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美樹
 気が付けばそこには0と1しかなかった。それが今の私の状態。半分、幽霊かもしれないと思う。
 それでも良いよ。それでも私の周りは何も変わらないから。いや、一つ変わったことがあるとするなら、生きるための目的を得た、ということだけ。

 “異端狩り”と呼ばれた活動が終わって暫く経った今も、美樹を初め数人のメンバーはこの街に残り、引き続き異端能力についての情報収集を続けていた。現在はリーダーである鈴音が不在の為、指揮は美樹が執っていた。歩が『柄じゃない』という理由で辞退してしまった為消去法の流れで嫌々ながら決まってしまったのだが、やってみると存外何もやることがなく、メンバーの予定管理と多少の指示だけで済んでしまうのでこれといったトラブルもなく、今も活動は続いていた。
 主な活動といえば、この周辺の能力者と接触し、能力のデータを取ること。但し、過激な方法は無しで。それともう一つ、“異端者狩り”を行っていた時に色々とキサラギ研究所との合同研究。元々メンバーのほとんどが科学者だったため、今ではこちらの活動の方に力が入ってしまうという状況になっている。リーダーが帰ってきたらこの変わりよう、どう受け止めるだろうか。案外予想済みのような気もするが。

 仕事が終わると美樹は一人、本部へ向かわずに街へ出る。今までメンバーは本部の宿泊施設に寝泊りしていたが美樹だけは最近この街にあるアパートで夜を過ごすようになった。一緒に生活したい人が出来たのだと、皆には説明した。メンバーが疑問にも思わず、反対もしなかったのに少しの安心と寂しさを感じては居たが、今思えばこうして結局毎日顔を会わせ、仕事をするのも、就寝前は全員自由に行動する為あまり一緒になることがないのも、以前と変わっていない、いつも通りなのだから何も言うことは無い、ということなのだろうか。もしくは自分にもやましさがあって何も言えなかったということなのだろうか。
 今日は食材が無いから帰りに買物をするつもりだった事を思い出し、閉店間際のスーパーに駆け込む。買う予定の物は頭に入っている。手早くカゴに集め、会計を済ませた。いっぱいになった袋を手にアパートへ向かう途中、ふと感じる暖かな感情。今夜は何を作ろうかとか、美味しいといってもらえるだろうかとか、そういうことを考えているうちにいっぱいになって溢れだす、これが幸せなのだろうか。最初にこの街に来た時はまさかこんなことを考えるまでになるとは思って居なかった。あの頃の殺伐とした感情を思い出し、苦笑する。

 物思いに耽って居た為か、少々目先が留守になっていた。短く一言、ぶっきらぼうに投げられる声に、自分の名を呼ぶ、可愛らしい声。その二つを追い、前を見ると、見慣れた影が二つ。

『ただいま。ごめんね、遅くなっちゃった』

 そう、笑顔で答える。そんな一つの幸せのお話。



***



Result

現在は空さん、澪里さん、剣さんと部屋を借りて生活しています。仕事も中々忙しくて会える時間はそれほど多くは無いですが以前よりは一緒の時間が増え、幸せな生活を送っているみたいです。

MVP:空



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・設定自体は唯一の初期状態『能力無し』でそこまで派手さも無く、メンバー内では地味な立ち位置に設定していたのでそこまで大きな事はさせられないかなと思っていました。一番普通の人間に近くて、一番普通の幸せを願って居た子なのかもしれないです。
・最近流行り(?)のテンプレート的なツンデレには絶対させないと言うことだけに必死でした。とりあえずテンプレだけはぜってぇ死んでもださねーからな!と言いながら。言ってませんごめんなさい。結果的にデレ解禁のタイミングも良かったですしこの子についてはもう文句無しだよ本当。うん、幸せになってね。
・『デジタルホログラム』ってどういうことだよと、流石にぶっ飛び過ぎてまだ理解できていない人も居るかもしれないのでここで補足。基本的に『見える部分』だけがその空間に再現され、中身は1と0しか入ってないのですっかすかです。例えば口が閉じてるときに口の中は見えないですよね?だからこのときは舌や歯が存在しないことになります。ふっしぎぃ。口が開くと瞬間的に0と1で口の中を再現します。意味不明ですね。書かなきゃ良かった←

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あきゅろす。
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