赤い糸
裏切りと決意
『龍之介、覚えていてね。
赤い糸は運命の糸。
貴方もきっと出会えるわ。』
「………!!…………ろ!!」
バシャッ!!!
懐かしい夢を見た。
小さく幸せだった頃の夢。
「おいっ!良い加減起きろや!!」
夢の後に響いた煩わしい叫び声と、水をかけられて滲む傷口が疼いて意識が浮上してくる。
目をうっすらと開けて目の前の光景に、あぁ。夢を見る前にこれは悪夢だと信じたかった事が現実なのを受け止めた。
口に広がる鉄の味に、目の前の"元恋人"の彼とその彼に守られるように抱かれている転校生。
自分を嘲笑ってしまうのは仕方ない。
目が覚めた俺を囲むのは"元恋人"の仲間達。
俺も彼に連れられて何度か顔を合わせて笑いあったのに、今向けられているのは蔑み。
何人かは辛そうに顔を歪めてるのが見えるけど、彼には逆らえないからか仕方ない。
「龍…残念だ。」
彼の声が聞こえる。
あぁ。俺も残念だよ。
取り巻きの"嘘"を鵜呑みにしたお前が。
「龍之介…俺は何時かはお前とも友達になりたかったんだ。」
偽善者。
結局お前は何も見えてねぇ。
自分が信じた真実だけが本当だと信じて疑わねぇ。
そんな奴と俺が友達になれるわけがねぇんだよ。
俺は最後の力を振り絞って笑ってやった。
「そんなんだから、周りに良いように使われんだよ。」
ガツッ!!!
容赦なく降り下ろされるバットや拳や蹴り。
気を飛ばしそうになれば水をかけられる。
俺の意識はそこで途切れた。
"元恋人"は金持ち学園の頂点に立つ生徒会長。
俺は生徒会長補佐だった。
この春、季節外れの転校生に恋人を奪われました。
ドゴーン!!
倉庫の扉が壊される音が響いた。
元仲間達が焦る声が聞こえる。
「餓鬼共が!!誰の倉庫で暴れてやがる!!」
遠くで怒鳴り声が聞こえた気がした。
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