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k
MとKに関する記録
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05-13 00:25
朝、彼女の側を通ったら、むっと湿ったあの匂いがした。
私もそろそろか。
扉を開けて、残りを確認する。


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05-12 00:40
Kが何か言っている。
手、冷たいね。
イゼル?なあに?
それ、わたしのなまえね、あたらしいの。
ゆめみたい。
K、ほっぺに手、冷たいね。

窓からね、魚が入ってきたよ。
緑のひれのと、あかいのときいろいの。
天井のとこで回ってるよ。


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05-12 00:32
灯台の鍵には、蔦の透かし模様が彫ってある。
家からずっと握り締めていたから、手のひらに跡がついた。
灯台へMは来ない。中に入れないからだ。
私が鍵を持っていることは教えない。
これは私の秘密。

家からは灯台の入り口が見えない。

塔のすべてが私の秘密。



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05-12 00:28
「エマ・ヤシュマ」

(風や雨の音みたい、ううん、違う。これはすなあらし)

小さいラジオがとぎれとぎれに歌う。
ほとんど嵐に飲み込まれてしまってる。
ざあざあ、ざあ。
機械の中でも嵐が起こってる。
Kが歌ってる。
私も歌う。

小さい劇場の中で、嵐が起こるの。
歌姫は舞台で歌う。
嵐は緞帳の中で起こる。
真っ赤だった緞帳は、嵐に色を飛ばされて、透明になった。
私は開かない舞台の上で役目を果たす。
歌う。歌う。


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05-11 17:27
時計の針が外されていた。
Mじゃないと思う。Mはこれが何なのかを知らないから。Mが外したなら、針をテーブルにおいておくことは無いと思う。
ときどきこうなっている。
誰?
今日が何時なのか分からなくなってしまったじゃない。
空が黄色い。朝なの?夕方?

Mはまだ眠っているみたい。
布団から腕が出ている。肩に赤い印がついているわ。
私の肩にもついている。
触ると少し痛い。
呼んでもMは起きない。
「イゼル」、新しい名前をつけて呼ぶ。


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05-11 01:04
布団に潜って眠る前に鳥の卵のことを考える。
鳥は何であんなとこで産んだのかな。
食べちゃってもいいのかな。
本当は石かもしれない。夜の内に、石がだんだん大きくなって、明日になったら、おうちくらい大きい卵になっているの。
あんまり大きいから、殻も薄くなって、中が透けて見える。
中には鳥がいるかな。石の卵には鳥はいないかな。
…大きい女の人。きっとKに似てるんだ。
卵が大きいから、割ったら大変なことになるよってKが言う。
Kは大きい自分がちょっと嫌で、おうちの中から出てこない。
Kが遊んでくれないからとってもつまらない。だから私も一緒におうちの中にいる。

小さい二匹の邪魔者がいなくなったら、卵はまた大きくなるんだ。
女の人がときどき動くのも見える。
Kは怒って窓からけしごむを投げたりする。

お昼寝から目が覚めたら、卵がおうちよりも大きくなってて、おうちの扉をぎゅうぎゅう押すから、私たちは窓から外に出て、卵を海へ押し返す。
邪魔者二匹が卵を押したら、卵は浜辺を転がって、岩にぶつかって割れた。
割れた、割れた。
割れたところから水と透明な仔馬がいっぱい出てきて、私たちは流される。
でも、すまうぐが助けに来てくれるのよ。
Kと一緒にすまうぐに乗って、卵の様子を見ると、膝を抱えて眠っていた女の人が目を覚まして殻から出てきた。
大きいK。しらない女の人。
知らない女の人は、脱いだ殻を海の向こうにぽいと捨てて、雲を真っ赤な爪でちぎってむしゃむしゃ食べる。
Kが描いた雲なのに!
「気取り屋の批評家め、あんたなんかだいきらい!」
Kが言うと、女の人はふん、と鼻を鳴らして海を跨いで行ってしまった。
最後に踵を引っ掛けたから、空が太陽の近くでよれて歪んでる。
「だいきらい」
またKが言った。



起きてすぐ、西の岬へ行った。
卵はまだそこにあった。
空に透かしてみると中がぼんやりみえたから、石の卵じゃなかったみたい。
でも、大きなKになっちゃったら困るから、石で叩いて卵は割った。


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05-11 00:24
「いーち、にーい、さーん、しーい、ごーお、ろーく、しーち、はーち」

「知ってる?西の岬に鳥が卵を産んだよ」
「白い?」
「うん」
「それなら見たことある」




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05-09 20:36
地下には食糧庫と物置の部屋がある。
食糧庫には缶詰、燻製、Mの嫌いなペヨテの茎(痛み止め、解熱剤にもなる。煎じて使う。苦い)なんかが置いてある。
物置はここの前の住人の持ち物らしき品が雑多に置かれている。
入り口横にはKが奥から運び出した本がいくらか積まれている。

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05-09 00:45
後ろ手で扉を閉めると、何も見えなくなった。
目が闇に慣れるまでしばらく待ってから、彼女は階段を上った。

擦れる服の音と、自身の呼吸音だけが聞こえる。

ここはもう死んでいるのね、彼女は思った。
生きているのは私だけ…。
死んでしまった象の体の中を、私は歩いている。
骨になってしまった象、私は幽霊…。

壁を探る手のひらや裸足の足が冷たい。
生ぬるい潮に慣れた彼女には、その温度は夢を連想させた。


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05-08 17:28
階段を踏み外さないように気をつけてのぼる。
壁に沿って螺旋に伸びるそれには手摺が無いので、彼女は右手を壁に這わせていった。


*


階段に腰を下ろし、壁に耳をつける。
目が慣れたとはいえ、塔の中は暗い。
塔の外で波が打ち寄せる音が聞こえる。
けれど、それは遠い出来事のようだ。

彼女は座ったまま、日記のことを考える。
あれはMが地下室から見つけてきたもの、中には何も書かれていなかった。だから私は日記を書くことにしたんだ。
Mも同じものを持っていた。Mがそれを何にしたのかは知らない。毎晩私が日記を書くときにMも何かを書いてはいるけれど。
灯台には来た。前から来てる。でも、花なんて見たことはない。あれは私の字、そう、でも、本当にそうなのかしら。分からない。


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