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偽りの名 呵々闘諍の日記(力水の書いたやつ) 決闘時空まとめページ
2012-10-29(月)
決闘時空(デュエルスペース)第四話 Part2

決闘時空 第四話「伝える者」Part2

「特に収穫は無かったか…。翔子の方はどうだろうな…。」
デュエリストフォース内にある病室から出てきた佐野は目ぼしい情報が手に入らなかったので少し落胆しているようであった。
佐野と昨日闘ったデュエリストはデュエリストフォースの病室に運ばれていた。今朝、目を覚ましたとの情報が入ったので佐野は病室に向かい事情聴取をしたのだが、何も覚えていないようであった。
佐野はもう一方の容疑者で、先輩である栗原 由紀のいる取調室に今向かっている。
栗原の場合、佐野と闘ったデュエリストとは違い、気絶はせず、意識がはっきりしていたため、デュエリストフォースに着いてすぐ事情聴取をしようとしたのだが、
「今日は眠いから無理かな?お休みなさ〜い?」
と言って、眠りに着いてしまったので起床してから取り調べをすることにした。
そして、栗原の事情聴取している人物は…

「だぁー!もういいっ!知らないなら知らないでいいわっ!」
佐野は取調室の付近に近付くと、大声をあげて扉を開けて出てくる朝比奈 翔子(あさひな しょうこ)に出くわした。
佐野と朝比奈は長い付き合いで、翔武学園を卒業し、生徒会をやめた今でもこうしてデュエリストフォースで働いている。仲が良いのだが、恋仲かどうかは不明で、よくその事についてからかわれることもしばしばある。
「しょ、翔子、いったいどうしたんだ?」
「どうしたも、こうしたもないわよ!春彦、わざと栗原先輩をあたしに押し付けたでしょ!?」
「い、いや、俺は昨日闘った容疑者の方に当たってたし、翔子は栗原先輩と仲が良かったと思ってな…。」
「あれで仲が良い!?あんたの思い出補正は相当なものねっ!その年でもうボケが始まってるの!?」
「おい、そんな言い方はないだろ。これも俺たちの役目だ。それぐらいは我慢してくれ。」
「ええ、そんなのわかってるわよっ!自分でもあんたに迷惑かけちゃってることぐらい!でも、無性に腹が立っているのよ!」

朝比奈は佐野に取り調べの際のことを話した。
「翔子ちゃんだ〜?」
朝比奈が取調室に入ると席に座っていた栗原が笑顔で出迎えた。取調室の中は取り調べ用の机と席が二つ、記録係用の椅子が一つ置いてある。取り調べ用の席の一つに栗原は腰を掛けており、記録係用の椅子には男性隊員が座っていた。
久しぶりの再会に栗原は喜んでいたが、朝比奈の方は栗原に苦手意識を抱いていたため、喜んでいなかった。
「お久しぶりです、栗原先輩。相変わらずのご様子で…。」
「二年ぶりかな?そこにいる君、お茶を持って来てくれないかな?」
「はい?」
同室していたデュエリストフォースの男性隊員にお茶の催促を栗原はしてくる。唐突に命令されたため戸惑っていた。
「空気読んでくれないかな〜?折角の感動の再会なんだけどな〜?」
「わ、わかりました…。」
栗原からどことなく漂うプレッシャーに押されて男性隊員はお茶を汲みに退室してしまった。
「栗原先輩、お言葉ですが、あなたは容疑者と言うことをお忘れで?」
「そうだったっけ?まあ、翔子ちゃんも座ればいいのかな?」
「はぁ〜〜〜〜。」
翔子はため息をこぼす。生徒会時代もこの栗原のマイペースに振り回されて苦労していた。しかも栗原は妙に翔子になついてため、傍から見れば仲が良いように見えていた。
そのため、翔子が栗原について困っていると誰かに相談を持ちかけてもただのスキンシップだろうと言われて相手にされなく、気苦労が絶えなかった。
「う〜ん、やっぱり、翔子ちゃんはかわいいかな?」
朝比奈が席に着くと栗原は立ち上がり、朝比奈にすり寄って来た。執拗な栗原からのボディタッチに朝比奈は嫌気がさしていた。
「栗原先輩、やめてください。」
「うん、わかったよ?でも、最後に良いかな?」
そう言うと栗原は朝比奈の頭上に自分の胸を乗せた。
「うん、翔子ちゃんと会ったら、これをしないといけないかな?」
「うがぁー!その無駄な脂肪を今すぐどけろぉー!」
「ひぃっ!」
朝比奈の堪忍袋の緒が切れたのか、怒りを露わにして吠える。丁度お茶を汲んで戻って来た男性隊員は朝比奈の大声に恐怖した。
栗原は女性としては背が高い方で、胸も大きく、いつも朝比奈の頭の上に胸を乗せて遊んでいた。小柄な朝比奈にとっては嫌がらせでしかなく、いつも声を荒げて怒鳴っているが、身長差ですぐ取り押さえられて一度も栗原に報いることは出来なかった。
「あ、お茶かな?ささっ、翔子ちゃんもどうかな?」
怒られても笑顔でいる栗原は男性隊員が持っているお盆の上に乗っているお茶を取り上げて朝比奈に渡す。
「くっ、この人はっ!」
栗原のペースに乗せられて渋々お茶を飲むことにした。栗原の方もお茶を飲みに席に戻っていた。

