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絵里
 胸にある思いを言葉に換え、綺麗な旋律に乗せて放つ。ここだけするなら簡単なこと。でも、一から作るのはとても大変なことなんだと実感する。今まで聴いて来た、そして歌ってきた歌達はどれもこんなに、いや、もしくはそれ以上に、悩み、考えながら生み出されたのだろうと思うと感心する。人の声に急かされて次々と曲を出すうちに、疲れて模倣に走ってしまう気持ちも今では解るかもしれない。
 こんなにも歌に乗せるべき思いは胸に溢れているというのに、それが先走り過ぎて上手く旋律を紡げない。言葉が足りない。バランスが取れない。なんとも難しい二つの要素を合わせると言う芸術に、今はただただ溜息しか出てこない。これは感心か、もしくは絶望かもしれない。作曲用のノートを一度閉じて息抜きにと、外の風を入れることにした。
 ここは市街地にある研究所。以前は敵対していた組織であるが、現在ではすっかり和解してこのようにお互いのメンバーがお互いの施設に居座る光景が珍しくなくなっていた。かといって何か手伝うわけでもなく、殆どの時間はお互いに好きなことばかりしていることが多い。たまに声を掛けられれば協力することもある、程度。しかも誰もそれを咎めないのだ。最初は真面目な性格だった絵里や、数人のメンバーはそのあまりの自由さに居場所を見つけられず、中々なじめない日々を送っていたが今ではこの有様。机に向かってするのは研究ではなく、恋人に贈るための歌を絶賛作曲中。風に当たって少し正気に戻ったのか、今の現状に苦笑いする。

『何してるんだろう、私』

 折角だし、ここの主に手伝うことはないか聞いてみよう。考え込んでいても煮詰まるだけだし、何かしているうちに良いアイデアが浮かぶかもしれない。そう思い、部屋を出た。ここの主の研究はいつでも『楽しそうなこと』であることを知って居るので、その足取りは重くなかった。流石というべきか、一度研究に着手さえしてしまえばその情熱は他に引けを取らず、寧ろ圧倒するほどである。その根底には勿論、研究者としての血がお互いに流れていることがあるのだろうが。果たしてそれが作曲において吉と出るのか凶と出るのかはやって見なければ解らない。没頭し過ぎて後で“あっ”と言うことにならなければ良いのだが。



 彼女が開けた窓は、閉めるのを忘れられたまま新たな風を部屋の中へ招いた。その風は悪戯に机の上のノートを捲った。綴られたありったけの思いを詰め込んだ言葉と何度も書き直した五線譜がぱたぱたと踊る。風はすっかり白いページが無くなったそのノートを端から端まで捲り、それで満足したのかぱったりと止んだ。たまたま開いたページには、最高の思いを詰め込んだ詩と、完成間近の五線譜、そして息抜きに描いた恥ずかしがり屋さんの笑顔があった。




***

Result

森羅さんに触発されて作曲に目覚めて没頭するも、ちゃんと自分のお仕事もしています。
ただ弥生同様、おサボりは増えてしまったみたいです。

MVP:五十嵐 森羅

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・イメージは早い段階から決まっていたキャラクターです。でも『目』の中の話は決まったのが発現前日くらいだった気がするのです。ちょっと異色な感じにしたかったので結構悩みました。正直『肉塊』って怖いよ。何でこんなんなっちゃったんだろうと。
・ぶっちゃけ眼帯とか付けておくと後で色々遊べそうだし可愛いしそういうキャラ居ないから良いよね!というノリで眼帯でした。視覚的に不利な状態でも絵が上手というのは『彼女の視界を直接的に現す何か』としてのファクターになるかなとしていたのですが存外上手になっちゃってまぁ。描いているうちに本当に上手くなっちゃったんですね。
・歌については設定上は特に上手というわけでなく、声が綺麗なので音程が安定する曲なら凄く綺麗に聞える、という感じです。カラオケ行くと一人二人居るような上手な人みたいな。でもお腹から声が出てないのですぐ力尽きます。
・目の中の悪魔さんは今ではすっかり便利キャラです。もう少し開眼覚醒状態とかやってみたかったかな?後半は戦闘少なかったし仕方ないけど。これから色々出来そうな子です。

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あきゅろす。
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