クリスマス2013
☆☆☆☆
『……!!……って!!』
聞き覚えのある怒声が外から聞こえたかと思えば、止めようとする筧さんを振り切ってうちご自慢の厳つい重さんがドタドタと入ってきて菖蒲の姿を見るなり最後の血管をブチ切って、胸ぐらを掴んでいた。
「重さん。ストーーーーーップ。」
筧さんや慌てて入ってきた組員をダンディーなおじ様が止めてくれているので、俺は重さんを止めることにした。
俺の声で重さんは止まってくれたが、顔が苦痛に歪んでる。
すっごく心配かけてしまった事を実感する。
「重さん。大丈夫。
もう、終わったんだよ。」
俺の言葉に更に顔を歪める。
「納得いかねぇな。
いくわけねぇ!!
菖蒲、てめぇに言ったよな!?
こいつの元に戻ってきたなら、女関係全部綺麗に片付けろって、言ったよなァ!!」
重さんの言葉に俺はビックリした。
重さんは俺と菖蒲が不良やってた頃からの先輩で、兄貴的な人だ。
この店を始めるときに、料理人として個人で店を持とうとしていた重さんに一緒にやらないかと声をかけたんだ。
だから、重さんは全部知ってる数少ない人で俺の事を心配してくれてたのは知ってたけど、菖蒲が戻ってきて二人で話してるの見たことなかったから驚いた。
「すみませんでした。」
俺がアレコレ思い出したり考えてる間に、菖蒲が深く頭を下げた。
筧さん達は菖蒲の姿に驚いてた。
まぁ、菖蒲が謝ったりするなんて俺と重さんに対してぐらいだろう。
ダンディーなおじ様にもちゃんと頭を下げそうだけど。
「…てめぇの気持ちだけで、てめぇの組員らが純の事を認める分けねぇだろ。
只でさえ男同士。
それ以上にてめぇは組長でガキだって作んなきゃならねぇ立場だ。
だから、本気で純だけを置いておきてぇなら純を認めさせねぇと意味ねぇんだよ。
何時まで隠してるつもりだぁ?
純の気持ちを解ってて動く気がねぇなら、今後一切うちとかかわんじゃねぇよ。」
「どわぁぁぁぁぁあ!!!」
「うるせぇぞ。純。」
重さんの言葉にビックリして声をあげたら、静かに重さんに怒られた。
「ちょ、ちょっと重さんなに言っちゃってんの!?」
俺の言葉に逆になに言ってんのって顔をされる。
「純。お前…自分がどんだけ解りやすい性格してるか知らねぇのか?
お前がこいつの事をそう言った意味で愛してるって事ぐらい此処にいる奴等全員気付いてんだよ。
それでも菖蒲はこの関係から抜け出そうとはしなかった。」
その言葉に俺はカウンターに隠れた。
それはもう恥ずかしくて。
「…純。
今は照れる所じゃねぇから出てこい。」
重さんに呆れたように言われて取り合えず顔を出す。
だけど、注目を浴びすぎて恥ずかしいので煙草を吸い誤魔化す事にした。
そこでん?っと思った。
「???何で、それで重さんはそんなに怒ってんの??」
首を傾げたら、今度こそ重さんと菖蒲は深い溜め息をつき、ダンディーなおじ様や筧さん達は驚いたように目を見開いた。
「だーーカーーらーーァ。
てめぇの気持ちを知ってて、菖蒲は見て見ぬふりしたんだっつーんだよ。」
「だーーかーーらーーぁ。
別にそこは構わないんじゃねぇの?
それはそれじゃねぇ?
どってにしろ、俺が菖蒲の隣に入れはこう言うことは起きたと思うよ?
これからもあんじゃねぇの。敵対する組とか。
そんなもん、とっくの昔に覚悟してるしこの店を危険に晒すのも解ってるんだよ。だから、重さんは怒るんなら俺を怒らなきゃ。
菖蒲に怒るのはお門違いだよ。」
「「はァ。」」
何故か菖蒲まで重さんと溜め息を吐く。
「………なるほどなぁ。」
そこでポツリと呟いたのはダンディーなおじ様だった。
「なにが成る程なんですか?
あーー。重さん。
今日出す予定だった料理出してきてよ。
捨てんの嫌だし此処で食べちゃお。」
俺はダンディーに投げ掛けた後、今日の為に作られそしてお客さんに食べられることの無くなってしまったクリスマスメニューを食べきっちゃうために御願いすれば、又もや深く溜め息を吐いてキッチンへ戻っていった。
そこで、ダンディーに先を歩出せば苦笑した。
「いや…菖蒲君に最初に聞いたときは何の冗談かと思ったけど、君が君だから菖蒲君も菖蒲君の下にいる組員も君の事に対して必死なんだと思ったんだよ。」
ダンディー、訳わかんねぇよ。
「良く解んないっすけど、俺からすれば貴方のように菖蒲自身を見て支えてくれるかたがいて安心しましたよ。
それと、菖蒲、それと筧さん達も何時までも辛気臭い顔してないで下さいよ。
今日はクリスマス。
今、うちの最高のシェフが今日限定のクリスマスメニューを出してくれるからそれを一緒に食べよう。
今日は笑顔で過ごす日なんだからな。」
俺が笑って言えば、苦笑しながらも頷く。
ゴチャゴチャ考えて言い合ったったって仕方ない。
それなら笑って前を見据えた方が何倍も良いんだからな。
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