『星のかけら』14P 「俄雨?起きたかい?」 コンコン・・・という軽いノックの音と共に、ドアが開いた。 雷光さんだ!僕はがばっと身体を起こした。 「すす、すみません、雷光さん!」 最悪だ。先に起きてご飯の仕度をしようと思っていたのに。 「いや、いいんだよ。良く寝ていたようだから、起こしていいものかどうか、悩んでいたんだ」 「そんなにぐっすり寝ていましたか?」 「そうだね、珍しく。お陰で時間があまり無くなってしまったのだが・・・」 しまった。今日は雪見さんと約束があったんだった。 「ごごご・・ごめんなさいっ。すぐに準備します」 僕は半泣きになりながら、ベッドから下りようとした。が、慌てていたのか、立ち上がろうとした瞬間、後ろ向けに滑る。 「危ない」 咄嗟に延ばされた雷光さんの手が、僕を引っ張り上げた。 「バカ俄雨。何をしているんだい」 「すみませんっ」 僕は恐縮して、自分から立ち上がった。でも、雷光さんは、そのまま僕を腕の中に閉じ込めた。 「怪我しなくて良かった」 「はい」 僕は雷光さんの腕の中で小さくなった。 最近、時々こうして不意に触れ合う事がある。触れ合うきっかけは他愛ないことからなんだけど。 「私を試しているのかい」 「えっ」 誰が?誰を?質問の意味が正しく脳に届く前に、何も考えられなくなる。雷光さんが僕の顔にそっと手を添えたからだ。心臓が跳ね上がる。雷光さんは僕を見ていた。 なんて・・美しい。僕は、雷光さんの瞳から目が離せなくなった。最近、雷光さんは、少しおかしい。時々こうして、何かの謎かけのように、僕に触れてくる。 雷光さんが僕を起こしに来てくださって、とろ臭い僕が転びそうになり、それを助け起こして下さった・・・。ただ、それだけのことなのに、僕はどうしてこんなに胸が痛くなるんだろう。 「だから・・・。どうしてお前はそうやって」 「え?」 雷光さんが僕の目元をそっと拭った。指先が濡れている。僕は、泣いていたのか? 雷光さんは優しい顔で僕を見ると、温かな手のひらでそっと僕の頭を撫でた。頭を撫でていただくなんて・・・と、恐縮する気持ちが起こる一方、心が凪いでくるのを感じる。舞い上がっていた気持ちが、ストンと元の場所に落ちていく。 「さあ。もう、本当に用意しないと、遅れてしまうからね」 「はい」 [*前へ] [次へ#] [戻る] |