花と野獣 一年後 小春が亡くなって一年。 八重は明るさを取り戻していた。 表情は乏しく無表情に近いが、好奇心は旺盛。たまに笑った顔は誰もを虜にして、今では立派なカフェ【BEAST 】の看板アイドルになっていた。 オーナーの瀧。フルネームは大杉瀧。 キッチン担当の北見誠。 八重と共にホールスタッフの安西雨。 BEASTはそこまで大きなカフェでないので、四人で回しているのだ。 どちらかと言うとこじんまりとしたカフェにはファンらしき女性客も多くて、連日忙しい。 それはその筈で、八重と瀧が顔が整っているのは勿論だが、後二人も瀧とは違うジャンルで顔が整っているだ。 北見誠は190と言う長身に見あった強面なのだが、凍てつくような鋭い青い瞳にガタイのよさ。そしてそんな北見が作り出す心暖まり、高級レストラン顔負けの料理…ギャップに落ちる女達。 そして安西雨は、タレ目がちな茶色の瞳に甘い口調。まさしく平成の王子様。 そこいらのホスト顔負けの甘い甘い空気に勝手に陥落していくのだ。 そんなある日。 瀧は実家に呼ばれているからと数日休むことになった。 瀧が休んでいる間は雨が責任者代理となる。 雨と誠は、八重が一番(当たり前)心を許している瀧を喜んで送り出した。 勿論瀧には睨み付けられたが、雨も誠も馴れているだけにニヤニヤ笑いながら手を振ったのだった。 [次へ#] [戻る] |