・ 銀髪の、綺麗な髪。少し冷たく見える、その顔。 薄い唇に、メタルの銀の眼鏡。 記憶にある、王の面影より少し成長したその姿。 懐かしい。 いつになっても、私は王の姿に惹かれてしまう。 そして、また出会ってしまった…。何度目をこすっても、変わらぬ情景。 もはや、これも、運命なのか…。 逃れられない運命なのだろうか。 段の上に上がった王の姿。 久しぶりに会う王から目が離せない。 隣にいる鈴も同様だった。 じっと、食い入るように、そちらを見ている。 鈴は…目の前にいるのが王だと気付いているのだろうか…。 「まず、僭越ながら、生徒会の説明をさせていただきます。 私は、3年。小早川隼人。副会長を務めさせていただいております。次に生徒会長ですが…」 「おお、俺は小早川疾風だ。新入生諸君、よろしくな…、」 にこっと、王の生まれ変わりの隣に立つその人。 王の生まれ変わりばかり見ていたから気づかなかった。 その人も王同様、端正な顔をしていた。 王より若干、背が高く、彫が深い顔。 王が王子様のような顔だとしたら、その人は男らしい騎士のような雰囲気を醸し出していた。 その人が、喋った途端、また大きく歓声があがった。 黄色い歓声、とでもいうべきか。 「…っ、なん…、」 「…まるで、アイドル、みたい…?」 鈴がふと漏らした言葉に、なるほど、と思う。 この熱気…歓声…確かにアイドルに対するアレに似ているかもしれない。 現に、鈴の隣にいる生徒は、ぽぉっと壇上を見ていた。 おいおい…、男だろう…。入学して早々、男に見惚れるとは…。 これが、男子校というものなのか…。 そのまま式は淡々と進んでいく。 私はといえば、王の生まれ変わりから目が離せなかった。 記憶よりも、少し、大人びた王。 前世で出会ってきた王と、雰囲気は凄く似ていた。 私が愛した王とも、また、似ていた。 「次に新入生代表…、柊光」 「はい…、」 司会である教員に呼ばれ、新入生の中から、一人の人間が壇上へと向かう。 柊、光…。 私の同室者と同じ名前だ。というか、本人か…。 新入生代表という事は…首席、ということだろう。 初めてみた柊光という人物は…、優しげな笑みを浮かべながら、悠々と歩いている。 そこに焦りなどない。 新入生にして、余裕がある。 ざわめいていた室内も、柊の出現により、ぴたりと騒ぎが収まった。 「新入生のみなさん…、」 柊が、壇上から挨拶を始める。 こんな真面目そうな人間が…、昨日あんあん言わせていた人物と同じなのだろうか…。 柊の挨拶が終わると、体育館は割れんばかりの拍手に見舞われた。 王の生まれ変わりに、同室者。 新入早々、悩みはつきそうにない。 とくに、鈴と同室になれなかったこと。 鈴は平気なのだろうか…。 あの高橋という人間は、鈴に害のない人間なのだろうか。 湧き出てくる問題に、私はひっそり頭を抱えた。 鈴は悩んでいる私とは裏腹に、顔を少し赤く染めて、そわそわとしながら、壇上を見ていた。 [*前へ] [戻る] |