赤い糸
☆☆☆☆
『お帰りなさい!坊っちゃん!!』
龍之介「…ただいま。」
久しぶりの帰宅だからか組員総出のお出迎えに吃驚する。
俺は骨折やらは無いもののリンチを受けまくって身体は包帯だらけの上5日間寝続けていたせいで点滴しか受けていなかった。
昨日起きたところだったので、痛み止が無かったら体が悲鳴をあげるほど痛む。
その為に傷がましになるまでは、誰かの手を借りるか車椅子生活をするしかない。
今も車椅子に乗って修吾さんに押してもらっている。
こんな姿を組員に見せるのは俺にとったら不本意だ。
皆の心配そうな視線を受けながら親父が待つ広間へ向かった。
余談だが、家にはいれば神谷に抱っこされて移動…マジで恥ずかしい。
広間に入れば親父が包帯だらけの俺を見て般若のような顔になり、周りの幹部が顔を青ざめさせた。
龍之介「…ただいま。親父。
心配かけて悪かった。」
神谷に下ろしてもらったのは柔らかい布団の上で、話をするにも俺の体を気にかけてくれているのが解ってこそばゆい。
龍治「龍之介…亜久玉ん所の坊やとは真剣だったのか?」
調べたんだろう。
元恋人で生徒会長である亜久玉一也。
日本三大財閥の一つである亜久玉財閥の次男。
だが、親父はそんなことに興味は無いだろう。
俺は小さくだが頷いた。
龍之介「まぁ、向こうがどうかは知らねぇけどな。
心配も迷惑もかけちまったけど、あいつらとは俺がカタをつける。
親父達は手を出さねぇでくれ。」
俺の言葉に親父の眉間にコインが挟めそうな溝が出来た。
龍治「…真実もろくに知ろうとしねぇで、たった一人の人間を数十人で追いかけ回し捕まえてリンチにかける野郎共を庇う必要があんのか?」
親父の言葉に周りで黙っていた幹部からも殺気が出る。
これは俺がボコられただからってだけじゃない。勿論それもあるだろう。
だけど、うちの組ではこう言うやり方は一番嫌いなのだ。
恐らくは俺が嵌められて、一也達が調べもせずに信じたことも全て知っているんだろう。
龍之介「…親父…俺はあいつらを庇ってる訳じゃねぇんだよ。
俺だってこんな事をする奴等を野さばらす気はねぇ。だからって組を動かす気はねぇ。
餓鬼の喧嘩に組を使えば彼奴等と一緒だろーが。彼奴等ぐれぇ【キンゴ】を使う俺一人で片をつけれる。」
俺の言葉に今度は渋々ながら納得したようだった。
龍之介「そんな事より…長谷組からは何か言われたりしなかったのかよ?」
俺が一番気になることを聞けば全員が顔をピシリと氷らせた。
親父が溜め息をついて俺の頭を優しく撫でた。
龍治「取り合えず今日は寝とけ。
その話は明日してやるから 。」
俺も追究することもせずに頷いて神谷に自室へ戻してもらったのだ。
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