒れる前よりも輝いているように見えるぞぉ!!」
「ば、馬鹿な、何故闘える!?そのまま倒れるか、サレンダーすれば楽になれると言うのに!?」
気力を回復し、それどころか以前より生気に溢れている天神を見て穂村はたじろぐ。どうしてこれ以上闘おうとするのか今の彼には理解できていなかった。」
「穂村先輩、私は、私を応援してくれる、支えてくれる人がいるから絶望から立ち直れました。穂村先輩が諦めなかったように、私も諦められないんです!」
「な、なんだと!?」
穂村はその両目を大きく見開き、声を聞く。自分の名前を連呼する観衆の中から聞こえてくる天神を呼ぶ声、吉井と見城とメイドコスの基の姿を。
それを見て、穂村は思い出す。いつも自分のことを応援してくれていた人達の事を。
天神に負けてからは負けが多くなり、次第には負ける事がほとんどになったプロリーグ。周りに自分を応援してくれる人はほとんどいなかった。しかし、穂村は諦めなかった。どんなに落ちぶれても、プロを辞めようとはしなかった。
本当にわずか、10人にも満たない人達がいつも自分を応援しに来てくれていたことを彼は思い出していた。
穂村はその人達を裏切れなかった。だから、力を求めてしまった。
その結果がこれであった。
応援してくれる人数は圧倒的に違う。だが、穂村は本当の意味で満たされていなかった。いつも応援してくれる人達、その温もりが感じられなかったからだ。
「お、俺は…。」
穂村は涙を流す。先程の偽りの涙ではなく、いつも応援してくれた人達に対する感謝と申し訳なさから出る涙であった。

「穂村先輩、私はあなた達から逃げました。でも、もう逃げません。だから、今度は私の攻撃を受けとめて下さい!!」
「…………解った!!こっちも全力で迎え撃つ!!」
天神の決心を見て、穂村も覚悟を決める。真直ぐ、正面から今の天神を、かつての自分を受けとめようと。
「リバースカードオープン、《クリボーを呼ぶ笛》!デッキから《ハネクリボー》を攻撃表示で特殊召喚します!バトル!《ハネクリボー》で《六道神 GAKI−DO》に攻撃!」


《ハネクリボー》ATK300→《六道神 GAKI−DO》ATK4000


「天神会長、まさかの自爆かぁ!?」
「いえ、違います!」
「ああ、天神はここで決める気だ!」
「僕にも解ります、これで天神さんの勝ちです!」
吉井と見城は天神がこれで勝利を収めると確信していた。基も今までの天神のデュエルと決意を見て確信していた。

「ダメージステップ、手札から《バーサーカークラッシュ》を発動。墓地の《アルカナフォースEX−THE DARK RULER》をゲームから除外して、《ハネクリボー》の攻撃力と守備力を4000ポイントに変更!」


《ハネクリボー》ATK300→ATK4000


「そして、ダメージ計算時、手札の《オネスト》を捨てて効果発動!《六道神 GAKI−DO》の攻撃力を《ハネクリボー》に加えます!これで最後です!」


《ハネクリボー》ATK4000→ATK8000

《ハネクリボー》ATK8000→《六道神 GAKI−DO》ATK4000(破壊)


光り輝く《ハネクリボー》の渾身のパンチが《GAKI−DO》にヒットし、《GAKI−DO》は崩れ去っていく。
《GAKI−DO》の消滅と共に、黒い煙で覆われていたフィールドは《ハネクリボー》の放つまばゆい光にかき消され、消えていく。
穂村の心も同じように闇が取り除かれて行くようであった。

(ああ、これが負けるということか…。悪く、ないな…。)


穂村 龍一 LP4000→LP0


穂村は負けを認めた。今まで認めることが出来なかった敗北を。
だが、それは心地よく、今まで満ちる事が無かった心が満たされていった。

第五話 終わり
「決闘時空(デュエルスペース)第五話 Part5」へのコメント

By アッキー
2012-11-27 02:11
穂村プロが救われてよかった・・・!
満たされた負けは、満たされない勝利より価値が高い。これは真理ですね。
駄目な敗北は心を濁らせますが、駄目な勝利も、それに匹敵するくらい心が濁る。
その逆に、いい勝負というのは、勝っても負けても納得できますね。

