・ 惣流学園の寮は…、まるでホテルのような外観をしていた。 というか、ホテルそのものだ。寮、には到底見えない。 7階建てほどあるその建物は、はるか頭上に最上階がある。 惣流学園寮について、まず最初にしたことは、寮の豪華さにただ呆然とすることだった。 「でっかい…、」 寮を見上げながら、鈴は呟く。 「小早川グループだからな…、」 「ほんと、凄いね…。金かけすぎなんじゃ…。ここ本当に寮だよね…」 「ああ…、」 私たちと同じバスに乗っていた生徒たちも、その寮の外観に圧倒されていた。 いくら小早川グループの学園でも、ここまでとは思っていなかったんだろう。 寮、というより一流ホテル、だし。 「とりあえず、入ろう…、」 鈴の手を引いて、寮に入る。 外観で圧倒された私たちだが…中はもっとすごかった。 ピカピカに磨かれた大理石、頭上には、シャンデリア。広い、まるで城のような作り。 どうやら、ここはロビーらしい。カウンターには2人ほど人がいて、私たちを見るなり、「ようこそ」と声をかけた。受付の人…かな。 私と鈴は、そのカウンターに近寄り、学生証を出す。 受付の人はそれを確認し、パソコンを叩いた。 「今日から入園する、天音里桜と鈴ですが…」 「天音里桜様と鈴様ですね…、お部屋は301と306になります」 「301と、306…?」 「はい、鈴様が301、里桜様が306です。こちらが、ルームキーで…」 そういってカウンダ―に出されるルームキー。 ちょっと待って。 私が306、で鈴が301? 別室なのか? 「ちょ…ちょっと待って下さい、私たち同室ではないんですか?一応私たちの保護者が同室にしてくれたと思うんですが…」 「同室に…?」 怪訝な顔をして、手元のパソコンを見つめる受付の人。 何かの間違いか。小早川晴臣は、確かに同室にしたといっていたのに。 鈴と同室じゃないなんて…。 「ありませんね…、すみません。急なお部屋の変更は…」 「そんな…。えっと、部屋変更とかって…」 「よっぽどの理由がない限り原則出来ない事となっています。確認もありますので、最悪部屋替えは明日以降という形になりますね…、」 「明日…、」 つまり、今日は…、今日は鈴と違う部屋で寝泊まりしなくちゃいけないってことか…。 「兄ちゃん、」 不安そうに、鈴は私の服を握る。 [*前へ][次へ#] [戻る] |