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LOGICAL×BURST
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猫は煉獄で夢を見る
By マギーさん
2015-09-12 09:59:59
考える猫は気が付きました。
それは誰かの「夢」であると。

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By マギー
2016-09-01 15:55:05



『memory×20』



─────────ノア 船長室




うーん。僕はこんな時に
どうしたらいいのかなあ。
きっと、今。とても拙い所に
鉢合わせている・・・ような気がするんだ。





『落ちぶれたな、横島』



『五月蠅いなあ』



『横島瑞希、まさかお前が』



『五月蠅いってば。黙ってろ。お前らが、僕のやることに口を出すな』




『何をするつもりだ?ノアを破壊するか?一整備員に過ぎないお前が、神の方舟と呼ばれた自立思考型戦艦を手に掛けて、それでどうなる?』




『だーかーらー、黙ってろって。黙ってろよー』




『・・・・』




船長室を乗っ取った横島は
ヘラヘラと首を傾げて笑っていた。
身体中に工具を巻き付けて
割れた眼鏡が、ずり落ちていたけど
気にすることもなくふらついた足取りに
もう、ソイツは僕らが知ってる
『横島瑞希』じゃないような気がした。
爺さん達を縛り上げて
操作パネルを悉く壊して行く様は
異様そのものだったし。気味が悪かった。
足で、手で。機械で。
火花が散ろうとも煙が出ようとも
警報が鳴り響こうとも。
気にもせず、ただただ
破壊と言う行為に徹するから。
これは、紛れもなく異常の域だ。
だけど僕は、こんな時にもただの猫で。
いつだって見てる事しか出来ないから。
いや。いつだって見てるからこそ
この光景は、凄く悲しいものだなあと思った。
燿一やファルターがいれば
きっと少しはマシになるのだろうけど
生憎、船長室に来たのは
僕一人だったからどうしようもない。
だって心配だったんだよ。
爺さんと、ガーデニングが。
二対八程の割合で。どちらが爺さんなのかは
敢えて明確にしないでおくけど。
きっとこうやって見てるだけじゃあ
いつまでも解決はしないだろうけどさ
見えないものには、不安が募るものだよ。






『──────何をしている。横島』




『・・・シュヴァルツ』




入り口のドアの前で死んでいた
虫の残骸を足で踏みつけて
片手に銃を構えたシュヴァルツは
迷う事もなく、真っ直ぐに横島を見つめて
銃口をそちらに向けた。
横島は身体をだらんと前に折り曲げて
『撃つのー?』と茶化すように聞いた。
前髪が垂れ下がって、表情が
見えなくなったけど、声は笑ってた。




『俺は特務隊長だ。ノアの乗員であれば全てを守る義務がある』




『じゃあ、撃つ? 僕を』




『理由は知らないが。異様だ。今のお前は常軌を逸してる。魔が差した、と言うなら。得体の知れない悪意が付け入るような隙があったと言うのなら。お前にも人知れずの悩みや理由があるのだろう。だからお前を救いたいと思う。俺は仕事を真っ当するだけだ。つまり、乗員の安全を脅かすような危険分子を相手にするならば、問答無用で排除するが道理』




『・・・撃つ? 撃つなら───』




『お前は「何」だ?御子柴敬士』




爺さんも副船長も
黙ってシュヴァルツを見ていた。
毅然として立ち振る舞い
動揺も恐れも知らないと言うように。
横島ではない悪意に満ちた「何か」と
真っ直ぐ向き合う彼は
ラグの前にいる時とはまるで違う
「特務隊長」の顔をしていた。





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By マギー
2016-08-25 11:32:15


『memory×19』




────────────ノア中枢部.





『成る程、成る程。そうか。君が、この船の開発者だったのか。ラグ』




『・・・、フライハイトに、ノインか』




『いやあ。なかなか意外な話だったよ。君が一番そう言った事から無縁に見えていたから。君はもっと自由気儘で、言葉は悪いかもしれないが単純馬鹿だと思っていた。管理局に所属する人間がまさかアーカイヴを拝借するなんてねぇ?』




『・・・。何時から聞いていたのか知らないが俺はお前等をこの世界の敵だとは思っていない。向かい合うべきは、アイツと御子柴だ。だから聞かせてもらうぞ、不穏。これは必要な邂逅か?それとも違法な介入か?』




『さあ?どちらだと思う?』



『前者であることを祈りたい』



『そう。じゃあ、そう努めようか。俺も冷血じゃあない。多少の情は持ち合わせている』




『・・・いつから、成り代わっていた?』



『成り代わってはいないよ。俺は少し調整しただけだ』




『調整?』



『万物介入のシステムを使っても、煉獄とノアに関しては首を突っ込めない。何故なら、規律が邪魔をするから。ノアもアーカイヴに守られてるし。だから煉獄の前最高責任者を連れてきた。彼もまだ権利の一部は持ち合わせているらしいからね』




『・・・そうか。お前ら。時幻党の・・・』




『記憶干渉を得意とする彼と、俺の時間魔法があれば。ある程度は都合のいい現実と立場を築けるというものだよ、ラグ。神の端くれには容易い捏造だ』




『そうか。煉獄の王とトリックスターが結託すれば俺ですらも欺かれるのか。恐れ入ったよ。俺もまだまだだな。面白い可能性が垣間見えた。で、目的は何だ?』




『俺達は、個人的に御子柴に用があったんだけどね。奴め横島に取り憑いてしまったらしいじゃないか。それだと俺には少し都合が悪い訳だよ。精神寄生体じゃあ、例え横島を八つ裂きにしたって、他に移って終わりだろうからね?』