10人にも満たなくても、いつも応援しに来るファンがいる。
それは素晴らしいことですし、それをありがたいと思えるのも素晴らしいです。
私も、ファンは量よりも質だと実感できる毎日を過ごせているのは幸せなことですし、そう思える感性の人間でよかったと思っています。

天神VS穂村戦は、穂村のリベンジマッチでありながら、その実は境遇の似ている2人の戦いだったんですね。
かつて天神さんも、自分のことを思ってくれている少数の人をも拒絶してしまった。
それは、熱烈なファンの温かさを忘れていた穂村プロとよく似た状況。
だからこそ、この2人がデュエルするということに大きな意味があった。いいデュエルでした・・・。

ゲーム的にもグレートな内容。Venusが出てきたときは、その手があったかと膝を叩きました。
思えば日向のときは、あまり活躍させられなかった金星天使。何気に相手はダークネスメタルドラゴンですね。思わずニヤリ。
《コーリング・ノヴァ》がパーシアス出せることも、すっかり忘れていましたよ・・・。この流れるような戦術!
そう言えば境遇だけでなく、光闇混合種族デッキというあたりも共通点なのか。

ハングリーデビルの効果が何気に好み。《グリード・クエーサー》のような“レベルを喰う”モンスターですか。
そして餓鬼道、攻撃性能はオシリスをも上回る恐ろしいモンスター! 穂村コールが恐いけど悲しい。
パッと頭に浮かびましたが、《阿修羅》とはイメージ・戦術共にマッチしそうですね。
(表記がヘルウェブ・スパイダーとTEN−DOなってます)

笛で《ハネクリボー》を呼ぶのも、またまたニヤリ。きっと吉井くんは照れてるんだろうと思うとハァハァ。
そこからの流れるような決着、お見事でした!

>《六道神 GAKI−DO》の効果は穂村がカメラに向かってアップでテキストを見せてくれました。
こういうサービス精神を忘れないところがプロらしさ。
心が闇に呑まれきってない証拠だ!

>メイド基
よし! 穂村プロもメイド服をおかしいと思わなくなっているようだ!
この調子で基くんの服装はメイド服がデフォルトになr(ry

pc
[編集]
By 呵々闘諍
2012-11-27 02:45
>アッキーさん
最初は穂村さんを救うのに吉井君と闘わせようと考えていました。天神さんのために闘う吉井君の姿を見て、自分も変わっていこうと決意する話にしようとしたんですが、それだと変わるきっかけとしては弱いんじゃないかと思い、天神さんと正面切ってデュエルする展開にしました。
幸い、この二人をぶつけることで上手く対比が出来たので良かったです。(元々考えていた話だと穂村さんが吉井君相手にミスをしまくって自爆しまくるという情けない話でしたので。)

Venusは如何にして穂村さんにダメージを与えるかを考えて、何とか探し当てたカードでしたね。最初はオネストを使い回してボコボコにしていく構成だったんですが、それをやるとGAKI−DOが出る前に穂村さんが死ぬのでやめました(笑)
《天空の聖域》と《コーリング・ノヴァ》はダメージ調整用カードとして採用しました。上手くライフポイントを操作するためにカードを探していたんですが、丁度アッキーさんのコレクターを読んで採用させてもらいました。私は元々《コーリング・ノヴァ》は《天空騎士パーシアス》をリクルートするためのカードと考えていたので、リクル特攻を見た時は衝撃を覚えたことがあります…。
思えば、採用しているカードのほとんどは「決闘都市」の影響を受けてますね(笑)

表記ミスの指摘ありがとうございます!(コピペがばれた!!(笑))
《六道神 GAKI−DO》の効果は元々相手ライフを100にして、その差の分自分が回復し、相手モンスターの攻守を0にする効果でした。ただ、TEN-DOと比べるとあまりにも強すぎたので2000縛りを加えました。効果イメージもオシリスのものです。

