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「うしろから抱きしめて(呂呂)」
「まったく!、姿が見えんと探しに来て見ればこの様か!」
「ははは…面目ない」
「笑い事か!、一歩間違えば命取りだぞ!!」
「その一歩を間違えなかったのだ、そう怒るな」
「 反 省 し ろ と 言 っ て い る 」
「…すまん…」 
「よし」

呂布の背中に背負われた呂蒙は、大人しく身を預けた。

事の発端は居城の修復作業中、呂蒙の好奇心から起きた事故だった。
孫呉の都から呼び寄せた職人達、以前より匠の技に興味を持っていた呂蒙は、近くで作業を見ようと修復中の城門の先端に登った。
太守として、わざわざ出向いてくれた職人達を労う意味も含めて、匠の仕事場に足を踏み入れたのがそもそも事故の元だった。

落ちたのだった。あ、っと思った時には視界の天地が逆転していた。

「馬鹿と何とかは高いところが好きと言うが、お前は馬鹿のほうだな。間違いなく大馬鹿者だ」
「そう馬鹿と連呼されると、本当に馬鹿になるぞ俺が」
「既に充分馬鹿だ、いや阿呆だろう、素人が足を踏み入れればどうなるか、その素人でも思いつきそうな事態を、お前はあっさり実現したわけだ。馬鹿で阿呆と言わずして何と言う!」
「もう、分かったから…」
「いや、お前は分かっていない。また同じ事をする、絶対にする!、そういう奴だ」

幸いにもそれ程の高さから落ちた訳でなく、落ちた場所に幕舎が有った事で衝撃を緩和できたのだった。
落ちた拍子に崩れた幕舎に埋もれた呂蒙を助け出した呂布は、開口一番に「馬鹿者!」を大声を上げた。かすり傷程度とは言え、その身を案じてそのまま呂布に背負われ城の中へ連れて行かれる途中、ずっと馬鹿と言われ続けている。

己の軽率な行いから起きた事故、非は認めるし反省もしている。
しかし、こう悪態をつかれ非難され続けるのも腹が立つくらいの自尊心は持ち合わせている。

「人の事が言えるのか、呂布よ。俺が留守の間のお前の所業…、忘れたとは言わせんぞ?」
「…何のことだ?」
言われた途端、強気だった呂布の気配が変わる、立場の形勢逆転。
「そもそも、先程の城門を壊したのもお前らしいな。それも衛兵と遊んでいた弾みで」
「遊びではない、調練に付き合ったまでのこと、其れこそ不可抗力の事故だ」
「壊した事は認めるんだな?」
「だから…、事故だ」
「 認 め る ん だ な ?」
「う…うむ」
「お前も充分に、馬鹿で阿呆だな」
「くっ!」
優位を確信してか、呂蒙の態度が太守としての威厳を取り戻す。こうなっては呂布も対抗はするが、根本的に逆らうことが出来ない。
悲しいかな、惚れた弱みと言うのは肩書きおも超越してしまうものだった。

「これでお相子だな」
「俺は悪くない」
「呂布ーーーー!」
しかし悪びれもなく宣言する呂布に、背中にしがみ付いていた呂蒙の両腕が呂布の首に回される。
そのまま締め上げる様に、背後から力を込めれば流石の鬼神も反撃できない。

「お前も、己の非は認めろ」
「ぐぬっ!?、分かった、分かったから腕を!」
「本当だな?」
「お前っ!苦しっ!」
背後から丁度良い角度で、呂蒙の腕が呂布の首を締め上げている。背負われている事も相まって優勢は呂蒙の方だった。しかし抗議の声に本気の抵抗を感じたのか、呂蒙は直ぐに腕を解いた。
戯れも、度を越せば喧嘩の原因になる。

解いた腕を呂布の肩に置く。そのまま大人しく背中に納まった。

「呂蒙」
「何だ?」
「離せとは言っていない」
「しかし、苦しいと」
呂蒙が背後から伺えば、呂布は少しふてくされたような表情を向けてくる。
「しっかり掴まれ、振り落とすぞ」
「そうか…、なら遠慮なく」
伸びてきた腕が首に絡みつく。今度は相手を思い遣りながら。

戯れは嫌ではない、お互いに触れることが出来るから。背中の重みを背負い直すように、一度立ち止まる。

「心配を掛けて、すまなかった」
「俺も、今後は自重しよう」

再び歩き出す、目指す先にあるのは二人の城。


(ツイッター診断ネタから呂蒙から呂布へ)
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