「それで、翔子ちゃんはなにが聞きたいのかな?」
お茶を飲んで一息ついて満足したのか、栗原の方から話しかけてきた。
「単刀直入に聞きますよ。栗原先輩、あなたがデュエリストを襲っていた犯人ですか?」
朝比奈真剣な面持ちで話を切り出す。栗原も朝比奈の表情を見て笑顔から真面目な顔になっていた。
「それは…。」
「それは?」
「わからないかな?」
栗原の顔は一瞬で笑顔に戻り、けろっとなった。朝比奈は早い表情の切り替わりに呆れて椅子から転げ落ちそうになる。
「わからないって、どういう意味よ!?じゃあ、次、ダークシンクロって何?」
朝比奈の口調は荒荒しくなり、先輩相手でもいつもの口調に戻っていた。
「ダークシンクロ?新しいオリンピックの競技か技かな?」
「だぁー!話にならないっ!本当に覚えてないのかしら!?じゃあ、昨日はどうして翔武学園に来てたの?」
「う〜ん、仕事帰りにたまたま寄ったからかな?」
「たまたまかよっ!じゃあ、次!」
そんな感じで取り調べは続いたのだが、栗原は何も覚えていないのか情報を得ることがほとんどできなかった。
終いにはお腹が空いたと愚痴をこぼした栗原に腹を立てて、朝比奈は取調室から出てきたのである。

「そうだったのか。それで、栗原先輩は大丈夫なのか?」
「その場にいた隊員に任せたわ!今頃カツ丼でも頼んでるんじゃないっ!?」
朝比奈はイライラしながら佐野と一緒に情報結果をまとめに情報管理室に向かって歩いている。
佐野は落ち着けとなんとかなだめようとするが、朝比奈はなかなか機嫌を取り戻さなかった。

「で、そっちはどうだったの?」
ようやく落ち着いたのか、朝比奈は佐野の結果を聞こうとした。
「ああ、俺の方も駄目だった。解った事と言えば、俺と闘ったやつの名前が水野 澄子(みずの すみこ)ってことぐらいだ。彼女も栗原先輩と同じ様で何も覚えていなかったみたいだ。」
「水野 澄子?…どこかで聞いた名前ね?」
朝比奈は水野 澄子という名前に何か思い当たる節があるのか考え始めた。
「去年の全国大会で俺達が闘った光蘭高等学校の選手だ。」
「ああ!天神とデュエルしたやつね!」
朝比奈は思い出してすっきりしたようだった。去年の全国大会の一回戦で翔武学園高等部と光蘭高等学校は対戦した。その最後の組み合わせが天神と水野の対戦であった。
水野もレベル1程度の能力を持っていたが、レベル5の天神に敵わず負けていた。もっとも、その前の試合で3勝していた翔武学園生徒会にとっては、その試合に勝たなくても問題は無かったのだが。
「レベル1ぐらいの能力は持ってたはずよね?なのに別の能力があるなんて…。」
「ああ、俺も名前を聞いた時には少し驚いた。デュエリスト能力を持っていた彼女がどうして他の能力を持っていたのかって…。」
佐野は昨晩の事を振りかえっていた。自分の能力がマイナスになっていたこと、能力を付与する能力、ヴァンガード能力を持つカード、ダークシンクロモンスターのこと。
一応、あの後、他の者と試しにデュエルしたが、佐野の能力は戻っていた。詳しいことを聞こうにも、当の本人達は記憶が欠如している。謎が増えるばかりだった。
「とりあえず、吉井達の報告を待つか…。」
「そうみたいね。上手く大庭ってやつを捕まえられれば良いんだけど…。」
佐野と朝比奈は吉井達の報告を頼みにすることにした。

