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LOGICAL×BURST
By マギー
2017-02-11 14:14:19



#000『人はそれを△△と呼ぶ』




だって仕方ねぇじゃんか。うるせぇんだもん。




『あうあう、あうあう』



『うるせぇって、いつまで泣いてんだよ』



『あうあう、だって、だって可哀想だ、可哀想だあああ、イザヤが可哀想だああ』



『お前ね、アカシックレコードは絵本じゃねぇんだよ?寝る前に読んで号泣するようなもんじゃない』


『あうあうっ、お陰で魔力吸い取られて、俺パサパサだあああ、干からびるううう』



『だから、読まなきゃいいだろ』



『だって、だって王様。イザヤは、どの項目でも死んじゃうんだよ、テスタメントはイザヤがいないと生きてけないのに、イザヤ、何処の世界でもすぐ死んじゃうから、いつも残されるテスタメントは可哀想だ』


『それが運命なんだから仕方ないだろうが。泣こうが喚こうがそれが。その世界のシナリオなんだ。部外者はすっこんでろって話』



『王様は冷たい!!』



『冷たいんじゃねぇよ。それが最低限のマナーだ。俺はルールを重んじてはいないが、最低限のマナーは、せめて守るようにしてるんだ』



『でも、でも、王様。俺は幸せな王様も見てみたいぞ』



『俺が不幸せだって言ってんのか、ゼノ』



『違う、大好きな人と幸せになれた王様も見てみたいんだ。王様の好きな人は、みんな王様を憎むから、俺は悲しい』



『・・・まあ、そりゃ嫌われること再三してるからね、俺は。性分ばかりはどうしようもねぇ』



『だから、せめてテスタメントぐらいはイザヤと幸せになって欲しいんだ、俺は』



『・・・』



『あうあう・・・』



『とりあえずお前。鼻水ふけよ、きたねぇから』



『あうあうあうーあうー』



『お前、俺大好きだな、ほんとに』



『俺は王様すきだぞー、だから王様がひとりぼっちなの、ホントは嫌なんだー』



『・・・・、ぼっちじゃねぇし』



『王様ぼっちじゃんかー、クリスマスひとりで飲んだくれてたもん』



『敢えて、です』



『うそだ!』



『・・・嘘じゃないもん』



『あうー王様はやっぱり孤独だあああ、ぼっちなんだあああ、イザヤがいないから、独身貴族なんだああああっ、うわあああああああんっ!!』



『・・・・』



『イザヤも王様もテスタメントも、みんな可哀想だ、ううう』




『っせぇな。可哀想ってゆうな!!』




『あうー・・・』



『お前、何でもかんでもハッピーエンドが美学ってワケじゃないんだよ?悲しみだって、絶望だって、世界にはありふれてる。みんながみんな平和的で幸せだったなら、争いと言う概念は、そもそも存在しなかったろうさ』



『おうおう、けど・・・けど。悲しいのは悲しいから嫌だ』



『それ、単なる我が儘だ』



『そうだけど。王様、きっとな、テスタメントは・・・あの王様は。悲しくて悲しくてどうしようもなかったんだ。イザヤを手に掛けた事も、守れなかった事も。だから、王様とロキは。今この世界でこうやって兄弟みたいに、友達みたいに・・・形を変えたんだ』




『・・・可能性は無限だからねぇ』




『王様、みんなが幸せな話も読みたいぞー、俺は』




『お前アカシックレコード何だと思ってんだよ』




『本』



『だけども!』




泣きじゃくる下僕を余所に
葡萄酒を飲みながら、考えてみる。
みんなが幸せな話・・・なんて。あるワケがない。
あるワケは無いが。もし万が一に。
そんな話が存在したのなら
夜に生きた俺の伴侶は。
一体どんな末路を辿るんだろう?
俺と理想のロキ君は。
どんな未来を生きたんだろう?
───なんて。らしくもない未来図を
頭の中に描いてみると
それはなかなか平和な世界で。
俺も彼も、酷く満たされているように思えた。
妄想。言ってしまえば単なる理想像。
けれど・・・




『まあ。確かに悪い気は、しないのかもな』



『え?』



『なんでもないよ』




少しだけ。遊んでみようか。
そう思ったのだから仕方ない。
多分、俺の管轄外だ。
だけどまあ。暇つぶしがてらに
夢を追いかけ回すのも、たまには悪くない。
悲劇を喜劇に変えるってのも
なかなか面白いかもしれない。
───さて、この退屈な恋の話を
俺ならどんな風に書き換えるだろう?





