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小説
本当に欲しかったものは……(アメオル?)

(何年ぶりだろう……)
大きな湖に煌めく月と夜の静寂。
手足を繋ぐ鎖もなければ、鞭の撓る音もない。
ただ風がゆったりと酒に染められた頬を撫でるだけ。
無造作に束ねた金糸を解放すると、ふわりと肩に流れる。
ご主人様に凌辱され続けたこの身体は、10日前、閣下の剣を掴んだ時に生まれ変わった。
しかし、ご主人様のお気に入りだったこの女のような髪への嫌悪感はいまだに健在。

今夜はささやかな宴。
飲んだこともなかった酒の酔いを醒ますために会場から離れ、此処に辿り着いた。
気付けば声が歌を奏でる。
身体を弄れた後、惨めさを忘れたくて、独り口ずさんだ歌。

「美しいな……」
突然の声。
驚いて振り返れば、紫の瞳が真っ直ぐに水面の月を捉えていた。
映る月は確に光を湛えているのに、閣下の表情に影を落としているように思える。
しかし、理由を訊くほど礼儀知らずでもない。
結局、閣下と同じ月を眺めるだけとなり、会話は無くなった。
トンッ……と、背後で膝をつく音。
至近距離に体温を感じる。
次の瞬間、体がぐっと後ろへ…。
気付けば解いた髪を隔てて頭が預けられているらしい。
後ろから首へと腕を回されていた。
行為に慣れた身体がピクンと小さく反応する。
ぎこちない動きが擽ったくなり、首を竦めると、上半身を抱く腕に力が篭る。
「閣下、どうなさ……」
発した問いは、声を出すなと耳元に低く囁かれて闇に溶けた。
「少し、このままいさせてはくれないか…」

きっと、酔っているのだ……。
ふんわりと少し癖のあるオルフの髪に顔を埋め、ぼんやりと思う。
足元が崩れてしまいそうなほど頼りなく感じた。

あぁ……、ミーシャ……。
アメティストスは小さく呟き、瞳を閉じた。


☆あとがき
ブログの再録です。
オルフが、アメ様と出会って間もなくの頃を書きたくて。
彼の髪は後でシリウスにでも切ってもらおうと思います←

お付き合いくださり、
ありがとうございました。


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