夢のような話
☆☆
その日の夜、朱里は夕方から雅也の手伝いに入っていた。
「ナポリタン出来たよ。」
「はーーい。」
夕方は常連さんで溢れて忙しく、朱里も雅也も忙しなく動いていた。
カランカラン
入り口の鈴が来客を知らせて朱里が出迎えに向かった。
そこには一度出ていった龍一と黒髪に柔らかい焦げ茶色の瞳にシルバーフレームをかけた身長は朱里と同じくらいの真面目そうに見えるイケメンがいた。
「いらっしゃいませ。」
店内での言葉は雅也に徹底されているため、龍一であろうが第一声はちゃんとする朱里だ。
「おー。結構忙しそうだな。」
龍一の言葉に朱里は頷いた。
「んー。常連さんで溢れてる。
一番奥の席で良いか?」
龍一は頷いて、隣に居る男を見た。
その男は瞬きするのも忘れたように朱里をガン見していた。
朱里はその視線に気付いていた為龍一を見れば、龍一はその男の頭に拳骨を落とした。
「あー。悪いな朱里。
こいつは俺のとこの副総長の巫瑛太(かんなぎえいた)だ。
見た目真面目そうに見えるだろうが、変態だから気を付けろよ。」
「はぁ?」
龍一の滅茶苦茶な紹介に逆に呆れた顔を見せる朱里は、今だ微動だにしない巫に頭を下げた。
「えーと。花房朱里だ。
俺が、居ないときに雅也さんを手伝ってくれてたみたいで有難う。」
朱里が軽く頭を下げた時に巫の目がこれでもかと見開かれて、朱里は驚いた。
「うわぁ。マジだ!マジ本物の赤狼じゃん!
やっぱり半端なく綺麗だし!礼儀正しいし!! って、知り合いの癖に隠してるとかマジ龍一滅べばいいのに!!」
ノンストップの巫に朱里はドン引きしてすごい早さでカウンターの裏に隠れてしまった。
龍一はもう一度巫の頭を殴り、一部始終見ていた雅也が落ち着かせるように朱里の頭を撫でて龍一と巫を見た。
踞る朱里は見ていないが、雅也の魔王オーラに店内は静かになったのだ。
なんせ居るのは常連ばかり、朱里を見るために来て雅也の本性も知っているものばかりだ。
「お前ら、うちの可愛い朱里を困らせるなら出禁にすんぞ?あ"ぁ?
あと、巫。朱里は勢いよすぎるの怖がるから通常モードに戻せ。そして鼻血をふけ。」
巫は興奮のあまり鼻血まで流していた。
残念なイケメンがここに居ると常連客は思ったのだ。
そして常連客は料理を楽しんだ後、まだ隠れている朱里に一言かけて帰っていくのだった。
勿論テーブルの片付けは巫が手伝っていて、龍一は何時ものソファーに偉そうにふんぞり返っていた。
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