夢のような話
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夜のbarが始まるが店内は龍一のチームが殆どだった。
朱里はグラスを拭きながら顔をあげた。
「巫?だったよな?
さっきは手伝ってくれて助かった。」
挨拶の時の事を思い出しつつも礼を伝えれば、巫は顔を赤くして「とんでもないです。」と返し、朱里が声を出した瞬間に静まり返ったと思えば、信号カラーのトリオが勢いよくカウンターへやってきた。
小柄で見た目美少年だが髪を黄色に染めている子が手をあげる。
「はい!はい!俺は猿山壱です!!
赤狼さんに助けてもらったことがあって、強くなるために【龍神】に入りました!
今では幹部になれました。」
次は赤い髪のチャラそうな男が緩く手をあげる。
「俺は、孔雀ナミって言いまーす。
赤狼さんの喧嘩姿に惚れました。」
最後に小さく手をあげるのは、短い髪を青く染めてある。長身でタレ目がちの男前だった。
「俺…乾、甘夏。…赤狼…綺麗。」
朱里は最後の甘夏に何故か尻尾と耳が見えたような気がした。
忌々しい生徒会にも同じように喋るのが苦手な皆からワンコ見たいで可愛いと持て囃される男がいたが、朱里はそいつがそのポジションに満足し話すことを自らしなくなっていたのを知っていた。
だから可愛いだなんて思ったこともなかった。
だが、甘夏は必死に口をパクパクしながら話そうとしているのが解る。
そして耳が垂れて落ち込んでいるように見えるのが可愛いく見えて朱里はカウンター越しに手を伸ばして項垂れている甘夏の頭をワシャワシャと撫でた。
驚いた様に顔をあげた甘夏に優しく微笑んだ。
「…ゆっくりで良い。焦んな。
小さくても、ゆっくりでもお前の声は聞こえるから諦めんなよ。」
朱里からの励ましと綺麗な笑顔を正面から受けた甘夏は顔を真っ赤にしてコクコクと首を縦に振った。
「…頑張、るっから、…甘夏、って、呼んで…下さい。」
甘夏の言葉にゆっくりと頷いた朱里はもう一度甘夏の頭を撫でた。
その二人の光景を面白く無さそうに壱とナミが騒ぎ立てるのだった。
「えーー!!!
甘夏だけセコい!俺の事も壱って呼んでください!!!!」
「俺も〜。ナミって呼んでよぉ。」
勿論、朱里は嫌そうな顔を露骨に出した。
「お前らは五月蝿いんだよ。
俺の癒しの邪魔すんじゃねぇよ。」
それでも騒ぎ立てる二人のしつこさに折れて名前で呼んで、カウンターから退かすのだった。
すると今度は純也と巫がカウンターに座り熱い視線を朱里に送りだし、朱里は当たり前のように無視をして新しく入ってきていたお客さんにメニューと水を持っていくのだった。
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