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By マギー
2017-01-25 13:15:26

#000『遠からず、近からず』



それは、ある昼下がりのこと。



『・・・どーゆー風の吹き回しだ、タナトス。お前が人助けをしたいなんて』



『えー。俺だってたまには良い事するよー?でも、俺の管轄外だから君の力を借りたいって言ってるんだよ、ロキ君』



『どうせまた、くだらない事に首を突っ込んで引っ掻き回してるんだろ?得意だからな、お前は』



『んー、それがちょっと違うんだな、今回は──あ。美味しそう。そのパンケーキ。一切れ頂くよ』



『・・・人のものを勝手に食べるな。で、何が違うんだ?』



『んー。俺と君の話でもあるって言うかー。まあ、引っ掻き回すって言うか、修正してるって言うか?』



『は?』



『話すと長いから。はい、これ。アカシックレコードから引っ張り出した記述を俺流にアレンジした判りやすーいダイジェスト本。題して「ツガイドリ」まずはサクッと読んでみてね』




『・・・』




───────────五分後.




『お前は俺を怒らせたいのか?タナトス。何だこの安っぽい官能小説は』



『ち、違うよー。そんな怒ったって仕方ねぇじゃん、こんな話が実際にあるんだからさー。この悲劇のホモカップルを何とかしてやりたいのさ、俺は』



『くだらない。駿河さんじゃあるまいし。同一存在だろうが何だろうが、そんなものをいちいち悲観して救ってたらキリがない。俺はそこまでお人好しな趣味は、持ち合わせてないよ』



『それはそうなんだけどさあ、なんと。この件にはルッキーか絡んでるんだよ、ルッキーが。で、君を殺して、このイザヤ君を「唯一」に仕立て上げようとしてる訳。どうよ、ちょっと危機感、感じない?』



『ルキフグスが?何でまた』



『管理局で出世したいから、邪魔者を潰したいんだってさー』



『・・・』



『だから、君。あながち無関係でもない訳』



『・・・、勝手なことを』



『ちなみにさ、ロキ君。眼中に無いかもしれないけど、君。管理局からもマークされてるからね?秩序を著しく乱す者、として。気を付けないと』



『なるほど。それで、つまりは。俺の同一存在を上手く使って歴史を書き換えようって魂胆なのか、連中は』



『そー』



『だったら、余計面倒だ。断る』



『え!!』



『勝手にやってろ。俺は目の前に来た障害物を消し去るのみだ』




『えー。酷い。想定外。もっと怒ると思ったのに』



『俺がそんなことで、いちいち動くような男だと思うか?』



『まあ、確かに。君、人の事だと面白がるけど、自分のことになると途端に無頓着なとこあるもんね』



『大体な・・・、根本的な話だが。何をどう間違えたら俺がお前と結ばれるんだ、気持ち悪い』



『えー。それは仕方ないよー。どんな世界でも俺はロキ君ラブなんだから』



『・・・お前のその、変態観念なんとかならないのか』



『ならない』



『死んでしまえ』



『んー。しぶといなあ。じゃあ。ロキ君が少し肩入れしたくなるような話をしてあげるよ』



『肩入れ?』



『前に此処に犬のぬいぐるみが来たでしょう?犬太郎だっけ?』




『・・・何で知ってんだ、お前』




『ずっと見てたから』




『何処で?』




『・・・で。その犬太郎なんだけどさ』




『ノーコメントの辺りが、気持ち悪さを助長してるな』




『なんと。彼イザヤ君んちの子なんだよ』




『・・・ほう?』




『だから、つまり「大好きなご主人」を。犬太郎にとっては唯一の「家族」を。無くしてしまったら。彼きっととても悲しむ事になるよ?』



『・・・・、』




『君、そーゆーの最も嫌いでしょう?』




『・・・、』




(ご主人、大好き。ご主人下僕といるとにこにこ。犬太郎、幸せ)




