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ブラック組織MOSA

≫ By クロポン
08-21 20:30
【P4】


『嵐山麗…。俺も少しばかりなら知ってるぞ』

そこへ誠二の後ろから、ひょっこりと夏花が顔を出す。

『ちょくちょくTVでも見るもんねー。今、海外でも注目されてる凄い子の事でしょ? 私達と同い年なのに世界って凄いよね。しかも音楽で!! せいじくん達も頑張らないとね!』

世界的有名なピアニスト、嵐山麗。

幼い頃から同じくピアノを習っている夏花が知らない訳がない。

『なつ、お前って奴は……』

『どうしたの、せいじくん?』

『…いや、何でもない』

興奮気味に話す夏花へ先にセリフを奪われ、呆気にとられて誠二は言葉を失った。

しかし、瀬能の表情は浮かない。

『?、瀬能、どうした?』

『……それが、ピアニストを引退するかも知れないって記事でよ…』

『えっ? どうして!!?』

夏花が驚いて身を乗り出し、新聞の上へと両手をついた。

誠二も訝しげに首を傾げる。

『…? 何かあったのか? せっかく世界の舞台で、これから活躍だって時だろうに』

『何でも…、前々から指の病気を患ってて引退説ってのはあったんだが……』

『腱鞘炎、だっけか? こじらせたのか?』

『とんでもないヤローだなって…』

『……?』

瀬能の吐いた言葉の意味が、誠二には理解出来なかった。



≫ By クロポン
08-20 21:15

【P3】


思い切り開け放ったドアのすぐ向こう側。

安嬉を見下ろすように、ズーンッ!!という効果音と共に立ち塞がる者が居た。

『???』

『安嬉ぃぃーーーーーーー!!!!!』

『げっ! 横セン!!? どうして此処にっ?!』

『お前がクラスに居ない事へ気付かん訳がなかろう! こ〜んな派手な頭して!!』

横山は、半ばキレた様子で引きつり笑いを浮かべ、さっき誠二に手刀を食らった安嬉の赤毛頭をワシワシと撫で回す。

『イテテテテテッ!! 横山センセ!! 勘弁してよぉ〜!?』

『こっちへ来い!! お前のクラスは今から俺の授業だ。観念しろ!!』

『ちょおーー!! 勘弁してー! 今日は二時限もあるじゃんか! 横センの授業は! 一現くらいオマケしてよ〜!』

『ダーメーだ! ははは。今日は二度も俺の授業が受けられるとはな。さぞかしお前も幸せもんだな!!』

『痛い、痛い!! いやぁあああっ!! 横セン、離して!! 耳、耳!! 耳が千切れるぅ!!』

横山に耳を引っ張られて、自分の教室へと強制連行されて行く安嬉の姿にクラス一同は大爆笑。

『はぁ。何やってんだか、アイツ…』

流石の誠二も呆れ果てる。

『あはは。赤毛くんって、本当に面白い子だよね』

大きく溜め息を吐きつつ、誠二は瀬能の席へと歩み寄った。

『時に瀬能。さっきからずっと、その記事の所ばかり読んでるが、何の記事だ?』

一度、瀬能は誠二を見上げると、新聞を机の上へと広げた。

『…天才ピアニスト、嵐山 麗(アラシヤマ レイ)の記事だよ』



≫ By クロポン
08-18 23:15
【P2】


『…っ!!! あ? 瀬能っ?!(裏声) お、お前っ、何してんだよ! 眼鏡なんか掛けて……新聞なんか読んでるからてっきり別人だと思って一瞬、分からなかったぞ!?』

誠二の言葉に、今までにない爽やかオーラを放っていた瀬能が、眼鏡を外すなり普段の瀬能へと戻り、いつも通りのガンを飛ばして来た。

『失礼な! 眼鏡一つくらいでバンド仲間の俺を見失うな』

『そ、そうは言うがな。何処の学校に新聞広げて朝から読んでる高校生が居んだよ!? サラリーマンか!』

『あ? 高校生にもなって新聞の一つも読まないお前らと一緒にするな。それに日本の事や政治や経済の事を知る事も勉強の基礎だぞ?』

『うぐっ…、むむむ……』

誠二が瀬能の言い分へと感心しかけた時、背後からベースの音が鳴り響く。

――ジャカジャーーーン!!!!
ジャンジャン!! ジャンジャン!!

『みんなぁーー! 今日は一限目からトップギアのスーパーウルトラライブだぁーーーー!!』

『お前はお前でさっきの俺の話、聞いてなかったのかよ、おい!』

誠二は安嬉の頭へ手刀をぶち込んだ。

しかし、安嬉の勢いは止まらない。

止める誠二にも構わず、廊下へと急ぐ。

『よっしゃ! また軽音部からアンプとスピーカーを拝借して来ますか!!』

そう言って教室のドアを安嬉が勢いよく開けると――。



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