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虚言の道標
By 足羽
2010-05-13 22:05:23



それは自身のため。
黙し、秘した心の中にあれば、望みであり。

これは誰かのため。
叶えたいと、ひとたび口にすれば、願いに変わる。



いつしか迎える最期の瞬間。



どうか。
よく聞いておいてほしい。
欲したときには、きっと叶わないから。


忘れてほしいのです。


あなたは知っている。

拒めば、否定と同義になることも。
現実からの逃避は、存在を消し去るということも。


あなたが知っているのは、その優しさゆえ。

だから、泣きながらも。
この遺言を受け入れざるを得ない。

そう、思ったのに。




「最期までうそつきなんだね」


強がりばかりで、うそつきな人間なのに愛してもらえて。


「初めてのうそを、聞いて」



一度たりともそれを言わなかった人を愛せた私は、幸福でした。


「忘れるよ」


ありがとう。

あなたの優しいうそが、九泉へ向かう私の手を引いてくれる――。





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