『・・・まあ。確かに。あの子に罪は無いね』




『だったら、少し力を貸してよ。時間魔法、得意だろ?』




『得意だが。イマイチ腑に落ちない。タナトス。お前は何で。そこまで。その二人に肩入れしてるんだ?』




『んー。俺も最初はね興味本位だったんだ。別世界の俺が愛してやまないロキ君が見てみたくなって、ただそれだけだった』




『それがどうして、こうなった?』




『見てたらさ、笑えるぐらい馬鹿なんだよ。あの二人。馬鹿なんだけど。必死で愛し合ってて。どうしたって二人共死ぬ運命なのに。不都合と不条理の中、糞みたいな世界を生きてる癖に。二人でいる時は本当に楽しそうでさ。ナンセンスもいい所なんだけど。そんなイザヤ君が可愛いし。なんとなく可哀想だから。少し贔屓したくなった』




『・・・』




『ロキ君。俺、多分ね。ロキ君が困ってると。悲しんでると。凄く嬉しいんだけど。それと同じぐらいには。君が笑ったり、喜んだりしてる様を見るのも好きなんだよ』




『・・・』




『意外だろ?だから、まあ。少し。助けてやってくれないかなあ。別に犬太郎の為でもいいから』




『俺が手を貸したとして。ルキフグスはどうするつもりだ?管理局の輩が干渉してるとなると不都合は一向に終わらないぞ?』




『ん?ああ。それなら大丈夫。アイツ、多分・・・』




『?』




『───まあ。所詮、俺は管理局と分かち合え無いから。仕方ないね』




『・・・・』




『ロキ君。俺と君の間にあるものは。腐れ縁で、きっとそれは恋にも愛にも昇華されないけど。生まれる世界が違ったら、君の愛が全部。俺に向いていたのかもしれないって思えば。そりゃあ愛しくもなるさ』




『ないな。俺が例え独り身でも変態は選ばない』




『あはは。冷たいな。変態も飼い慣らせば「素敵な旦那様」になるかもしれねぇよ?』




『俺には飼い慣らす器量がない』




『確かに。君、短気だもんね』




『────、手出せ』




『?』



『貸してやる。サリエルと結んだ懐中時計だ。他者の心臓を捧げる事で、時間を遡る』



『心臓?ああ、死を以てやり直すってこと?』



『ああ』



『超便利。でも、ロキ君。これ、自分には使わないの?』



『・・・一昔前なら使ってたかもな。けど、最近。こんな暮らしも生き方も悪くはないと思い始めてる自分がいる。だから、俺に使う予定はない』




『そっか』




『せいぜい都合良く修正してやれ。イザヤとやらも、お前の同一もどうでもいいが。犬太郎に免じるよ』




『うん。ありがとう』




『・・・これで。貸し一つ返したからな』




『ん?貸し?俺、君になんか貸してたっけ?』




『───忘れてるなら、死ぬまで忘れてろ』





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By マギー
2017-01-16 10:17:43
#000『夢の跡には、花咲き乱れ』




時幻党。無限回廊。
それは俺の知らない世界の話。
ただ、もう一人の俺は。
俺を嘲り、俺と彼を憐れんで
そこへの道程を示した。
一枚の紙切れから辿り着いたのは
軌道外と呼ばれる異質な世界だった。




