異・戦国史

妄想掃き溜め専用地下室





2008-05-10(土)
B高潔の人は懐うのだった




「全ての人々に安寧と休息を与えたまえ。」

自分は良く生かされた、と今更ながら思う。あの御方の姿が浮かぶようで。


「…どうかしましたか?忠興君。」

いつの間に教会に入って来たのか、彼は此方に近付いて来た。

「本当に追放を享受するのか。」

「天下人の仰せのままに…です。」

私は彼にキリスト教への入信を勧めたこともあった。
勿論、断固拒否されたが。
此度のキリスト教追放令は徹底しているが、元より棄てるつもりは毛頭なかった。
友とも、この教会とも、お別れをせねばいけない。

「まあ何と言えば……お元気で。」

「気に病むことは無いのです。誰しも御家は大事なのですか「気に病んでなどいない。」

暫しの蝋燭の燃える音さえ聞こえそうな沈黙。

「しかしまあ。」

呆れたような顔。

「神も残酷だな。こんな純粋な信者を助け無いなんて。」

何時もの皮肉。

「ですがこれが神の創りし運命なら、従いましょう。」

「自らを殺すのか?それは教えに反する。

答えを待たずに彼は話を続ける。

「そんな馬鹿な掟さえ無ければ…。」

おやと思い顔を上げれば、普段の彼からは想像出来ない姿だった。
俯いて次の言葉を躊躇っている。
ああ、きっと彼は彼女のことを…

「あれは貴方のためだったです…忠興君。彼女と比べれば成る程、私は弱い人間です。」

瞬間、彼は私の胸ぐらへ掴みかかった。
必死な、しかし悲しそうな顔で。

「ちっ…!」

我に帰ったのか私の体は直ぐに離され、突き飛ばされた。

「……後悔はないのか。」

そう言った君は本当に何時かのあの方と良く似ていた。



(後悔はない、ただ自分の無力さがかなしい)
高山右近



補足
すみません分かりにくいと思うので…(汗)
右近は中国攻めの際、荒木村重に呼応し謀反しますが、村重が負けたとき信様の元へ白装束で赴きます。
勿論殺されることは覚悟の上でしたが、信様は右近を許すという…
その時の信様の印象が強烈に残っていればいいな、忠興の「ミニ信長(違)」と呼ばれていたのが出せればいいな…と。
お粗末様でした(汗)
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