クリスマス2013
☆☆☆
カツッ。カツッ。
やけに菖蒲の靴音が響く。
菖蒲の視線が女から俺に移りあからさまに辛そうに顔を歪める。
「…すまん。「うぜぇ…。」」
菖蒲の謝罪に俺は間髪入れずに悪態を吐く。
だってそうだろぅ?
「言ったはずだ。
俺はお前に守られるだけの存在じゃねぇって。
お前のそう言うとこ本当にヤダ。
俺がこの件で謝罪を聞くのは、この女共とこの女の親父さんだけだ。
お前の謝罪を聞く理由はねぇ。」
俺の言葉に菖蒲は何かを言いたげに、だが、息を吐いて苦笑した。
「なんなの?本当にあんた何なのよ!?
菖蒲さんになんて口の聞き方してるの!
菖蒲さんに偉そうに意見してんじゃないわよ。」
「お前な「良い加減にしないか。」…。」
俺が口を開けば、何時の間にか入ってきたダンディーなおじ様がいた。
「お、御父様…。」
女の言葉になるほどなぁ。と納得する。
女が自慢したくなるのも解るほど、ダンディーなおじ様が持つ雰囲気は優しげな顔のわりに隙もなく、人の上に立つだけの存在感と威圧感があった。
「晴海、純さんと言ったかね?」
「あ、はい。」
いきなりの振りに驚いてしまう。
「娘と組員が大変な御迷惑を御掛けしてすまなかった。」
ダンディーなおじ様は潔く頭を下げた。
頭を上げれば、今度は女の方へ向き直った。
「…菖蒲君から話を聞いた。
私はお前から菖蒲君との交際の話を聞き、それを鵜呑みにしてしまっていたが、実際はお前が付きまとっていただけのようじゃないか?
お前の腹に居た子も、何処ぞのホストだったそうじゃないか。
お前は菖蒲が自分との結婚を決めきれなくて、子供も降ろしたと私に言ってきたからこそ菖蒲君と話をしようと思ったのだ。
甘やかしすぎたのかもしれないね。
晴海君の事も散々言っていたが、私は恥ずかしくてたまらない。
お前もこいつらもそれ相応の処分を受けてもらうから、覚悟なさい。」
ダンディーなおじ様が言い終われば女は泣き崩れたが、おじ様が連れてきたチンピラ風ではない極道のオーラをもった男達に連れられて外に出ていった。
俺は取り合えず、踏みつけていた男の上から立ち上がり、カウンターへ入り煙草に火をつけた。
「いってぇ。」
切れている口の中がしみるが、水で口を濯いで煙草を吸いながらビールを出す。
顔を上げれば、片手で額を抑え呆れたような菖蒲の姿と、戸惑いながら此方を見るダンディーなおじ様がいた。
「取り合えず、そこのチンピラ共を片したらカウンター席に座って下さい。
そっから話を聞きますんで。」
俺の言葉におじ様が苦笑しながら了承を返して、菖蒲も控えていた筧さんを呼んで指示していた。
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