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クリスマス2013
☆☆☆☆☆


料理が来るまでに俺は筧さんに手当てしてもらっていた。

「…念のために後で病院に行きましょうね。」

眉間に皺を寄せた筧さんに言われるが、こんな傷は学生時代は日常だった。

「心配しすぎだよ。
こんな傷は学生時代日常だった。
病院に行くほどのもんだったら自分でも解るし、このぐらいなら平気。」

「しかし…。」

それでもと真面目な筧さんは心配そうだ。

「筧。諦めろ。
純が平気だって言ってるんだ。」

菖蒲にも言われてやっと筧さんは渋々ながら引いた。

そこでキッチンから重さんの声がかかり料理を運んでいく。

勿論酒も。

腕を気にしてか他の組員も手伝ってくれたのは助かった。


「ん。よっしゃ。
並べ終わったし食べるか!」

最初はぎこちなかった組員達も次第に酒も入り好きに騒ぎ始めた。



「それで、どうしていくんだ?」

唐突に右隣に座っている重さんに聞かれる。

だが、それを俺と菖蒲の二人に聞いてきてるのは解った。

反対に座る菖蒲が俺を見つめているのも解った。

前に座っているおじ様と筧さんが手を止めて見つめてきた。

「あーーっ。あれだな。
俺の気持ちが菖蒲自身にバレてたのはとてつもなく、恥ずかしい。」

「そう言うことじゃねぇ。」

ゴツッ

俺が照れながら言えば重さんに拳骨を落とされる。…痛い。

「解ってるよ。
だから、俺は菖蒲を本当に支えれる女が現れて菖蒲がそれを選ぶなら身を引く気はあるって。

それまで、中途半端な気持ちの奴には譲る気はねぇの。」

俺がビールを飲みながら言えば、騒いでた組員までもが静まり返って此方を見ていた。

と言うか、全員の視線は菖蒲に向けられていた。

「此処まで言われて、十数年しつこく純を過保護なほどに守ってきたお前はどうすんだ?」

棘のある重さんの言葉に菖蒲は苦笑した。

「今更ですよ。

純が言ってる言葉も今更だな。

他の奴に目を向けるのも数年前には諦めた。

どうしたって、俺にとって純以上の奴はいねぇ。
だから、純。

このbarを続けるのは構わない。だけど、これからは正式に俺の組にも顔を出してもらう。

俺の隣にいてくれ。」


「…後継ぎどうすんだよ。」

「それは問題ありません。」

俺の疑問には筧さんが答えてくれた。

「元より組長は種を求めて群がる女共を好きにさせないために、高校を卒業と共にパイプカットをされています。
そして、四年前組が管理する工場に捨てられている子を養子として迎えられています。

龍之介様が望めば跡目は龍之介様に。

望まなければ、優秀な人材をつかせるだけです。」

俺はその事に驚いて菖蒲を見上げた。

重さんも知らなかったのか驚いてる。

「だけど、俺がお前の家に入ることを龍之介が受け入れんのか?」

俺の言葉に菖蒲は優しく頭を撫でてきた。

「龍之介はお前と環境が似ている。
だからこそ、あの子の孤独にお前は気付いてやれるだろ。
大丈夫。
お前は龍之介と仲良くなれるよ。」

菖蒲の言葉に泣きそうになる。

小さく頷けば優しく抱き締められた。



「寒いと思えば雪が降ってるぜ。」

組員の言葉に視線は窓の外へ。

「純君。私も君を歓迎するよ。
何か困ることがあれば頼れば良い。

私は龍神会組長補佐、神流組組長の神流隼だ。」

「神流さん。ありがとうございます。」

俺の言葉に神流さんは悪戯な笑みを浮かべた。

「君には名前で呼ばれたいな。」

その言葉と笑みは父親の様な暖かさで俺も笑みが浮かんだ。

「隼さん。こらから沢山迷惑かけるかもしれない。
それでも俺は菖蒲といたいから。
だから、


よろしくお願いいたします。」

頭を深く下げれば、優しく撫でられる。

「重さんも。
俺、この店を辞めるつもりねぇから。
これからも宜しくな。」

重さんは苦笑して俺の頭をグシャグシャにするように撫でてくる。

「あたりめぇだ。
お前が辞めれば、俺も辞める。
俺はお前と春日、菖蒲の3人を気に入ってるから一緒にやって来たんだ。
お前が此処をどれだけ大事にしてるか知ってる分、此処を辞めるなんて言い出したらお前達ともこれで終わりだったがな。

お前がお前のままで居てくれることが、俺にとってのクリスマスプレゼントだな。

安心したわ。」

そう言って立ち上がり、奥へ引っ込んだ。

俺は菖蒲と顔を合わせて笑いあった。




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