じゃり、じゃり…。
二人が話合いながら歩いていると、二人はあることに気がつく。施設の床はコンクリートで出来ているはずなのに土の上を歩いているような感触を靴の上からでも感じ取れていた。
「こ、これはっ!?」
「いったい、どういうこと!?」
辺りを見渡すと、背景が屋外になっていた。10月にも限らず、春のような暖かい日差しで、色とりどりの花が咲き乱れている花畑に二人は立っていた。しかも、後ろを振り返っても施設は無く、ただ花畑が広がっていた。
二人は、幻覚を見せられているのか、別の空間に飛ばされたのか、戸惑っていた。
戸惑いながらも改めて回りを確認すると、朝比奈と佐野は自分たちのいる花畑の中で大きなダンボールを見つける。
ダンボールには「密林」という文字と人のにっこりした口を彷彿とさせる弧を描いた矢印が書かれていた。
「こちらコードネーム「蛇」ミッションを開始する。」
周りの背景に似つかわしくないダンボールは振動したかと思いきや、中から某ステルスゲームの主人公を真似た声が聞こえてきた。
ここを花畑の空間にした犯人だろうか?それともタイミング悪く侵入してきた侵入者だろうか?どちらにせよこんな目立つ侵入をしてきたダンボールの中の主に二人は呆れていた。
佐野はデュエルディスクを構え、警戒をしつつもダンボールの中身を確認しようとゆっくりと近づくのだが、
「そこから出て来なさい!」
朝比奈は今までの鬱憤を晴らすかの如く、ダンボールを蹴り上げた。
「おい、翔子!」
朝比奈の軽率な行動に佐野は注意をするが、肝心のダンボールの中には何も無かった。
「誰もいない…?」

「おぉい、こっち、こっち!」
「「!?」」
二人は自分たちを呼ぶ声がする方に顔を向けると、ポットとティーカップを乗せた白いテーブルと白椅子に腰を掛けた人物が視界に入って来た。
その人物は、三つのティーカップにポットから紅茶を注ぐと佐野と朝比奈にこっちに来るように呼び掛ける。
佐野と朝比奈は周囲に警戒しながらも歩いて近づいて行った。
「そんなに緊張しなくて良いのに…。」
「貴様、一体何者だ。」
「あんたがこんなことしたの?」
「ま、落ち着いて、落ち着いて、リラックス、リラックス〜。お茶でも一緒に飲もうか。」
謎の人物は佐野と朝比奈の方に皿の上に乗せたティーカップを移動させる。
「ふざけるな、まじめに応えろ。これ以上変なことをするなら、実力行使で行くぞ。」
「春彦、あたしにやらせて、気晴らしをしたいからね。」
「ヒドイなぁ、リンネと闘った仲間なのに…。」
佐野と朝比奈は睨みを利かせ脅していたが、謎の人物から「リンネ」と言う単語が出ると、一瞬で驚きの表情に変わる。
「リンネと…!」
「闘った…だと!?」
「覚えていないのも無理は無いね。無数に存在していた過去の世界で僕と佐野さん、朝比奈さんたちは仲間だったんだからね。」
「…………。」
「…………。」
謎の人物の言っている事が本当かどうか解らず、二人はただ黙っていた。
「あ、そうだ、自己紹介がまだだったね。」
紅茶を飲み終え、謎の人物は席から立つと、腕を振り回し、仮○ライダー1号の如く変身ポーズで名乗りを上げた。
「僕は黙示録の終末を告げる世界の破壊者にして、人類の平和を望む愛の使者、その名も愛縷(あいる)!」
謎の人物の正体は月島とデュエルした侵入者、愛縷であったが、佐野と朝比奈はそれを知っていない。
腕をビシッと伸ばし、「決まった!」と愛縷は小さな声で呟いたのだが、
「肩書からしても怪しいわね。」
「貴様の目的はなんだ。」
軽くスルーされてしまった。
「ちょっ!ノリが悪い!」
愛縷は自分にとってかっこいいと思える名乗り口調とポーズを決めたのにも関わらず、冷たい返事をする朝比奈と佐野に怒っていた。
「そんな態度じゃ、ダークシンクロのこととか教えないよっ!」
「何っダークシンクロだと!?」
「あんたが、事件の犯人なのっ!?」
再び、佐野と朝比奈を驚かすことに成功し、愛縷はニヤッとしていた。
「くく、やっとこっちの話を聞くようになったか。でも、こちらの情報をただであげるわけにもいかないねぇ。それにデュエリストならこれで語るのが流儀でしょ。」
愛縷の左腕にはさっきまで無かったデュエルディスクがあり、二人に見せつける。佐野と朝比奈もそれを見て応える様に構え始めた。
「……さて、ハンデはどうしようかな?」
愛縷はデュエルディスクを展開すると宙を見上げ、何か考えているのか右手の人差し指を回しながら鼻歌を歌っていた。
「流石にニ対一となるとそちらもハンデが必要と言う訳か。」
「ノンノン。ハンデが必要なのはそちらの方だよ。」
「随分な自信ね。身の程知らずとはこのことね。」
「くく、それはどっちかな?どうしようか?ライフポイント1がいい?モンスター召喚不可?魔法・罠使用不可?手札0スタート?それとも全部がいい?」
「俺たち相手にハンデは必要ない。デュエリストなら…全力で来い!」
「悪いけど、あたしたちはどこの馬の骨かも知らないやつに負けるわけにはいかないのよね。」
愛縷からのハンデの話を佐野と朝比奈は受け入れなかった。得体の知らない敵とはいえ、二対一のデュエルであり、デュエリストフォースであるプライドからかハンデを必要とはしなかった。
「くく、やはりお二方には失礼な話だったか。そうそう、負ければこっちの言うことを聞いてもらうけど、いいかな?」
「……わかった。どちらにせよ、貴様を倒さなければここから出られないようだしな。」
「逆にあんたが負ければ知っていること洗いざらい吐いてもらうわ。」
佐野と朝比奈は愛縷からの要求を飲み、こちらも要求を言い渡す。
「うん、わかったよ。…あ、そうだ、どうせなら、二人一緒にターンを進めてくれないかな?そうしないと多分、僕には勝てないよ?」
愛縷がルールを提案すると佐野と朝比奈は目を合わせ、頷く。
「……いいだろう、その条件でやってやる。」
「あたしたちに挑んだ事をせいぜい後悔しないことね。」
「それじゃ―――――」