《ハネクリボー》戦術は決学3のラストの吉井君からですね。
天神さんの《ハネクリボー》を使って吉井君が逆転出来、本当の意味で解放された天神さんと、これから救う穂村さんの対比です。
ホント、OCGってすごいな…(あのスピードが無ければ)

穂村さんというか、ダークシンクロ使いはそこまで闇に呑まれませんね。ある意味人間味を残して、相手を戸惑わせるのが作戦の一つだったりします。

メイドコスの基は…
ホントにそろそろ戻さないと、帰ってこれなくなる(泣)
pc
[編集]
By 千花 白龍
2012-11-27 22:47
プローーーーー!!!!穂村プロー!よかった!よかったよよよ!救われる思いです。

>「穂村先輩、私は、私を応援してくれる、支えてくれる人がいるから絶望から立ち直れました。穂村先輩が諦めなかったように、私も諦められないんです!」

うおお!目頭が熱くなってきた!
穂村!穂村!穂村!天神!天神!天神!
ガッチャ!最高のデュエルだったぜ!
pc
[編集]
By 呵々闘諍
2012-11-28 11:09
>千花 白龍さん
何とか穂村さんを救うことが出来ました!
白龍さんが仰ったようにもうちょっと暴走させてもいいかなと思ったんですが、あんまり穂村プロを悪くすると生徒への印象が悪くなるので、こんな感じになりました。

そして、お褒めの言葉ありがとうございます!
みんなで最高のデュエルをしてくれた二人を讃えましょう!
pc
[編集]
By 豆戦士
2012-11-28 17:40
 攻撃力3000以上の攻撃を封じるだけとか全然大したことなくね?
 とか思ってしまうのはたぶんアッキーさんがインフレさせまくったせい。

 自分の攻撃力を上げると攻撃できなくなるなら相手の攻撃力を下げる! というすっごい王道な駆け引きを見て、逆にフレッシュな気持ちになっている豆戦士です。こんにちは。

 決闘学園シリーズおよびその外伝で、ここまでチートなデュエリスト能力がほぼ絡まない真っ当に熱血した王道のデュエルを見られることになろうとはね!
 みなさん基本的に奇をてらった外伝しか書かないので(※元凶は確実に私。ただし反省はしていない)、とても新鮮でした。わかりにくいですがこれ褒めてます。

 最近、天神さんとの対比で今度は誰かが天神さんに救われる展開をよく見るなぁ(※2回です)と思いましたが、よくよく考えてみると本編で真っ当にメンタルフェイズやったのが彼女しかいないっていうね!
 こちらは若干反省している。

 他の人にダブルで自分の作品の外伝を連載してもらえるという、そこらの売れっ子商業作家さんでもなかなかできないような体験をさせてくれたアッキーさんと呵々闘諍さんに全力で感謝しつつ、それでは、また。

 けっきょく穂村プロのLv.3能力とは何だったんだ……!

pc
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By 呵々闘諍
2012-11-28 21:51
>豆戦士さん
どうも、こんにちは、地味な能力に定評のある呵々闘諍です。
能力が地味なのは、元々の能力者が弱いと言う裏設定があったり、無かったり。
と言うより、私自身、豆戦士さんやアッキーさんの様に能力を考えられないからです。
マイナス能力の役割も能力者に対するアンチの意味合いがありますからね。
質より量です(笑)

私もいつか強力だけど、穴のある能力を書いてみたいものです。(いつになるかな(泣))

天神さんは神様ですし、人を救う力はあるんじゃないですかね。(後付け)
確かに、メンタルフェイズは天神さんしか描かれていませんでしたね…。実はそういう点で、私は吉井君に恐怖を抱いてます。何度も本編を読んでるですが、吉井君の心がイマイチ掴め無いんです。
リンネの策略とは言え、天神さんを救おうと言う意志はどこから湧いて来るのか、お人好しで済ませられるかもしれませんが、私にはただならぬものが感じられて、怖いです(笑)

穂村さんの能力は…自分のモンスターの攻撃力を倍にするとかですかね?(笑)
レベル3の能力の強さがイマイチ掴めなくてすみません。

私に外伝を書かせてくれた豆戦士さん達に感謝しつつ、それでは!
pc
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