『───っ、・・・ここは・・・』



『あれ?タナトスさん?』



『・・・君は』



『また変なもの持って来たんですか!?』



『変なもの?』



『あれ?タナトスさん。角は?スーツは?裸コートは?』



『なんだそれ・・・』



『えーと。うーん。もしかして人違いかも。タナトスさんにしては流れが普通過ぎる。すみません、どちら様ですか?』



『・・・なあ。タナトスって。そんなにオカシイ奴なのか?』



『オカシイって言うか、変って言うか・・・ちょっと変わってます』



『つまり。オカシイんだな』



『あははは・・・えーと。あの、それより。貴方は一体?タナトスさんじゃないですよね?同じ顔してるけど』



『ヴィルヘルム・テスタメントと言う。タナトスに教えられて、此処に来た』



『タナトスさんのご紹介、ですか?』



『・・・駿河愁水に用があるんだ』



『愁水先生に?───、わかりました。じゃあ、ご案内しますね』



『助かる』



『・・・テスタメントさんは、タナトスさんのお友達ですか?よく似てるけど、同一存在?でもあのタナトスさん特有の禍々しいオーラを感じないです』



『一応同一存在らしい。俺は神の遣いをやっていた。アイツとは真逆の存在みたいだな』



『神の遣い?天使ですか?』



『似たようなものだ。そんなに綺麗なものじゃないが』



『へぇ・・・あ、でも。天使なタナトスさんって。ちょっと面白いかも。白い羽根でも。割と似合いそう』



『君は。奴と親しいのか?』



『いえ、俺が親しいって言うか・・・俺の。いや、えーと、何だろう。俺がお世話になってる人の旧友って言うか・・・』



『・・・って言うか、君。男だったのか』



『へ?!』



『線が細いから女の子だと思ってた』



『いや、えーと。あのー・・・』



『君によく似てる女の子を知ってるから。そのせいかもな。気を悪くしたなら謝る』



『俺に似てる女の子?』



『いけ好かないマフィアの愛人をやってる無口な女の子。ナイフ投げが異様に上手いから、よく刺された』



『なにそれ!?どんな恐ろしい女の子ですか!!って言うかテスタメントさん、普段一体どんな生活をしてるんですか!?』



『・・・、普段?』



普段。思い返せば
何て事はない日常を生きていた。
彼の為に食事を作って。買い出しに出掛けて
部屋を掃除して。彼の帰りを待つ。
海が見える部屋で一人
コーヒーを飲みながら
本を読んだり、時計を眺めたり。
何て事はなく、俺はただ恋人を待ちわびる
つまらない男で。
そこには何のしがらみも無かった。
ドアが開いて『ただいま』の声が聞こえると
その言葉には、いつも酷く安堵した。



『・・・普段、か。とても。幸せだったな。幸せに暮らしてた』



『───だった?』



『ああ』



『・・・今は違うんですか?』



『今は。あの頃と。随分遠い所にいる』



『───そっか。じゃあテスタメントさんは。それを取り戻す為に、此処へ来たんですね?』



『・・・』



『時幻党って、悲しみに呼ばれるんですよ。不意に此処へ来る人は大抵、悲劇の中にいる。ごく稀に楽しいって遊びに来る人もいるけど。いずれにせよ、強い純粋な想いに呼ばれるんだそうです。テスタメントさんにもきっと、そーゆー事情があるんでしょう?でも愁水先生は優しい人だから大丈夫ですよ。それがどんな絶望であれ。きっと何とかしてくれますから』



『・・・、ありがとう』



『──少し前の話なんですが。家族を。幸せを。剥奪されて闇に呑まれた人がいました。絶望にうちひしがれて、自分も、世界も。全てを壊そうとしてました。でも、その人だって。今は楽しそうに笑います。笑うし、怒るし。普通に暮らしてます。大切なものを取り戻せたから。今は。悲壮をしまって度重なった問題に真っ向から立ち向かおうとしてます』




『・・・強い人なんだね、その人は』




『ええ。とても。俺が思うに貴方だって。きっと大丈夫です。だってあのタナトスさんの同一存在なんだから。タナトスさん、変態だけど凄く強いんですよ?』



そう言って茶化すように笑った少年の目に
俺はどう映っていたんだろう。
酷く滑稽な顔をしてたんじゃないだろうか。
今にも泣き出しそうな、惨めな顔で。
だから俺の手を握り締めてくれたのだろう。
だからそれ以上は語らなかったのだろう。
案内された場所には大きな扉が一つ。
この向こうには駿河愁水がいる。
『事情は判らないけど頑張って、テスタメントさん』
そう、少年に背中を押された。



『・・・ああ。頑張るよ』



この邂逅が彼と生きる明日に繋がるように。
背中を押してくれたタナトスや
この少年に、感謝しなければ。
俺が全部受け止めるから。
これから起こる痛みは全部、俺が背負うから。
君が笑える未来を必ず見つけだしてみせるから
どうか夢の跡には、花が咲くように。






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