「「「デュエル!!」」」

続く
「決闘時空(デュエルスペース)第四話 Part2」へのコメント

By アッキー
2012-10-30 00:42
マッド・ティー・パーティーへようこそ!の巻?
愛縷・・・せっかくポーズを決めたのになぁ・・・。スネークにも呆れられて。
一応これで3名ですが、愛縷1人でマーチ・ヘアとマッド・ハッターの二役か。
ワインは無いけどデュエルをしようとばかりに始まる、2対1のデュエル!
それも特殊ルールか・・・。これはワクワクする。

それにしても朝比奈さんは、この手の人物に懐かれる運命なのか。
笑ってはいけない・・・微笑ましいと思ってもいけない・・・。
相談を持ちかけても相手にされない辛さはよく知っているのだから。
しかし、頭の上に胸を乗せている時点でもうwww
何だこの百合展開。そう言えば決闘都市でも轟桃花に押し倒されていたな・・・。

栗原先輩に続いて、水野澄子。
あのあたりの面々は全て容疑者候補と認識して構いませんね?

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[編集]
By 呵々闘諍
2012-10-30 00:57
>アッキーさん
一人で二役こなす愛縷、しかし、努力もむなしくスルーされる…。
朝比奈さんと佐野さんの強力タッグですが、愛縷相手にどこまで頑張れるかな…?

やっぱり、アッキーさんですと、朝比奈さんと栗原さんの関係のところを読んで心を痛めますか。
私自身、書いてて結構黒いなぁって思ってました。栗原さんにとってはスキンシップなんですが、朝比奈さんには嫌がらせでしかないですね。
私のイメージでは朝比奈さんは男性より女性に好かれそうなんですよね…。

過去に名前だけ出てきたメンツは今後も出して行く予定です。
でもやっぱり、やったことを覚えていないとなると…。
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[編集]
By 千花 白龍
2012-11-11 00:09
愛縷君余裕かましすぎだろ…。でも絶対勝つパターンだ、これ。
頑張れ佐野君、頑張れ朝比奈さん…。
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[編集]
By 呵々闘諍
2012-11-14 23:10
>千花 白龍さん
愛縷が全力だったら、一瞬だ!
犠牲になる二人ェ…。
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