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ココ
 伝えなければいけない事がある。ここに居るうちに、伝えたいことがある。今は理解して貰えないかも知れないが、覚えていればきっと解る時が来るから。忘れないで欲しい。こういう結末を迎えてしまった今でも、私達は忘れない。変わらずずっと愛している事を。
 必死に思いを届けようとするも伝える術など無く、ただただ時間は過ぎていく。



 冷たい空気に身を震わせながらも口に禁煙パイポを咥えたまま息を胸の奥まで吸い込む。メンソールを含んだ空気が口や喉を冷やす感覚をしっかり味わい、鼻腔へ抜く。鼻からメンソールの冷たさが抜けるまでしっかり深く息を抜いた。この少女はこのパイポに味わい方をどこで覚えたのだろうか。あどけない表情にませた仕草が妙に噛み合わずに違和感を覚える。
 立ち上がり、仲間の待つ所へ戻ろうと歩き出す。寒さのせいか人通りは殆ど無く、寒さから逃げたい気持ちもあって早足でとおりを抜けようとする。と、一瞬視界の端に何かを見た。そちらへ顔を向けるとそこには鏡のようにこちらを映すショウウィンドウ。映ってること自体は全く問題は無い。問題は映っているものだ。

 見覚えのある顔、しかしもう見る事は叶わないはずの顔が二つ。こちらを見て微笑んでいた。最初に驚き、次には嬉しさや懐かしさ、申し訳なさなどが一気に溢れ出し、胸を締め付けた。不思議と恐怖を感じはしなかった。
 伝えたい事が、言いたい事がたくさんあるのに。それは互いにかなわぬ願い。ガラスのショウウィンドウに阻まれて伝える事は出来なかった。
 ガラスには少女を抱きしめる二人が映る。体にじんわりとぬくもりが伝わった気がした。それはまるで最後のメッセージであったかのように二人の体がぼやけ始めた。いつの間にか溢れていた涙を拭うと、そこは元のショウウィンドウ。目元が赤くなった少女がぽつんと立っていた。

 少女はしばらくそのままじっとガラスを見つめたままだった。





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Result

新しい家族と一緒に過ごしながらも元の仲間との活動も続けて居ます。
今回の両親の暖かさに込められた意味に気付くのは、まだもう少し先のお話。

MVP:マンソリ・A/L・ガーンディ

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・取り合えず年少キャラが必要だなとは考えてしました。『幼い頃に能力者のせいで両親を失った』と言う設定はやはり使いやすいですし、その部分を考えて接していただきやすいですから。
・実は能力は直前まで決まってなかったです。影を操るタイプも考えていたのですが、某用務員さんとかぶるので現在の髪を操る能力に。
・禁煙パイポの設定は個人的に禁煙パイポが好きだったのと、子供でも一応吸えるのでじゃあ最年少に吸わせようという安易な発想でした。でもおかげで少々背伸びした感じが出て良かったと思います。
・設定上解禁SSの内容をこの子ははっきりと覚えて居ません。それを思い出してしまったときにどうなるか、と言うのもひとつのキーポイントだったかもしれませんね。

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