YOU ARE MY STAR(ジェームズ) あれから何年経っただろう。 強くなれなくて、ごめんね。 「ジェームズ。真冬だけどヒマワリ持ってきてあげたわよ。リリーはリリーだからユリね。良かったかな?」 冬にしては少し暖かい今日。 ポッター夫妻の墓に2つの花束が置かれた。 「そういえばシリウスがアズカバン脱獄したんですって。本当、昔と変わらないよね。でも、良かった…のかな?」 その場にしゃがみ込み、なまえは目を閉じる。 「ねえ、何で…いなくなっちゃったの?」 『ハッピーバースデイ!なまえ!』 グリフィンドールの談話室に明るい声が響く。 『えへへ、みんなありがとう!』 木々が寂しくなり始めた冬。 なまえは15歳の誕生日を迎えた。 友人達からプレゼントを貰って、他愛もないことを話していると時間はあっという間に過ぎていく。 『なまえもう遅いからそろそろ寝た方がいいわ。』 『そうだね。じゃあ片付けて戻ろうか。』 リリーの言葉になまえ達は素直に従い、寮へ戻ろうとした。 その時、ジェームズがなまえを呼び止めた。 『なまえ。リリーが寝たらちょっと戻ってきて。』 『え?』 彼は素早く耳元で囁くと、なまえが聞き返す間もなく行ってしまった。 …何だろう? 少し疑問に思ったが、言われた通りリリーが寝たのを確認して談話室へ戻った。 ジェームズはすでに来ていて、なまえを見つけると 『これ、みんなの前じゃ渡しづらかったんだけどさ。もう一度ハッピーバースデイ。なまえ。』 と言って大きなヒマワリの花束を差し出した。 『…ヒマワリ?』 『綺麗だろう?真冬のヒマワリって。なまえは僕の太陽みたいな存在だからね!』 なんでこの人はこんな恥ずかしいことを普通に言えてしまうのか。 『太陽って…じゃあリリーはどうなるのよ。』 『リリーは宇宙だから大丈夫だよ。リリーが宇宙なら僕は星になるからね。シリウスもシリウスだから星だな。』 予想はしていた。 太陽は宇宙に勝てない。 確かめなくても、わかっていた。 リリーが彼の全て。 『ジェームズのバカ。』 『!?』 『…だってそれじゃあ、昼間は私1人になっちゃうじゃない。』 『あ〜、そっか。』 そう言ってジェームズは髪の毛をくしゃくしゃ、として暫く考えると 『それは大丈夫。昼も星はなくならない。見えないけどそこにあるから…ね。なまえを1人にはしないよ。』 と独り言のように呟いた。 『…ほんと?』 『ほんと。』 ジェームズは、ずっとそばにいてくれるのかな。 『じゃあ私、宇宙になれなくてもいいや。』 『ん?何?』 『何でもない!』 その場限りの言葉だったとしても嬉しかった。 自分はまだ彼を好きでもいいのかもしれない。 そう、思えたから。 『よし、じゃあそろそろ寝ようか。』 『うん。おやすみなさい。』 「あの時私を1人にしないとか言ってさ、僕は星になるよ、とか言ってさ、本当に星になっちゃうんだもん。」 あの日彼がくれた言葉。 くれた花束、残してくれた思い出。 「私を1人にしないって約束はどうなるのよ。」 彼らの前では、泣かないって決めたのに。 「私、1人になっちゃったよ…。」 涙は零れる。 ―もし新たな出逢いの為の別れがあるのなら 私はこの先誰と出逢わなくてもいい ただ 彼を返して。 「ジェームズ…」 彼を。 080910. (戻る) → |