『だな』



『かと言って。絶対正義のシュヴァルツが、悪意である彼を倒して終わりじゃあ。何も解決しない訳だよ、俺達にとってはね』



『で?』



『そもそも御子柴はある男によってアーカイヴから引きずり出された「何か」だ。人に取り憑き、転々としている。姿形を選ばないからなかなか尻尾が掴めない。じゃあ、その寄生体が媒体とした「何か」は何処にあると思う?偶然なのか必然なのかアーカイヴを搭載した、この船の何処に?』




『・・・、』




『不思議なものだよ。自立思考型戦艦ノア。何を考え、何処に向かうのか。俺には知り得ないが・・・電子に彩られ、人形のように眠る彼女は少し不気味だね。とても綺麗な人だが、君によく似ている。善悪の分別よりも、きっとプログラムされた好き嫌いで判断するだろうから』




『フライハイト、やめてくれ。それは。その可能性を口にしてしまったら、衝突は免れない』



『なあ、自立思考型の機械に魂はあると思うかい?ラグ。叡智の果てに、人が作り出した術で無機物に心を宿す事は可能かな?彼女の心は、君がそうしたものは。アーカイヴから学習した知識と情報が大部分を占めているんじゃないのか?』



『・・・、』



『だとしたら、それを魂とは言えない。俺はそう思っているよ。無垢な彼女が学習するものは、きっといつだって君が望んだ姿だろうから』




『・・・フライハイト』




『まあ、ぶっちゃけ俺も彼も。アーカイヴには触れないんだけどね』



『・・・は?』





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By マギー
2016-08-16 01:18:22



『memory×18』






『きゃああああっ!?』


『チカ!!』




整備班の詰め所は大変なことになっていた。
チカが大きな虫に捕まって
今にも食べられそうになっていたものだから。
それを助けようと必死なファルターが
何だかいつも以上にクレイジーに見えた。
その姿はまさにライオン。
ああ、これぞ弱肉強食の縮図。自然の摂理だ。
例え食べられてしまっても
仕方ないことなんだけど。
でも、こんなのは嫌だなあ。
だってチカはたまに頭を
わしゃわしゃしてくれるし
背中もわしゃわしゃしてくれるし
おいしい葉っぱをくれるから
嫌いじゃないんだ。




『チカに触んじゃねぇ!! 虫ケラが!!』




ファルターは、やっぱりぶち切れていて
巨大なチェーンソーを振り回してた。
ラグとは違う意味で、これは危ない。
と言うかあれはチェーンソーじゃない。
魔改造した電動式の刃物と言った方が
正確かもしれない。
ソレは大きな音を立てながら
何匹も虫を一刀両断してる。
ファルターはオカマだけど
多分。艦内では一番、有能で男らしいと思う。
整備班だけあってなのか
体質なのか相応に腕力もある。
オカマなのに間違いなく雄だ。変なの。




『そーだ、そーだ!チカちゃんにベタベタ触っていいのは、多分艦内じゃあファルターぐらいだぜー?毎日毎日イチャコライチャコラしくされてよぉ!?なあ!船医!』



『破廉恥です・・・』




『アンタ達!?無事だったのね!!』



『ったりめぇだ。俺を誰だと思ってる?』



『小チンピラ』



『船医、眼鏡わるぞ』



『にゃーん』




『加勢すんぜ、ファルター!これはシャレにならねえ展開だ』



僕は船医に賛同する。
もしも燿一に猫語が判るなら
きっと僕も小突かれただろう。
燿一は、あちらこちらから銃を取り出しては
ピンポイントで虫の頭を撃ち抜いてく。
この格好の何処に
そんな武器を仕込んでいるのか
僕には凡そも検討がつかない。
だって。明らかに
容量オーバーだと思うんだ。




『害虫駆除、俺向いてるかも』



『そうみたいね』




燿一が、チカを掴んで離さない
大きな百足の目玉を一つ撃ち抜いた。
頭を潰せば早いだろうけど
百足はあまりに大きくて頑丈で
燿一の銃じゃあ一撃必殺できないと思う。
だからとりあえず急所を狙う。
その隙にファルターが飛びかかって
あのチェーンソーもどきで
百足の足を一刀両断にした。
すぐさま船医がチカを抱きかかえて
虫から距離を取った。
僕は棚から船医の頭に飛び乗って
体勢を立て直すと肩にしがみついた。



『オラオラオラー!!虫ケラはみんな死ねぇえええっ!!』





チカを救出して重荷の無くなったファルターは
一気にハイになって
手当たり次第に虫を倒して行った。
詰め所にひしめき合っていた虫達は
どんどん数を減らしてく。
高笑いしながらチェーンソーもどきを振るう
ファルターからは、いつもの気さくな空気が
少しも感じられなかった。
ソレはまるで阿修羅の如く。
『どっちが悪役だかわかんねぇな』と
燿一がうんざりしながら
最後の一匹を撃ち抜いて
詰め所の害虫駆除は終わった。











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