A side:Y 『−−−−!』 はっと目が覚めた。 誰かに呼ばれたような気がした。 かつてこんなに目覚めの良い朝があっただろうか。 カーテンの隙間から朝日が漏れている。 「朝か。」 だが、目覚めの良さと清々しい朝の空気のわりに気分は良くない。 起き上がり深く溜め息を落とした。 今日は入学式だというのに、もう疲れている。 何故か。 夢を見ていたような気がする。 内容は覚えていないが、後ろ髪引かれるような胸の痛みには覚えがあった。 こんな思いをする夢を見たのは久し振りだった。 もう、忘れたはずなのに………。 いや、忘れたのだ。 昔の事。 「さて、そろそろ用意しないと。」 頭を振って鬱陶しい空気を払うとわざと、声に出して言って布団から這い出した。 今日から始まる新しい生活。 だが浮ついた気分ではなかった。 夢のせいもあるが元から他の人とは違う。 普段と変わらず、あまり表情を変えないまま朝の準備に取りかかった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |