かわいそう しげるが変態っぽい しげる視点



 靴下の爪先を咥えて脱がせ、両手で掬い上げた右脚の甲に唇を落とすと、健気な体がぴくりと震えるのがわかった。
 ベッドの縁に腰掛け、オレを見下ろすカイジさんの顔は、唇を強く引き結び、暗闇でもはっきりとわかるくらいに、歪んでいた。

 その顔を歪ませている感情の正体は、屈辱。
 今から中学生のガキに犯されるという事実に、プライドをズタズタにされて、それでも拒絶だけは示さないのは、この人が根っからのギャンブラーだからだ。
 この人のそういう気質が、オレはたまらなく好きだ。

「逃げようなんて、考えちゃ駄目だよ」
 そんなこと考えるわけがないとわかっていたけど、あえて、わざと釘を刺すと、カイジさんは荒々しく吐き捨てる。
「……んなこたわかってんだよ。負けたのは、オレ……なんだから」
 十数分前、オレに敗北した記憶が蘇ってきたのか、その表情に苦みが走る。
 悔しいのだろう。吊り上がった強気そうな目がすこし、潤んでいるのにたまらなくなって、オレは舌を伸ばしてカイジさんの足を舐めた。
「っく……」
 舌を押し付けて唾液の跡を残しながら、ぴくぴくと小刻みに跳ねる脚の爪先までゆっくりと辿り、指の一本一本を口に含んでねっとりとしつこく愛撫する。

 目線は、カイジさんの顔に固定したままだ。
 汚辱に耐えるようにきつく寄せられた眉間の皺が、快感を拾うことで、余計に深さを増していく。
 吐息に籠もった熱をゆるゆると逃し、微かな衣擦れの音をさせて身じろぎながら、悦びに流されまいと唇を噛んで必死に堪える姿の憐れさに、背筋がゾクゾクした。


 どうにもスラックスの前がきつくなってきたので、オレはカイジさんの脚を舐るのをやめ、立ち上がる。
 カイジさんの手を掴んで持ち上げ、無理やりソコに触れさせると、ビクリと驚いたように手を震わせる。
 ソコから離れようとするのを許さず、より強く押し付けて、ゆっくりと、擦り上げるように動かしてやれば、大きな目が激しく泳いで、戸惑いを露わにした。
「お前……なんでこんなので勃つんだよ……おかしいだろっ……」
 弱りきった声で責められて、嗜虐心に火がついた。
 追い詰められたような表情を見下ろして、心中で舌舐めずりする。

「カイジさんが、可哀想だから」
 そして、可哀想なカイジさんは、かわいいから。
 オレも、自分にこんな趣味があるだなんて、思わなかったよ、カイジさん。

 何度か雀荘で会ったことがあるだけの、ほぼ他人に近い知人であるこの人を、賭ける金の持ち合わせなどないとわかっていて勝負に誘ったのも、うまく誘導して最終的に体を賭けさせたのも、すべてはこの人を、可哀想な目に遭わせたいがため。

 普段はイラつくことが多いけど、今このときばかりは、自分がこの人よりずっと年下でよかったと心から思った。
 だってその年の差を逆手に取ることで、うんと上手くカイジさんを傷つけられるし、恥辱に塗れさせることだってできる。

「可哀想なのは、どう考えても、お前の頭だろうが……」
 オレの顔をチラリと見て、カイジさんは唾棄するように言う。
 その瞳の奥に、一瞬覗いた憐れみの色。
 普段なら腹を立てるだろう同情の視線が、なぜかとても愉快なものに感じられて、オレは目を細める。
「……そうかもね」
 オレたちはきっとお互い、可哀想なのだろう。
 ひどい嫌悪感に顰められたカイジさんの顔に、低く喉を震わせて、
「……じゃあ、可哀想な者同士、精々、仲良くしようじゃない」
 そう言ってカイジさんの脚を膝で挟み込むようにして、ぎしりとベッドに乗り上げた。








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