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魔法少女リリカルなのは ───空を駆ける小さき獣───
By テオ
2010-03-03 11:16:59
これは『死の恐怖 再誕』や『君想う声』とは始まりは似ていながら全く違うハセヲの物語です。
これを読む事に上の二つを読んでおく必要はありません。
N06A3
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By テオ
2010-03-03 11:57:34
───プロローグ。



暗く、黒い空。そこに浮かぶ満月。
世間一般状の言葉で夜、それも殆どの生物が眠っていると思われる真夜中の時間に、彼女は歩いていた。

辺りは人の存在を感じられるような街並み──ではなく、木岐が生え渡り、これまた彼女の頭上に浮かぶ空同様、真暗であった。

そんな事はお構い無しに彼女は前へ進む。ただ、両手に抱き抱える何かを何度も見下ろしながら、だが。
歩いている時の彼女には表情がない。だがその何かを見下ろす時だけは、万人が思わず見惚れてしまいそうな笑みを浮かべる。


見下ろされるそれは──時折、動きながらもじっとしていた。


「……大丈夫です」


ここに来て、初めて女性が口を開いた。


「何もかも忘れて、生きましょう。ただ、平和に」


女性は歩き続けた。どれだけの間、歩いたのかは分からない。
だが、彼女達が街を見つけた時には丁度太陽が昇ろうとしていた。

それはとても綺麗な景色だった。


「私の名は『祝福の風』、リインフォース。主、ハセヲを守る最強の盾」



N06A3
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By テオ
2010-03-03 16:27:18
───第1.0話



ピリリリリ、と目覚まし時計の鳴る音が聞こえる。俺は寝ぼけ眼でそれを切った。


「ふぁ〜あぁ……ねむ」


そう言いながらも俺はベッドから這い出た。瞬間、とてつもない寒さが体を覆う。


「なんで11月なのにこんなに寒いんだ…」


本格的な冬はまだ先だろうに。まったく、嫌になる。
だが、何時までも動かない訳にはいかない。俺は机のイスに掛けてある学校の制服に速攻で着替え、顔を洗いにいった。
冷たい水がぼやけていた意識を覚醒させる。歯磨きは朝食を食べてからである。


「さて……」


俺は再び自分の部屋に戻る。何故なら、我が家のもう一人の同居人がまだ起きていないからだ。


「おーい、起きろ」

「むぅ……」


軽く体を揺すると、目を擦りながらもそいつは布団を捲り起き上がった───


「ふぁ……おはよう、ハセヲ」

「あぁ、おはようさん。ほら、とっとと顔洗ってこい。朝食の準備があるんだからな」

「はい……分かりました」


そう言って彼女、リインフォースは部屋を出て洗面所に向かった。2年程前は俺が起こしてもらう立場だったのだが……今やそれは逆転してしまっている。


「さて、俺も朝食の準備に取り掛かるか」


腹減ったしな。
N06A3
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By テオ
2010-03-04 15:47:57
リインと2人して準備した朝食を食べた後俺は学校に行く準備を、リインは仕事着に着替え家を出る。
時間帯はまだ朝の7時だが俺の家、いやリインの家は街から少し離れた場所にあるので早く出なければならない。


「にしても3年…か。時間が経つのは早いな」


「……?あぁ、ハセヲが此処に住むようになって?
そっか……もう、そんなに経つのね」


そう、俺は3年前からこの家に住み始めた。

俺は3年より前の記憶がない。正確にはぼんやりと、記憶が霞んでしまっている。最初は思い出そうと思ったのだが、酷く頭が痛むのでリインに止められた。


「今日は仕事、何時も通りの時間なのか?」

「そうね、特に仕事も溜まってないし。
───あぁ、そうそう、ハセヲ。担任の先生から連絡がありましたよ。また、授業を抜け出したそうですね?」


───げ。
ヤバイ、ばれた。しかも、リインの口調が敬語になってやがる。

───これはマズい。


「まったく!一体、何度繰り返せば気が済むのですか!?
これで今年に入って30回目!いくら授業に飽きたからといって、抜け出していい筈がないでしょう!?」


あぁ、始まってしまった。
歩きながらではあるが、説教は止まる事を知らない。


今日は朝から最悪だ……。
N06A3
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By テオ
2010-03-11 10:11:27
案の定、リインの説教は学校に着くまで続いた。


「はぁ…憂鬱だ」


玄関口にて挨拶をしている先生達に軽く挨拶をした後、自分の教室に向かう。

ゆっくりと教室に向かう自分を追い抜くように後ろから男子生徒達が走っていく。


「ガキだな」


いや、それを言うと自分もなんだが。だが、今さっきの奴らと一緒にされるというのは何か嫌だった。







それから暫く時間が経ち今は算数の授業である。
周りでは先生の質問に答えようと必死に手を伸ばしている。

あぁ、本当に子供だ。まぁ、小学三年生なんてそんなものだろうが。


……リインには悪いが、やはり授業を真面目に受ける気になれない。何故か分からないが、酷く自分が異質な場所にいるような感覚がある。


「───フォルセスト君、この問題は解ける?」


───っと。考え事をしていたら何時の間にか当てられてた。当てられたからには解かねばならない。こんな事で評価を落としたくないし。


「……193mです」

「はい、正解。皆、自分の答えはあってた?それじゃ解説をしていきましょう。
まずは───」


何なんだろうか、これは。
つまらない。答えが正解だった事による喜びも感じない。まぁ問題を見た瞬間に答えが浮かび上がるのだから、そうなのかもしれないが。


それでも、やっぱり此処に俺の居場所はない。

俺の居場所は何処にあるのだろうか……?
N06A3
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By テオ
2010-04-05 19:31:56
ハセヲと学校前にて別れた私は仕事場へと向かう。別に特別凄い仕事というものではない。


「おぉ、リインちゃん御早う!今日も早いねー」

「御早うございます、店長。それと何度も言っていますがちゃん付けは止めてください」

「はは…毎度手厳しい。それじゃ今日も宜しく頼むよ。特に今日は遊○王の大会も開くからね…。何時ものリインちゃん目当てのお客さん以外のお客さんも来るから大変だよ」

「大丈夫ですよ店長。もう何年此処で働いていると思っているんです?」


そう、私の仕事場は子供、大人問わず人気なカードゲーム店です。
これならハセヲと会話に困る事もあまりありませんしね。


……ハセヲの魔法に関しての記憶は厳重に封印してある。勿論、そこから広がる交遊に関しても。

残酷だとは思う。申し訳なくも思う。私は、自らの主への愛故に絶望に暮れるハセヲを裏切った。


それでも。


守りたいものがある。


その為にはどうすればいいのか。


……決まっている。


いざとなれば───ハセヲ以外の全てを切り捨ててでも、私は───
P705i
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